5. 勘違いしやすい留意点:退職金は「年末調整」の対象外

退職した同じ年内に新しい会社へ転職した場合、転職先で年末調整を受けることになります。ここで多くの方が迷われるのが、「前の会社からもらった退職金の源泉徴収票も、新しい会社に提出するべきか?」という疑問です。

5.1 提出するのは「給与」の源泉徴収票のみ

結論として、退職金の源泉徴収票を新しい会社に提出する必要はありません。 日本の税制では、退職金は通常の給与とは切り離して個別に税金を計算する「分離課税」という仕組みがとられています。

そのため、給与の税金を精算する手続きである「年末調整」には、退職金を含めないのが正しい処理となります。

転職先に提出を求められるのは、あくまで前の会社での「給与所得の源泉徴収票」のみです。誤って退職金の源泉徴収票を渡してしまわないようご留意ください。

6. 手続きに迷った際の行動チェックリスト

ここまでの内容を踏まえ、ご自身の状況に合わせた手続きの方向性を確認するためのシンプルなチェックリストを整理しました。

  • 勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出した

    • ▶ 【原則】確定申告も年末調整の提出も不要です。

  • 申告書を出し忘れて、20.42%の税金が引かれている

    • ▶ 【必須】翌年に確定申告を行うことで精算されます。

  • 年の途中で退職し、年内に再就職していない

    • ▶ 【推奨】確定申告をすることで、給与の税金が還付される可能性があります。

  • 年内に再就職し、新しい会社で年末調整を受ける

    • ▶ 【注意】前の会社の「給与」の源泉徴収票だけを提出し、「退職金」の源泉徴収票は手元に保管します。

税金の手続きは用語が難しく敬遠されがちですが、ご自身の状況をこのフローに当てはめることで、次に取るべき行動が明確になるはずです。

7. まとめ

退職金の確定申告および源泉徴収票、年末調整に関する基本的なルールは以下の通りです。

  1. 申告書の提出が鍵:「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、源泉徴収によって税金の手続きは完了する。
  2. 確定申告で得するケース:申告書を出し忘れた場合や、年の途中で退職したままの場合などは、確定申告で税金が戻る可能性がある。
  3. 源泉徴収票の保管:退職後にもらえる「退職所得の源泉徴収票」は、確定申告の際の基礎資料となるため大切に保管する。
  4. 年末調整の対象外:退職金は分離課税であるため、転職先の年末調整には含めず、提出も不要。

退職金は、これからの生活を支える大切な資金です。税金に関する正しい知識を持つことは、その大切な資金を適正に守るための第一歩となります。

手元に届いた書類の内容を冷静に確認し、ご自身の状況に合わせて最適な選択をご検討ください。

8. 執筆者コメント:書類の意味を理解し、自分の資産を自分で守る

役所の論理で作られた税金の制度は、時に「知っている人だけが得をし、知らない人が静かに損をする」構造になりがちです。退職金における「申告書の提出」は、まさにその典型例と言えます。

手続きがわからず不安になったときは、まずは手元にある源泉徴収票の数字を確認し、自分がすでに適切な控除を受けているのかどうかを把握することが重要です。

必要であれば国税庁のウェブサイト等を参照しながら、国税の仕組みを冷静に活用し、大切な資産を守るための判断材料としていただければと思います。

参考資料

齊藤 慧