4. 60歳代・70歳代の懐事情は?データで見る「年金依存」の現実と就労収入のリアル

各種世帯の1世帯当たり平均所得金額の年次推移4/6

各種世帯の1世帯当たり平均所得金額の年次推移

出所:厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」

ニュースなどで目にする「世帯の平均所得575万2000円(令和6年 国民生活基礎調査)」という数字に対し、「自分の実感とかけ離れている」と感じる方は多いでしょう。

実際、所得を低い順に並べた中央値は451万円であり、平均値より124万円も低いのが現実です。

一部の高所得世帯が平均を引き上げているため、多くの世帯にとっては中央値こそがリアルな生活水準と言えます。

高齢者世帯(65歳以上)に限ると平均所得は336万1000円まで下がり、公的年金を受給している世帯の41.3%が「収入のすべてが年金・恩給のみ」という状況にあります。

また、J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年(二人以上世帯)」によると、老後の主な生活資金源として「就業による収入」を挙げている世帯の割合は、世帯主が60歳代の世帯では42.5%、70歳代以上でも18.7 %となっています。

体力や働く環境が整いやすい60歳代のうちに給付金をフル活用して働き、貯蓄の取り崩し時期をできるだけ後ろ倒しにすることが、老後資金を減らさない工夫の一つとなるでしょう。

5. 働きながら年金を増やす!「在職定時改定」と「繰下げ受給」の出口戦略

60歳代で働き続けるメリットは、目の前の給料や雇用保険の給付金を受け取れることだけではありません。

厚生年金に加入して働き続けることで、将来もらえる年金額そのものを増やせるメリットが存在します。

その代表例が「在職定時改定」です。65歳以上で働きながら厚生年金保険料を納めると、毎年10月に前年分の納付実績が年金額に即座に反映され、退職を待たずに受給中の年金額が毎年ステップアップしていきます。

さらに、令和8年度(2026年度)4月より、働きながら厚生年金を受け取る際の支給停止基準額(在職老齢年金の壁)が、従来の51万円から「65万円」へと大幅に引き上げられました 。

これにより、現役並みに稼いでも年金がカットされにくくなり、就労制限を気にせず年金をもらいながら意欲的に働ける環境が整っています。

ただし、就労収入で生活費を賄えるからと、年金受給を遅らせる「繰下げ受給」を選択する場合には極めて重要な落とし穴があります 。

繰下げ受給は1カ月遅らせるごとに受給額が0.7%増額されますが、「在職老齢年金制度」によって支給停止(一部または全部)されている部分については、繰下げを選んでも増額対象外になります 。

「知らずに繰り下げていたのに、在職中の支給停止ルールに引っかかっていて将来の年金が増えなかった」という悲劇を防ぐためにも、高収入を得ながら働く方は事前に入念な確認をしておきましょう。

6. まとめ:公的支援の活用がカギ!申請を忘れず安定したセカンドライフを

定年を迎えた後も、培ってきた経験やスキルを活かして前向きに働き続けるシニア世代が主流になりつつあります。

老後の資金対策というと、貯金の取り崩し計画や投資による資産形成といった自助努力に目が行きがちです。

今回ご紹介したような公的給付金や支援制度にアンテナを張り、受給できる権利を確実に行使することも、確実に効果が出る「生活防衛」の手段と言えるでしょう。

7. 筆者からのコメント

熊谷 良子

雇用保険の給付金は、どれも自分からハローワーク等に申請しなければ1円も受給できません。

「長く働く」という決断を経済面から支えてくれる公的制度の仕組みを正しく理解し、適切なタイミングで忘れずに手続きを行って、安心できるセカンドライフを手に入れましょう。

参考資料