まもなく9月を迎え、多くの企業では下半期がスタートします。10月以降には年末調整の書類も配られ、1年の収支がおおよそ見えてくる時期です。家計を点検するには、ちょうどよいタイミングといえます。
とりわけ50歳代は、家計の見直し効果が大きく出る年代です。子育てが一段落し、住宅ローンの返済も終盤にさしかかる。収入は現役で最も高くなる傾向にある一方、支出はやや落ち着き、貯蓄を伸ばしやすい時期に入ります。いわば人生の「貯めどき」です。
今回は、50歳代の二人以上世帯がどれくらい貯めているのかを平均と中央値から確認し、この貯めどきをどう生かすかを考えていきます。
なお、年代別の貯蓄額に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
- 50歳代・二人以上世帯の貯蓄は平均1908万円、中央値700万円。多くの世帯の実感に近いのは中央値のほう
- 2000万円以上が26.9%を占める一方、金融資産を持たない世帯も18.2%。老後を前に差が開く年代
- 中央値700万円から60歳までに2000万円台を目指すなら、年3%で運用できた場合で月約7万6000円が目安
1. 50歳代・二人以上世帯の貯蓄額、平均と中央値でこれだけ違う
金融経済教育推進機構(J-FLEC)が公表した「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)〔二人以上世帯調査〕」から、50歳代の金融資産保有額をみていきます。調査は2025年6月20日から7月2日にかけて、全国5000世帯を対象に実施されました。
まず、ここでいう「金融資産」が何を指すのかを、LIMOの記事「【全世代(20~70歳代)比較】貯蓄額の平均・中央値はいくら?」から引用して確認しておきましょう。
この調査における金融資産とは、預貯金に加えて株式や投資信託、生命保険などを指します。ただし、日常的に決済で利用する普通預金口座の残高は対象外です。
出所:【全世代(20~70歳代)比較】貯蓄額の平均・中央値はいくら?単身・二人以上世帯で比較すると見えた「お金がある人・ない人の差」 差が生まれる3つの要因を確認
生活費を出し入れする普通預金は含まれない点に注意が必要です。日々の残高ではなく、将来に向けて置いてあるお金の総額、というイメージになります。
1.1 50歳代・二人以上世帯の金融資産保有額の分布
- 金融資産非保有:18.2%
- 100万円未満:6.5%
- 100~200万円未満:6.4%
- 200~300万円未満:4.1%
- 300~400万円未満:3.5%
- 400~500万円未満:2.2%
- 500~700万円未満:6.7%
- 700~1000万円未満:7.7%
- 1000~1500万円未満:9.3%
- 1500~2000万円未満:6.1%
- 2000~3000万円未満:8.1%
- 3000万円以上:18.8%
- 無回答:2.2%
- 平均:1908万円
- 中央値:700万円
出所:【全世代(20~70歳代)比較】貯蓄額の平均・中央値はいくら?単身・二人以上世帯で比較すると見えた「お金がある人・ない人の差」 差が生まれる3つの要因を確認
平均は1908万円、中央値は700万円。平均が中央値を大きく上回るのは、まとまった資産を持つ世帯が全体を押し上げているためです。多くの世帯の実感に近いのは、中央値の700万円のほうでしょう。
分布を上下に分けてみると、2000万円以上の世帯は26.9%(2000~3000万円未満8.1%+3000万円以上18.8%)。一方で、生活口座以外に金融資産を持たない世帯も18.2%あります。老後を目前にして、世帯間の差がはっきり開いてくる年代だといえます。
2. 50代が人生の「貯めどき」といわれる3つの理由
50歳代は、家計にとって貯蓄を伸ばしやすい条件が重なります。大きな支出が一段落しやすいことが、その理由です。ここを逃さないことが、その後の老後資金を大きく左右します。
2.1 理由1:子どもの独立で、教育費という重い支出が終わる
ひとつめの貯めどきは、子どもが独立したあとです。教育費という大きな支出がなくなれば、その分をそのまま貯蓄に回せます。学費や仕送りに充てていた金額をそのまま積立に振り替えるだけで、家計の体感を変えずに貯蓄ペースを上げられます。
2.2 理由2:住宅ローンの完済で、毎月の返済がなくなる
ふたつめは、住宅ローンを完済したあとです。毎月の返済がなくなった分を、生活費に溶かさず将来へ振り向けたいところです。完済のタイミングは事前にわかっているので、その月から積立額を増やす、と決めておくのが確実でしょう。
2.3 理由3:役職定年などで収入が下がる「前」の数年間
そしてもうひとつ意識したいのが、役職定年などで収入が下がる前の時期です。収入が高いうちにどれだけ貯められるかで、定年後の余裕が変わってきます。
大切なのは、支出が減ったときや収入が増えたときに、暮らしの水準をそのまま上げてしまわないこと。浮いたお金を「なんとなく使う」のではなく、意識して貯蓄へ回す。この一手間が、貯めどきを生かすコツです。
3. 【試算】中央値700万円から、60歳までに2000万円台へ乗せるには月いくら必要か
50歳代の中央値は700万円、2000万円以上の世帯は26.9%でした。では、いま50歳で700万円を持っている世帯が、60歳までの10年間で2000万円に届かせるには、毎月いくら積み立てればよいのでしょうか。
すでにある700万円も同じ利回りで運用し続けるものとして試算しました。複利の計算方法は金融庁「つみたてシミュレーター」と同じ考え方で、月利は「(1+年利)の12分の1乗-1」として求めています。1000円未満は四捨五入しました。
3.1 50歳・貯蓄700万円 → 60歳で2000万円にするための毎月の積立額
- 運用しない場合(利回り0%):月約10万8000円(10年間の積立総額は約1300万円)
- 年利3%で運用できた場合:月約7万6000円(700万円が約941万円に育つ想定)
- 年利5%で運用できた場合:月約5万6000円(700万円が約1140万円に育つ想定)
運用の有無で、必要な積立額はおよそ2倍の開きが出ます。とはいえ、年3%でも毎月7万6000円。教育費や住宅ローンの返済が続いている状態では、簡単な金額ではありません。だからこそ、それらが終わったあとの数年間が効いてきます。
なお、これは一定の利回りを前提に置いた試算であり、運用には元本割れの可能性があります。この金額が保証されるものではない点にご注意ください。また、目標を2000万円に置いたのは分布の区切りに合わせたためで、必要な老後資金は世帯ごとに異なります。

