4. 【年齢・年収帯別データ】40代・50代の「ふつうの貯蓄額」はいくら?

では、働き盛り世代の年収の高さは、実際の貯蓄額にどれくらい直結しているのでしょうか。

J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年(二人以上世帯調査)」のクロス集計データ(年齢・年収別)から、40歳代・50歳代のリアルな金融資産保有額(貯蓄ゼロ世帯を含む)の実態をピックアップしてみていきましょう。

4.1 40歳代・二人以上世帯の年収別貯蓄額

40歳代・二人以上世帯の年収別貯蓄額3/5

40歳代・二人以上世帯の年収別貯蓄額

出所:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」をもとにLIMO編集部作成

  • 収入はない:平均382万円 / 中央値0万円
  • 300万円未満:平均310万円 / 中央値10万円
  • 300~500万円未満:平均506万円 / 中央値165万円
  • 500~750万円未満:平均1244万円 / 中央値511万円
  • 750~1000万円未満:平均2012万円 / 中央値1000万円
  • 1000~1200万円未満:平均2141万円 / 中央値1500万円
  • 1200万円以上:平均4339万円 / 中央値2400万円

4.2 50歳代・二人以上世帯の年収別貯蓄額

50歳代・二人以上世帯の年収別貯蓄額4/5

50歳代・二人以上世帯の年収別貯蓄額

出所:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」をもとにLIMO編集部作成

  • 収入はない:平均1038万円 / 中央値0万円
  • 300万円未満:平均463万円 / 中央値10万円
  • 300~500万円未満:平均767万円 / 中央値200万円
  • 500~750万円未満:平均1549万円 / 中央値700万円
  • 750~1000万円未満:平均2084万円 / 中央値1270万円
  • 1000~1200万円未満:平均2408万円 / 中央値1500万円
  • 1200万円以上:平均5397万円 / 中央値3500万円

世帯の年収階級が高くなるにつれて貯蓄も高くなっていくという「正の相関」が見て取れます。

しかし、ここで注目すべきは40歳代のデータにおける「中央値」のリアルな金額です。

世帯年収が「750~1000万円未満」という、一般的には比較的高年収とされる層であっても、中央値は1000万円にとどまっています。

年収が高くても「思うように貯蓄に回せていない世帯」が数多く存在することを示すデータとも言えるでしょう。

特に40歳代・50歳代は、子どもの学習塾や大学の学費といった教育費、そして住宅ローンの返済がピークを迎える時期です。

「世帯年収は高いのに、毎月の固定費や支払いに追われて手元にお金が残らない」という、いわゆる“高年収貧乏”に最も陥りやすいのがこの世代。

国税庁のデータが示す通り年収の額面は高くても、それがそのまま貯蓄の多さに直結するとは限らないシビアな現実がここにあります。

熊谷 良子

比較的高年収であるにもかかわらず貯蓄が少ない背景には、教育費や住宅ローンといった固定費に加え、40歳代・50歳代特有の「見えないリスク」も潜んでいる可能性も。

中には、この時期から親の介護が始まるという人もいるでしょう。私自身も50歳代ですが、過去にビジネスケアラーとして家族の介護と仕事の両立に悩んだ時期がありました。

親の介護費用をすべて負担することはなくても、介護に時間をとられて働き方を変えざるを得なかったり、介護離職に至るリスクもあります。

さらに、ご自身の健康問題で急に働けなくなる可能性もゼロではありません。

万が一収入が減少しても家計がショートしないよう、手元にある程度の現金を確保しておくことが大切です。

5. 【共働きか片働きか】世帯の「年収構造」と「所得制限の壁」が貯蓄格差を広げる

同じ年代、同じ年収帯であっても貯蓄額に差がつく要因の一つとして見逃せないのが、「世帯の働き方」、つまり年収の「構造」です。

たとえば、同じ「世帯年収1000万円」の40歳代世帯であっても、「夫が一人で1000万円を稼ぐ(片働き)」場合と、「夫が600万円、妻が400万円を稼ぐ(共働き)」場合とでは、家計の強靭さや貯蓄ペースが異なります。

日本の所得税や住民税は累進課税制度をとっているため、一人で高年収を得るよりも、二人で収入を分散させたほうが、世帯全体の手取り額(可処分所得)は多くなりやすい傾向があります。

