4. AI半導体の「ボトルネック」を握る韓国2社
では、なぜサムスン電子とSKハイニックスはこれほどまでに巨大化し、莫大な利益を上げているのでしょうか。その背景にあるのが、世界的なAIブームです。
現在、AIの開発や運用には、膨大なデータを高速で処理する高性能な半導体が不可欠です。その中で、韓国の2社は「HBM(広帯域メモリ)」と呼ばれるAI向け高性能メモリの供給を事実上、ほぼ独占しています。
AI半導体のボトルネック:韓国2社(HBMを独占供給)→ NVIDIA等(AI用GPU)→ 世界のデータセンター。最上流が揺れると下流の世界中に波及する2/3
出所:HBMのAI半導体における役割・韓国2社の供給地位(各報道)を基にイズミダイズム作成
AI半導体の市場では、米国のNVIDIA(エヌビディア)が提供するGPU(画像処理半導体)が圧倒的なシェアを持っていますが、実はこのNVIDIAのGPUも、韓国製のHBMが組み合わされなければ本来の性能を発揮できません。つまり、韓国の2社はAI産業の「最上流」に位置しており、世界のデータセンターが彼らの供給に依存せざるを得ない構造になっているのです。
需要が爆発的に伸びる一方で、供給できる企業が限られているため、メモリの価格は歴史的な高騰を見せました。これが、サムスン電子が約19倍もの増益を達成できた最大の理由です。
5. 儲けすぎが首を絞める?ハイパースケーラーとの綱引き
圧倒的な価格交渉力を持ち、莫大な利益を上げるメモリ企業。一見すると我が世の春を謳歌しているように見えますが、泉田氏はこの状況に警鐘を鳴らします。
半導体メモリを最も大量に購入しているのは、「ハイパースケーラー」と呼ばれる巨大IT企業群です。Google、Meta、Amazon、Oracleなどがこれに該当し、彼らは自社のデータセンターを拡充するために、高騰するメモリを買い続けなければなりません。
ここで泉田氏は、投資家が見落としがちな重要な視点を提示します。「メモリー屋が儲かれば儲かるほど、ハイパースケーラーは泣くのよ」
メモリ価格の高騰は、そのままハイパースケーラーの設備投資負担の増加を意味します。彼らのフリーキャッシュフロー(自由に使える現金)が圧迫されれば、いずれ設備投資の競争から脱落する企業が出てくる可能性があります。
もしハイパースケーラーが投資を手控えるようになれば、どうなるでしょうか。逼迫していたメモリの需要が落ち着き、価格は下落に転じます。これは半導体業界で繰り返されてきた「シリコンサイクル」の反転そのものです。
「ある一部の人が儲けすぎてると、産業が成長していこうってするときにやっぱりボトルネックになっちゃう」と泉田氏は指摘します。株式市場は常に先を読んで動くため、現在の「爆益」という過去の事実ではなく、将来の需要減退リスクをすでに価格に反映させ始めているのです。
「ハイパースケーラーの一部の人の脱落を織り込みつつあるね」という泉田氏の言葉通り、市場はメモリ企業が強気な価格設定を維持できなくなる未来を見据えて、株価を調整していると考えられます。
6. 日本も他人事ではない?キオクシアとの連動と投資リスク
韓国の半導体企業やKOSPIの動向は、決して隣国の遠い出来事ではありません。日本の投資家にとっても密接に関係しています。
日本の代表的なメモリ企業であるキオクシアの株価動向を見ると、KOSPIのチャートと驚くほど似た動きをしています。
銘柄: KOSPI(KRX:KOSPI)とキオクシアホールディングス(TSE:285A)の比較3/3
出所:TradingView(KOSPI KRX:KOSPI/キオクシアHD TSE:285A 日足チャート)
なぜこのような連動が起きるのでしょうか。それは、グローバルな機関投資家が、国境を越えて「同じメモリメーカー」というカテゴリーで企業を評価し、資金を動かしているからです。KOSPIが事実上「半導体メモリの指数」として機能している以上、日本の半導体関連株もその波及を免れることはできません。
また、今回のKOSPI急落の背景には、個人投資家による過度な信用取引(レバレッジ)が下落を増幅させたという需給面の問題もあります。6月9日には強制決済(ロスカット)の比率が10.5%という年初来最高を記録し、売りが売りを呼ぶ悪循環が発生しました。
こうした事態を踏まえ、泉田氏は近江商人の哲学を引き合いに出し、「自分とお客さんと取引先、みんながハッピーなのが商売の大原則って言ってるけど、本当にそうだなって思いますね」と語ります。バリューチェーン(価値の連鎖)の中で一部の企業だけが利益を独占する構造は、長期的には持続可能ではないという教訓です。
ただし、この混乱が世界的な金融危機に発展する可能性については冷静な見方を示しています。「韓国のGDPの規模がそこまで大きくないので、これが全世界に波及してAI相場が終わるとかそういう話には多分ならない」と分析しています。
投資を行う際は、特定の企業やセクターへの一極集中がもたらすリスクを正しく理解することが重要です。業績の数字(事実)だけでなく、それが顧客や産業全体にどのような影響を与えているかという「構造」に目を向けることで、株価の不可解な動きの裏にある本当の理由が見えてくるはずです。
参考資料
- Samsung Global Newsroom「2026年第2四半期 決算ガイダンス(暫定値)」(2026年7月7日)
- 韓国取引所(KRX)「KOSPI構成銘柄データ」
- YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
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