老後の年金がいくらになるかは、現役時代の年収と加入期間で大きく変わります。
2026年度は年金額の改定があり、基礎年金は前年度より1.9%、報酬比例部分は2.0%引き上げられました。老齢基礎年金の満額は月7万0608円となり、夫婦2人分の標準的な年金額(モデル年金)は月23万7279円と公表されています。
筆者は1級ファイナンシャル・プランニング技能士として、法人向けのリスク提案から個人のライフプラン相談まで携わってきました。年収や加入期間によって受給額は大きく変わるため、まずはモデルケースで具体的な金額感をつかんでおくことが、老後資金を考える出発点になります。
本記事では、平均年収610万円で40年間年金に加入した人の年金額の目安を試算します。あわせて、年収610万円が給与所得者全体でどの位置にあるかも確認するので、ぜひ参考にしてみてください。
1. この記事の3つのポイント
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2026年度の老齢基礎年金の満額は月7万608円、モデル年金(夫婦2人分)は月23万7279円に改定 -
平均年収610万円・40年加入で試算すると、厚生年金と基礎年金を合わせた月額は約18万2000円(厚生年金の男性平均を約1万2000円上回る水準) -
年収610万円は給与所得者の男性平均587万円を上回るが、600万円超700万円以下の層は給与所得者全体の7.61%にとどまる
2. 2026年度の年金額改定と老齢基礎年金の水準
2026年4月分から年金額が改定され、老齢基礎年金の満額は月7万608円となりました。1956年4月2日以後生まれの人に適用される金額で、40年間国民年金に加入した場合の水準です。
2.1 改定率と満額
日本年金機構によると、2026年度の改定率は基礎年金部分で前年度比プラス1.9%、報酬比例部分でプラス2.0%となりました。夫婦2人分の標準的な年金額(モデル年金)は月23万7279円と公表されています。
物価と賃金の上昇を反映した改定が続いており、2025年度と比較しても実質的な年金額は増えています。40年間国民年金に加入した人であれば、基礎年金だけで年84万7296円を受け取れます。
老齢基礎年金の満額は、40年間きちんと加入していれば誰でも同じ水準になります。ここに厚生年金がどれだけ上乗せされるかで、老後の年金額は大きく変わってきます。
厚生年金加入者の場合は、この老齢基礎年金に報酬比例部分が上乗せされる仕組みです。加入期間中の平均給与によって上乗せ額が変わるため、老齢基礎年金の水準は共通でも、現役時代の年収が高いほど厚生年金部分が厚く積み上がり、同じ40年加入でも最終的な受給額に大きな差が生まれます。
3. 平均年収610万円・40年加入で試算する厚生年金の計算式
厚生年金の報酬比例部分は、平均標準報酬額に一定の乗率と加入月数を掛けて算出します。2003年4月以降の加入期間には5.481/1000という乗率が使われます。
3.1 報酬比例部分の求め方
計算式は「平均標準報酬額×5.481/1000×加入月数」です。年収610万円(賞与含む)を12で割ると、平均標準報酬額は月50万8333円になります。加入月数は40年で480ヶ月です。
この式に当てはめると、50万8333円×5.481/1000×480=約133万7000円が年額の報酬比例部分となります。月額に換算するとおよそ11万1400円です。
さらに老齢基礎年金の月7万0608円を加えると、月額の合計は約18万2000円となります。年額ではおよそ218万4000円です。
厚生労働省「令和6年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、男性の厚生年金第1号平均月額は16万9967円です。同じ資料では女性は11万1413円、全体平均は15万0289円と公表されています。610万円モデルの試算値である月約18万2000円は、男性平均を約1万2000円上回る計算です。
月約18万2000円という試算値は、あくまで平均標準報酬額をもとにした理論値です。賞与のタイミングや休職期間、標準報酬月額の上限などによって実際の受給額は変わるため、目安として捉えてください。それでも男性の平均月額を上回る水準というのは、610万円という年収の位置づけを考えるうえで参考になる数字だと思います。
なお実際の受給額は、賞与の支払時期や標準報酬月額の上限、途中の休職期間などで変動します。長期にわたる加入では、平均標準報酬額を計算する際に過去の給与を現在価値に置き直す再評価も行われる点に留意が必要です。
4. 年収610万円は給与所得者の中でどの位置か
国税庁の民間給与実態統計調査によると、給与所得者全体の平均給与は478万円です。男性の平均は587万円で、女性の平均は333万円となっています。
4.1 国税庁データから見る分布
年収610万円は男性平均の587万円を上回る水準です。同調査の給与階級別集計では、年収600万円超700万円以下の給与所得者は390万7007人で、給与所得者全体の7.61%にとどまります。
年収600万円超700万円以下の層が給与所得者全体の7.61%というのは、思ったより少なく感じる方も多いのではないでしょうか。年収610万円は決して「普通」の水準ではなく、上位に入る収入だということは意識しておきたいポイントです。
つまり年収610万円は、給与所得者全体の中でも上位に位置します。ただし、物価高が続いている昨今においては年収610万円でも少ないと感じる人もいるかもしれません。
実際に私がファイナンシャル・プランナーとしてライフプランの相談に乗る際にも、都内で年収610万円だと生活に余裕がある人はそこまで多くない感覚です。
5. 監修者コメント:「平均を上回っている」で終わらせない、老後資金の考え方
今回の試算では、年収610万円・40年加入のモデルケースで月約18万2000円という数字が出てきましたが、これはあくまで理論値です。実際の受給額は賞与の時期や休職期間、標準報酬月額の上限などによって変わるため、まずはねんきん定期便やねんきんネットでご自身の実際の見込み額を確認することをおすすめします。
銀行の窓口でも、「平均より年収が高いから年金も安心」と考えていた方が、実際に試算してみると想定より少なかったというケースを何度も見てきました。年収が平均を上回っていることと、老後の生活が安心であることは、必ずしもイコールではありません。
厚生年金と老齢基礎年金だけで生活費を賄えるかどうかを早めに確認し、不足しそうであればNISAやiDeCoといった制度も含めて、老後資金の準備を前倒しで検討しておくと安心です。
6. 老後資金の全体像を早めに確認しましょう
平均年収と加入期間、共働きか片働きかによって年金受給額は大きく異なります。
そのため、ねんきん定期便で自分の加入記録を確認し、将来受け取れる年金額を試算しましょう。年金だけでは生活できないことがわかれば、今から老後資金の準備が必要です。
老後資金の準備は早い段階で着手するほど選択肢が広がります。厚生年金と老齢基礎年金だけで生活費を賄えるか、家計の実情に照らして確認してみてください。
参考資料
- 日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」
- 日本年金機構「は行 報酬比例部分」
- 厚生労働省「令和6年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」(2025年12月18日公表)
- 国税庁「令和6年分民間給与実態統計調査」(2025年9月公表)
苛原 寛