また、共働き世帯は収入の柱が2本あるため、どちらかの収入が病気や会社の業績不振などで一時的に減少しても、家計全体への致命的なダメージを抑えやすいという「リスク分散効果」も働きます。

「年収総額」という表面的な数字だけでなく、「どのような収入構造で家計を支えているか」も、将来の資産形成の成否を大きく分ける要因となっています。

6. 年収以外の強力なエンジン「運用益」の存在感

さらに、40歳代・50歳代の貯蓄格差を決定づけているのは「年収(労働収入)」だけではありません。

J-FLECの同調査によれば、40歳代・50歳代の「金融資産が増加した理由」として、以下のような結果が出ています。

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  • 「定期的な収入(年収)の増加」:40歳代37.5%、50歳代26.6%
  • 「株式や債券の価格上昇による評価益」:40歳代38.4%、50歳代34.1%
  • 「配当や金利収入」:40歳代33.0%、50歳代29.5%

労働による「年収の増加」以上に、投資や運用による「運用益(評価益や配当)」の恩恵を受けて資産を増やしていると答えた世帯の割合が多い傾向にあります。

どんなに年収が高くても、それを現金で銀行に眠らせているだけでは、前述したインフレ(物価高)によって実質的な価値は目減りしてしまいます。

年収の一部を「お金に働いてもらう」仕組みへとシフトできているかどうかが、40歳代・50歳代の資産形成において、年収額そのものと同じくらい重要な第2のエンジンになっているのかもしれません。

熊谷 良子

データが示す通り、今は「労働収入(年収)」だけでなく「運用益」が資産を育てるエンジンになり得るでしょう。

とはいえ、「何から始めればいいか分からない」という方も少なくないと思います。

私自身もフリーランス歴がありますが、自営業やフリーランスなど、国民年金(第1号被保険者)のみに加入している働き方の場合は、掛け金が全額所得控除になる「iDeCo(個人型確定拠出年金)」や「国民年金基金」をフル活用する手があります。

現在の税負担(所得税・住民税)を減らしながら、運用益を非課税で再投資できるのは大きなメリットです。

ご自身の働き方に応じた制度の使い倒しが、将来の格差を分ける鍵になるかもしれません。

7. まとめ

今回見てきたように、40歳代・50歳代の年収と貯蓄には確かな相関関係があるものの、物価高やライフステージ特有の支出、そして「働き方(年収構造)」「所得制限の壁」や「運用益の有無」によって、同じ年収帯でも大きな貯蓄格差が生まれています。

これからの時代、インフレの波を乗り切るためには、無理のない範囲で「先取り貯蓄」を習慣化し、NISAやiDeCoといった非課税制度を活用して運用益を狙う姿勢が求められます。

ただし、ここで注意したいのが「制度の流動性リスク」です。

40歳代・50歳代は、子どもの進学などで急にまとまった現金が必要になる世代でもあります。iDeCoは税制優遇が手厚い反面、原則として60歳まで資金を引き出すことができません。

一方で、新NISAは非課税の恩恵を受けながら、必要なときにいつでも引き出しが可能です。

したがって、教育費など近い将来に向けた資金には「NISA」や預貯金を、老後を見据えた長期資金には「iDeCo」を活用するといったように、資金の目的に応じて流動性の違いを理解し、使い分けることが不可欠です。

額面の年収額にとらわれず、急な支出にも耐えられる「流動性」を意識しながら、秋に向けて家計の構造そのものを強くする第一歩を、ぜひこの夏から踏み出してみてはいかがでしょうか。

熊谷 良子

毎年届く「ねんきん定期便」のリアルな見込額を見るたびに、「年金履歴は、自分の生き方・働き方の履歴そのものだ」と感じています。

働き方が多様化する今、年収の額面だけでなく「将来もらえる年金額」を早い段階で把握することが、老後に困らないための第一歩です。実は、ねんきん定期便の「これまでの加入実績に応じた年金額」は、50歳未満と50歳以上で見方が異なります。50歳以上は「現在の年収が60歳まで続くと仮定した見込額」が表示され、よりリアルな金額が分かります。

若いうちからこうした年金の知識を備え、自分らしいライフ&キャリアを歩みながら、資産の入り口と出口を見据えたプランを描いていきたいものですね。

※投資には元本割れのリスクがあります。最終的な判断はご自身で行ってください。

参考資料