2. 厚生年金「月10万円」は、実は珍しくない水準
厚生労働省年金局の資料によると、厚生年金の平均年金月額は15万289円です(男性:16万9967円、女性:11万1413円/令和6年度)。この数字だけを見ると、「月10万円」という金額は平均を大きく下回っているように感じられるかもしれません。
しかし、同資料の「受給額の分布」を確認すると舞台裏が見えてきます。実は「10万円以上11万円未満」を受け取っている人は111万2828人にのぼり、これは全体の中でも特に人数が密集しているボリュームゾーンの一つなのです。
特に女性の平均額が11万1413円であることを踏まえると、月10万円前後という水準は、単身者(特に女性)にとって決して他人事ではないリアルな数字と言えます。
3. 生活費を「月15万円」と仮定すると、老後はいくら不足する?
では、実際の老後生活をシミュレーションしてみましょう。
ここでは、単身の会社員が老後に必要とする生活費を、仮に月15万円と仮定します(住居費や医療費によって個人差はありますが、一般的な目安としての試算です)。
年金の受給額を月10万円とした場合、生活費との差額は以下のようになります。
- 毎月の不足額:5万円
- 1年間の不足額:60万円
- 老後期間を仮に25年(65歳~90歳)とすると、単純計算での不足額は1500万円
世間では「2000万円じゃ足りない」「前提が古い」と悲観する声も少なくありません。
しかし、このように「自分の年金見込み額」と「想定される生活費」の差額から逆算してみると、世間の不安に振り回されない、自分にとっての基準が見えてきます。
もちろん、昨今のインフレ(物価高)傾向や、将来的な医療費・介護費のリスクを織り込むなら、この「1500万円」に数百万ずつの上乗せが必要になるケースは大いにあり得ます。だからこそ、一律の数字ではなく「自分にとってのリアルな不足額」を出すことが重要なのです。
4. 【筆者からのアドバイス】毎月5万円の不足をどう埋めるか
厚生年金だけでは老後の生活費をまかないきれない現実がある一方、「なんとかなるだろう」と楽観視したまま何も対策をしないのはリスクがあります。
まずは以下の4つの視点から、できることを順を追って整理していきましょう。
- 現金の確保: 緊急予備資金として、生活費の3〜6か月分はすぐに動かせる現金で持っておく
- 資産形成の活用: iDeCoやNISAを活用し、退職を迎えるまでの期間で不足分を賢く補う
- 長く働く選択肢: 65歳以降も無理のない範囲で働き続け、年金以外の「就労収入」を確保する
- 支出の最適化: 固定費(住居費や保険料など)を見直し、老後の生活費そのものをコンパクトにする
どの方法を選ぶべきかは、現在の年齢や資産状況、そして将来の働き方の希望によって異なります。
大切なのは、貯蓄や資産運用など「どれか一つ」に頼り切るのではなく、自分の状況に合わせて柔軟に組み合わせることです。
そのための第一歩として、まずは「ねんきん定期便」でご自身の年金見込み額を確認してみましょう。
仮定の数字ではなく、実際のデータから「自分のリアルな不足額」を把握することが、確実な老後対策のスタートラインになります。
5. まとめ
厚生年金の平均額は15万円を超えているものの、受給者の分布を詳しく見ると「月10万円台」の方は決して少なくありません。「年金10万円・生活費15万円」の暮らしでは、毎月5万円、年間で60万円の不足が生じます。この差額は決して小さくなく、現役時代のうちに向き合っておきたい現実です。
いまや「古い」「足りない」と言われることも多い老後2000万円問題ですが、大切なのは一律の目安に一喜一憂することではありません。
不足する金額が具体的に分かれば、資産運用でカバーするのか、長く働いて補うのかといった対策も明確になります。まずはご自身のねんきん定期便を開き、現実の数字を確認することから始めてみませんか。
参考資料
和田 直子
