5. 2026年度の年金額はいくら?国民年金・厚生年金のモデルケース
公的年金の支給額は、物価や現役世代の賃金の変動を反映し、毎年度改定される仕組みになっています。
2026年1月23日、厚生労働省は2026年度(令和8年度)における年金額の目安を公表しました。
新年度の4月分から適用される改定率は、国民年金(基礎年金)で+1.9%、厚生年金(報酬比例部分)で+2.0%の引き上げとなります。
- 国民年金(老齢基礎年金・満額):月額7万608円(1人分 ※1)
- 厚生年金(夫婦2人分のモデルケース):月額23万7279円(夫婦2人分※2)
※1 昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金(満額1人分)は、月額7万408円(前年度比+1300円)です。
※2 平均的な収入(賞与を含む月額換算で45万5000円)の男性が40年間就業した場合に受け取り始める年金額(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金満額)の給付水準です。
国民年金のみの受給の場合、保険料を全期間納付して満額(※3)を受け取ったとしても、月額は約7万円にとどまります。
また、受給開始を75歳まで遅らせる「繰下げ受給(※4)」を利用したとしても、月額は13万円に満たない水準です。
※3 国民年金の保険料を40年間(480カ月)納付した場合に、65歳から受け取れる満額の年金額を指します。
※4 繰下げ受給とは、年金の受け取り開始を66歳から75歳までの間で遅らせる制度です。1カ月遅らせるごとに0.7%増額され、75歳開始では最大84%増額されます。
これらはあくまでモデルケースに基づいた金額であり、実際の受給額は現役時代の働き方や収入によって大きく変動します。
そのため、「ねんきんネット」などを活用して、ご自身の年金見込み額を一度確認しておくことが大切です。
6. 国民年金と厚生年金、その基本構造を再確認
日本の公的年金制度は、基礎部分である「国民年金(基礎年金)」と、その上乗せ部分である「厚生年金」の2つから成り立っています。
この仕組みは、一般的に「2階建て構造」として知られています。
ここでは、それぞれの年金制度の基本的な仕組みについて見ていきましょう。
【1階部分】国民年金(基礎年金)
- 加入対象:原則として日本に住む20歳から60歳未満のすべての人
- 保険料:全員が定額。ただし年度ごとに改定される(※1)
- 受給額:保険料を全期間(480カ月)納付すると、65歳以降に満額の老齢基礎年金(※2)を受給できる。未納期間があれば、その分が満額から減額される
※1 国民年金保険料:2025年度の月額は1万7510円
※2 国民年金(老齢基礎年金)の満額:2025年度の月額は6万9308円
【2階部分】厚生年金
- 加入対象:会社員や公務員、またパートタイマーなど、特定適用事業所(※3)で働き、一定の要件を満たす人が国民年金に上乗せして加入
- 保険料:収入に応じて決定される(上限あり)(※4)
- 受給額:加入期間や納付した保険料によって個人差が生じる
2階部分にあたる厚生年金は、会社員や公務員が国民年金に加えて加入する制度です。
国民年金と厚生年金とでは、加入対象者や保険料の決定方法、受給額の計算方法などが異なります。
このため、老後に受け取る年金額は、現役時代にどの制度に加入していたかや、収入の状況によって大きく変わってきます。
さらに、公的年金の支給額は物価や現役世代の賃金の動向に応じて毎年度見直されるという点も、理解しておきたいポイントです。
※3 特定事業所:1年のうち6カ月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が51人以上となることが見込まれる企業など
※4 厚生年金の保険料額:標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算される
7. 年金制度改正の動向:「年収106万円の壁」撤廃への動きとは
2025年6月13日、「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」が参議院本会議で可決・成立しました。
この法改正は、働き方や家族構成、ライフスタイルの多様化に対応した年金制度を構築することを目的としています。
同時に、私的年金制度の拡充や所得再分配機能の強化を通じて、高齢期の生活基盤を安定させることも重要な狙いです。
ここでは、今回の改正の全体像を概観します。
7.1 年金制度の「主な改正内容」
社会保険の加入対象の拡大
- 中小企業で短時間勤務する人々などが厚生年金や健康保険に加入しやすくなり、将来の年金増額といったメリットを受けられるようにする
在職老齢年金の見直し
- 年金を受給しながら働くシニアが、年金を減額されにくくなることで、より意欲的に働ける環境を整える
遺族年金の見直し
- 遺族厚生年金における男女差を是正し、子どもが遺族基礎年金を受給しやすくなるよう改善する
保険料や年金額の計算に使う賃金の上限の引き上げ
- 月収が一定額を超える人が、その賃金に応じた年金保険料を負担し、現役時代の収入に見合った年金を受給しやすくする
その他の見直し
- 子どもの加算や脱退一時金の見直し
- 私的年金の見直し:iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入可能年齢の上限引き上げなど
今回の改正内容からも分かるように、公的年金は単に「老後に受け取るお金」というだけでなく、現役時代の働き方やキャリアプラン、ひいては人生設計そのものと深く関わる制度といえるでしょう。
8. 【コラム】60歳代・70歳代世帯の「主な生活資金源」とは?老後資金の「理想」と「現実」のギャップ
J-FLEC「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」によると、シニア世帯が老後の生活資金源として頼りにしているものの割合は以下の通りです。
8.1 60歳代・70歳代世帯「老後の主な生活資金源」
- 公的年金:60歳代 75.0% / 70歳代 87.3%
- 就業による収入:60歳代 42.5%
- 金融資産の取り崩し:70歳代 27.6%
このように、60代歳・70歳代の二人以上世帯ともに公的年金がトップですが、年金以外の資金源として、60歳代は「働くこと」、70代は「貯蓄の取り崩し」も頼りにしていることがわかります。
一方で、年金支給時に最低限準備すべきと考える金融資産の目安(二人以上世帯)は、60歳代で2315万円、70歳代で1874万円です。
しかし実際の貯蓄額(中央値)は、同じ二人以上世帯で60歳代が1400万円、70歳代が1178万円にとどまります。
さらに単身世帯にいたっては、60歳代の貯蓄額の中央値がわずか300万円となっており、世帯規模を問わず理想と現実には大きなギャップが存在します。
老後の生活を安定させるためには、長く働き収入を得ることや、計画的な資産形成による早めの備えがますます重要になります。
9. まとめ:物価上昇時代に備える、これからの資産戦略
物価の上昇が続くなか、毎月の家計が赤字に陥り、生活にゆとりを持てないシニア世帯が増えているのが現状です。
物の値段が上がる時代においては、預貯金の額面が変わらなくても、実質的に購入できるものが減ってしまうインフレリスクを意識する必要があります。
また、2026年度(令和8年度)からは、働きながら年金を受け取る際の「在職老齢年金」における支給停止調整額が65万円に引き上げられました。
これにより、一定の給与収入があっても年金が減額されにくくなるため、シニア世代の就労に関する選択肢はさらに広がることが期待されます。
これからの時代は、長く働き続けることで安定した収入を確保しつつ、手元にある資産の一部を「働かせる」という視点が不可欠です。NISAやiDeCoといった税制優遇制度の活用も検討し、資産を守りながら育てていく工夫を始めてみてはいかがでしょうか。



