3. 65歳になったらNISAをすぐ解約すべき?

「年金受給が始まったから、投資はもう終わり」と考える方は少なくありません。

しかし、65歳はゴールではなく、多くの方にとってそこから20〜30年の生活が続きます。

たとえば65歳から85歳まで20年間、毎月3万円を年金の補填として引き出すとすると、合計で720万円が必要になります。

その分を65歳時点で全額預金に移してしまうと、それ以降は増える見込みがありません。

一方で、低コストのインデックスファンド(オルカンなど)を保有しながら必要な分だけ取り崩していけば、運用の成長分が取り崩しのペースを緩やかにする可能性があります。

もちろん、運用には価格変動のリスクがつきまといます。

65歳以降に必ずしも運用を続けなければならないわけではありませんし、反対に続けることが正解とも言い切れません。

大切なのは、「年金受給が始まる年齢になったから自動的にやめる」のではなく、自分のマネープランに合わせて判断することではないでしょうか。

4. 老後資産の「引き出し方」3つのパターン

65歳以降に積み立てた資産を活用する方法として、代表的なパターンを整理してみます。

4.1 パターン①定額取り崩し

オルカンやS&P500などのインデックスファンドを保有したまま、毎月または毎年一定額を売却して生活費に充てる方法です。

証券会社によっては、定期的な自動取り崩しを設定できるサービスも増えています。

メリットは、運用を継続しながら資産の減少ペースを緩やかにできる可能性がある点です。運用が好調な局面では資産が増えながら取り崩せるため、思ったより長持ちするケースもあります。

ただし、相場が大きく下落している局面では資産が減るペースが加速します。「安い時に売ってしまっている」という状況になるため、相場の動きを気にしすぎてしまう方には精神的な負担になることもあります。自分の性格やリスク許容度も含めて考えたいところです。

4.2 パターン②毎月分配型投資信託

毎月一定の分配金が支払われる投資信託を活用する方法です。年金のような「毎月決まった額が入ってくる」感覚に近く、生活設計がしやすいと感じる方もいます。

ただし、毎月分配型の分配金は運用成果によって変動しますし、場合によっては削減・停止されることもあります。

分配金の原資が運用益だけでなく元本から支払われる「元本払い戻し」になっているケースも多く、「もらえているから増えている」とは必ずしも言えません。

仕組みをしっかり理解した上で選ぶことが大切です。

4.3 パターン③預金・定期預金に移す

運用リスクを取りたくない、あるいは近い将来に大きな支出が予定されているなら、預金に移しておくことも十分合理的な選択肢です。

特に近年は金利が上向きの局面もあり、以前に比べれば定期預金に置いておくことの意味が出てきている面もあります。

この先10年以上使う予定がない資金と、5年以内に使う可能性が高い資金では、置き方を変えるのが良いでしょう。

全体の資産バランスを見ながら、「すぐ使う分は預金、長期で置ける分は運用継続」と役割を分けて考えてみるのも一つのアイデアです。

5. 老後資金は「貯め方」と「使い方」を考える

定額取り崩しも毎月分配型もどちらが正解とは言えませんし、全額預金に移すことも状況によっては賢明な判断です。

大切なのは、「65歳になったから」という年齢だけを理由に、一律で動かしてしまわないことではないでしょうか。

まず確認したいのは、自分の年金がいくらになるかです。

「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」で試算できます。そして月々の生活費との差額を計算してみると、NISAの資産から毎月どれくらいを補填すればいいかのイメージが見えてきます。

「この先何年使う予定か」「相場の変動にどれくらい耐えられるか」「緊急予備資金は別に確保できているか」——そうした問いに自分なりの答えを出しながら、資産の使い方を少しずつ設計していきましょう。

老後資金の「貯め方」だけでなく「使い方」を考えておくことが、これからの大切な備えになると感じます。

6. 筆者コメント

和田 直子

金融メディアで日々こうした一次資料を読み解く中で強く感じるのは、老後資金は「貯め方」と同じくらい「使い方」の設計が重要だということです。資産の引き出し方に一律の正解はなく、運用を続けながら効率よく崩したい方もいれば、確実性を重視して預金に戻すことが正解になる方もいます。まずは「ねんきん定期便」などでご自身の年金額を確かめ、生活費との差額を把握することが大切です。ご自身の性格やプランに合った最適な方法を見つけるためのファーストステップにしていきましょう。

参考資料

和田 直子