2. 夫婦の年金月22万円、生活費25万円で老後トータルでいくら不足する?

厚生年金の平均額(全年齢)1/1

厚生年金の平均額(全年齢)

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

まず、65歳で完全にリタイアした場合の不足額を確認します。

夫婦の年金を仮に月22万円(夫婦とも厚生年金に加入していた共働き世帯を想定)、老後の生活費を仮に月25万円とすると、収支は次のようになります。

  • 毎月の不足額:3万円
  • 1年間の不足額:36万円
  • 老後期間を仮に25年(65歳~90歳)とすると、単純計算での不足額は900万円

夫婦2人分の年金があっても、900万円という金額を資産の取り崩しだけでまかなうのは決して簡単ではありません。

3. 65歳から70歳まで5年間働くと、必要な老後資金はどう変わる?

そこで、65歳から70歳までの5年間、夫婦のどちらか(あるいは2人合わせて)月5万円の収入を得ながら働き続けるケースを試算してみます。

この5年間は、年金収入22万円に労働収入5万円を加えた27万円に対し、生活費は25万円のため、収支は次のようになります。

  • 65~70歳の5年間:毎月2万円の黒字(資産を取り崩すどころか、積み増しできる計算)
  • 5年間の黒字合計:120万円

そして70歳以降、完全にリタイアした後は年金のみの収入に戻るため、再び毎月3万円の不足が生じます。

  • 70~90歳の20年間:毎月3万円の不足 → 年間36万円 → 20年間で720万円の不足

この120万円の黒字と720万円の不足を通算すると、必要な老後資金は600万円となります。65歳で完全にリタイアした場合の900万円と比べ、300万円圧縮できる計算です。

同じ「年金だけでは月3万円不足する」という状況でも、資産・年金・労働収入の3つをどう組み合わせるかによって、必要な備えの大きさは大きく変わってきます。

4. 【筆者からのアドバイス】

「65歳を過ぎても働く」という選択肢は、単に収入を増やすだけでなく、資産を取り崩す期間そのものを短くする効果もあります。ただし、実際に検討する際には、以下の点も踏まえておきたいところです。

  • 収入増による「税金・社会保険料・医療費」の負担増に注意する

年収が一定ラインを超えると所得税や住民税が増えるだけでなく、世帯所得が上がることで将来的に医療費や介護サービスの窓口負担割合が上がってしまうケースもあります。「いくらまでなら損をしないか」の壁を意識して働き方をコントロールすることも大切です。

  • 働き方による「年金額への影響」を確認しておく

月5万円程度の労働では基本的に年金額は変わりませんが、社会保険(厚生年金)に加入できる条件(月8.8万円以上など)で働けば、将来もらえる年金を増やすことができます。ただし、さらに稼ぐ場合は年金が一部支給停止になる「在職老齢年金」の仕組みにも注意が必要です。

  • 繰下げ受給による年金額アップも併せて検討する

働く期間を延ばして生活費をカバーする一方で、年金の受け取りを遅らせる(繰下げ受給)ことで、一生涯もらえる年金額自体を増やす方法も有効な選択肢です。労働収入と組み合わせることで、より無理のない繰下げ計画が立てられます。

  • 無理のない働き方を夫婦で分担する

年齢とともに体力や健康状態は変化します。時短勤務や業務委託など、無理なく続けられる形を選ぶことが持続のコツです。また、どちらか一方だけが頑張るのではなく、夫婦二人で少しずつ分担して働くことも視野に入れましょう。

「何歳まで、どのくらい働くか」は個々の状況によって大きく異なりますが、まずはご夫婦で「年金だけでは月々いくら不足するのか」を具体的な数字で共有することから始めてみましょう。

5. まとめ

夫婦の年金を月22万円、生活費を月25万円と仮定すると、毎月3万円の不足が生じます。

65歳で完全にリタイアした場合、老後資金として900万円ほどが必要になる計算ですが、70歳まで5年間、月5万円の収入を得ながら働き続けると、必要な老後資金は600万円まで圧縮できます。

同じ「年金だけでは足りない」という状況でも、資産・年金・労働収入をどう組み合わせるかによって、必要な備えの規模は大きく変わってきます。まずはご夫婦の年金見込み額と生活費の差額を確認し、無理のない範囲で働き続けることも選択肢に入れながら、老後資金の計画を立てていきませんか。

参考資料

和田 直子