5. 【注意点】75歳以上の医療費負担は「世帯単位」で判定!単身と夫婦でどう違う?

後期高齢者医療制度で特に重要なのは、医療費の負担割合が個人の所得だけではなく、同じ世帯に住む後期高齢者全員の所得を合算して決定されるという点です。

そのため、「自分の収入は多くないから負担も軽いはず」と安易に考えられないことには注意が必要です。

例えば、ご自身の年金収入がそれほど多くなくても、同居する配偶者に一定以上の所得があれば、世帯全体で「現役並み所得者」と判断される場合があります。その場合、医療機関での窓口負担は3割になってしまいます。

特に重要な判定基準は、「世帯内に住民税の課税所得が145万円以上の後期高齢者がいるかどうか」という点です。これに該当する方がいる世帯は、原則として現役並み所得者と見なされ、3割負担となる可能性が高くなります。

夫婦の一方に年金などの収入が偏っている世帯は、単身世帯に比べて世帯全体の収入が基準額を超えやすくなる傾向にあります。

個人の所得だけでなく、配偶者を含めた世帯全体の所得で負担割合が決まることを理解しておくことが重要です。

熊谷 良子

「自分の年金は少ないから1割負担」と思い込んでいたら、配偶者の収入によって3割負担になる、というケースは少なくありません。

もしマイナ保険証をお持ちなら、マイナポータルからご自身の現在の負担割合をいつでも確認できます。

病院の窓口で慌てることがないよう、受診前にチェックする習慣をつけておくと安心ですね。

ご自身の家計管理だけでなく、ご両親の通院をサポートする際にも役立ちます。

6. 2025年9月末で終了「窓口負担2割の配慮措置」とは?家計への影響を解説

後期高齢者医療制度の負担割合について、もう一つ知っておきたいのが「配慮措置」の終了です。

2022年10月から、一定の所得がある後期高齢者の窓口負担が1割から2割に引き上げられました。その際、急な負担増を緩和するための「配慮措置」が導入されていました。

具体的には、1カ月の外来医療費について、窓口負担の増加額を最大3000円に抑えるという内容でした(入院費は対象外)。しかし、この措置は期間限定だったため、2025年9月末をもって終了しています。

これにより、2割負担の対象となる方は、2025年10月以降、本来の2割分を窓口で支払うことになりました。定期的に通院している方にとっては、窓口での支払額が増えたと感じるかもしれません。

6.1 2026年8月に見直された「高額療養費制度」の上限額

ただし、配慮措置が終わっても、医療費の自己負担が際限なく増えるわけではありません。「高額療養費制度」により、支払う医療費の自己負担額には上限が定められているからです。

高額療養費制度は、2026年(令和8年)8月に見直しがおこなわれました。

具体的には、一般的な所得の方(2割負担を含む「一般Ⅰ・Ⅱ」)の場合、外来のみの自己負担限度額(個人ごと)は、従来の月1万8000円から月2万2000円(年間上限21万6000円)へと引き上げられています。

一見すると負担増のように思えますが、今回の見直しでは、長期にわたり治療が必要な方のセーフティネットとして、入院と外来を合わせた「年間上限額」が新たに設定されたのが重要なポイントです。

先ほどの「一般Ⅰ・Ⅱ」の区分であれば、世帯ごとの月額上限は6万1500円となりますが、年間の自己負担額が53万円(年収約200万円未満であることが確認できた場合は41万円)に達した後は、それ以上の医療費が保険者から還付されるようになります。

医療費の負担増は家計にとって心配事ですが、このような月ごとの上限額や新設された年間上限の仕組みを理解しておくと、いざという時の過度な不安を軽減できるでしょう。

ご自身の負担割合や最新の上限額を再確認し、医療費の目安を把握しておくことが大切です。

熊谷 良子

高額療養費制度は非常に心強い制度ですが、実は対象外となる費用もあります。

例えば、入院時の差額ベッド代や先進医療にかかる費用、通院のための交通費などは自己負担となります。こうした保険適用外の出費が、家計の思わぬ負担になることもあります。

また、医療と介護の両方で自己負担が大きくなった場合には、「高額介護合算療養費制度」という仕組みもあります。1年間の医療費と介護費の自己負担を合算し、上限を超えた分が払い戻される制度ですので、ぜひ覚えておいてください。

7. まとめ:高齢期の医療費不安に備えるために。夏の家計見直しのすすめ

今回は、後期高齢者医療制度の負担割合の決まり方や、「高額療養費制度」などの負担軽減の仕組みについて解説しました。

現在のシニア家計は物価上昇の波を大きく受けており、医療費や介護費といった突発的な支出が家計の見通しを狂わせかねない状況です。さらに、2026年度(令和8年度)から「子ども・子育て支援金」の本格的に始まるなど、社会保険料などの負担は今後も少しずつ増していくことが予想されます。

だからこそ、「制度を正しく知る」ことが最大の自己防衛になります。

医療費が2割や3割負担に該当したとしても、高額療養費制度によって1カ月の上限額が決まっていることを知っていれば、必要以上に将来を恐れることはありません。

物価高時代を乗り切るためには、公的な制度の仕組みを賢く利用し、無理のない範囲で長期的な家計プランを立てることが何よりも大切です。

熊谷 良子

老後の備えというと、つい「いくら貯蓄が必要か」「年金はいくらもらえるか」「新NISAで資産運用をしないと」といった手元のお金のことばかりにフォーカスしがちです。

しかし、かつて認知症の家族を抱え、介護と仕事の両立に悩んだ経験から痛感するのは、医療や介護にかかる「突然の支出」が家計に与える影響の大きさです。

だからこそ、今回解説したような医療費の窓口負担割合や「高額療養費制度」といった公的な仕組み、そしてその変化にしっかりと目を向けることが大切です。

制度を正しく知ることは、お金を貯めることと同じくらい、将来の安心と自分らしい暮らしを守る強力な盾になりますよ。

参考資料