厚生労働省「令和7(2025)年簡易生命表の概況」によれば、男女ともに日本の平均寿命が延びています。

寿命が延びるのは嬉しいことですが、同時に老後資金に不安を感じる方もいるでしょう。日本の少子高齢化は進んでおり、女性は41年連続平均寿命1位にもなっていますが、「年金は減らないだろうか」「どんな老後を過ごせるのか?ゆとりはもてるのか…」など不安を抱える方もいるでしょう。

石津 大希
金融や年金に関する記事を、これまで多く編集してきました。年金だけで暮らせない今、「年金を少しでも増やせないか」と思う方もいるでしょう。制度の解説を重ねるなかで感じるのは、増やすための選択肢を知っているかどうかで、老後の見通しは変わってくるということです。とくに「繰下げ受給」は、待つほど年金が増えるしくみとして注目されますが、「実際にいくら増えるのか」まで把握している方は多くありません。また、メリットだけではないところもあります。

本記事では、公的年金の基本や平均を整理したうえで、繰下げで年金を増やす方法と、その見込額を確かめる手段まで、元銀行員の筆者が解説をします。

1. この記事を読んだらわかる3つのポイント

  •  毎年度見直される2026年度の年金額と、加入歴で開く平均受給額の男女差
  •  受け取りを遅らせるほど増える「繰下げ受給」のしくみと、最大84%という増額率
  •  「あと何年待てばいくら増えるか」を教えてくれる繰下げ見込額のお知らせ

2. 日本の公的年金の特徴とは?みんな、年金は月平均いくら支給されているか【厚生年金と国民年金】別で解説

日本の公的年金は「2階建て」にたとえられます。

厚生年金と国民年金の仕組み1/5

厚生年金と国民年金の仕組み

出所:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」

2.1 国民年金(基礎年金)

国民年金制度の加入対象は、原則として国内居住者のうち「20歳以上60歳未満」のすべての人々です。

年金保険料は全国一律で、年度ごとに見直しが実施されます。40年間保険料を漏れなく納めた人は、65歳以降に満額の老齢基礎年金を受給できるようになります。

2.2 厚生年金

厚生年金制度に加入するのは、会社員や公務員、さらに特定適用事業所で働くパートなど、一定の要件をクリアした人で、国民年金と併せて加入する制度となっています。

年金保険料は給与水準により決定(上限あり)し、老後の受給額は加入した期間や支払った保険料によって個人ごとにばらつきが出ます。

なお、2026年10月より年収106万円の壁が撤廃予定など、厚生年金の適用は徐々に拡大されています。

2.3 みんな、年金は月平均いくら支給されている?

実際の平均額はどのくらいでしょうか。厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、平均の年金月額は次のとおりです。

  • 厚生年金:全体15万289円(男性16万9967円/女性11万1413円)※国民年金部分を含む
  • 国民年金:全体5万9310円(男性6万1595円/女性5万7582円)

現役時代の年金加入状況により、これだけの違いが表れます。

だからこそ、年金制度に早くから興味をいだき、自分の加入状況を調べたり、公的年金を増やしたりする方法を考えたいものです。

3. 【繰下げ受給】66~75歳の間、何歳で何パーセント増額されるのか「繰下げ増額率早見表」で見る

年金を増やす方法の一つとしてあるのが繰下げ受給です。年金は、受け取り始める時期を遅らせることで、金額を増やすこともできます。

老齢年金は66歳から75歳までの間で受給開始を遅らせることができ、1か月遅らせるごとに0.7%増えます。

以下の表で、何歳だとどれくらい増額されるのかを確認しましょう。

3.1 繰下げ増額率早見表

繰下げ増額率早見表4/5

 繰下げ増額率早見表

出所:日本年金機構「老齢年金の繰下げ受給」

最も遅い75歳まで繰り下げた場合、増額率は84%にのぼります。また、老齢基礎年金と老齢厚生年金は、別々に繰り下げることもできます。

もっとも繰り下げているあいだは年金を受け取れませんし、その間の生活費は別に用意しておく必要があります。長く働いて収入があるうちは繰り下げる、というのも一つの考え方でしょう。

また、いつから受け取るのが自分にとってよいかは、健康状態や働き方によって変わってきますので、個々人で慎重に検討する必要があります。

4. 「繰下げ見込額のお知らせ」で、増える額を確かめる

繰下げを検討するとき、頼りになるのが日本年金機構から届く「繰下げ見込額のお知らせ」です。これは、年金を繰り下げて受け取り始めた場合に、年金額がどのくらい増えるのかを、事前に知らせてくれる通知です。

対象となるのは、昭和27年4月2日以降に生まれ、老齢年金(老齢基礎年金または老齢厚生年金)をまだ受け取っていない方などです。66歳から74歳までの間、毎年、誕生月の初旬(1日生まれの方は前月の初旬)に送られてきます。ただし、遺族年金や障害年金を受け取っている方は送付の対象外です。

日本年金機構「老齢年金の繰下げ受給を希望している方へのお知らせ」5/5

日本年金機構「老齢年金の繰下げ受給を希望している方へのお知らせ」

出所:日本年金機構「老齢年金の繰下げ受給を希望している方へのお知らせ」

お知らせには、繰り下げた場合の年金見込額のほか、これまでの年金加入期間などが記載されています。「あと何年待てば、いくら増えるのか」を具体的な数字で確認できるので、繰下げを迷っている方にとっては、判断の材料の一つになります。

届いた通知はしまい込まず、その場で見込額に目を通しておきたいところです。数字を見比べたうえで、いつから受け取り始めるのが自分に合っているのかを、健康状態や働き方とあわせて考えていきましょう。

5. まとめにかえて:元銀行員の視点から

繰下げ受給を考える際には「増える額」と「待つ間のコスト」の両面で考えましょう。1か月0.7%の増額は有難いですが、繰り下げているあいだは年金が入らず、その間の生活費を別に用意しておく必要があります。

「繰下げ見込額のお知らせ」で、いつから受け取ればいくらになるのかを具体的な数字で見比べ、ご自身の健康状態や働き方とあわせて判断しましょう。平均や噂ではなく、自分の見込額という一次情報を出発点にすること。それが、後悔の少ない選び方につながっていくでしょう。

石津 大希
繰下げは「長く待つほど増える」しくみです。裏を返せば、待っているあいだは年金が入らず、その間の生活費が要るということ。増える額と待つコストを「繰下げ見込額のお知らせ」の数字で見比べれば、自分に合う受け取り方が見えてきます。

参考資料

石津 大希