
銀行の窓口に立っていたころ、「家族のお金は家族全員で1つ」という感覚を持つお客さまがいかに多いかを実感していました。「夫婦の口座は一緒に管理しているから」「世帯で申請するものでしょ?」という思い込みで、受け取れるはずの給付金を一方が申請していないケースを何度も目にしてきました。年金生活者支援給付金も、この「世帯で1つ」という誤解が生じやすい制度のひとつです。
「夫婦2人とも要件を満たしているようだけど、どちらか1人だけしかもらえないの?」——そんな疑問を持ちながら、確認しないまま月日が過ぎてしまっているご夫婦は少なくありません。
結論からお伝えすると、夫婦それぞれが支給要件を満たしていれば、2人ともに年金生活者支援給付金を受け取ることができます。この給付金は世帯単位ではなく、あくまで「個人」に対して支給される制度です。2026年度の基準額(月5620円)で計算すると、夫婦2人分では月1万1240円、年間では13万4880円になります。この金額は、決して小さくはないはずです。
1. この記事の3つのポイント
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年金生活者支援給付金は「個人単位」で支給されるため、夫婦2人とも要件を満たせばそれぞれが受け取れる -
2026年度の基準額は月5620円。夫婦2人分では月1万1240円・年13万4880円になる計算だ -
ただし支給要件の「所得」判定は世帯合算で行われるため、夫婦の所得合計額に注意が必要だ
2. 「年金生活者支援給付金」給付額
「年金生活者支援給付金」の給付額は、年度ごとに見直しがおこなわれます。
これは公的年金と同じく、前年の物価変動率等と連動するためです。では、今年度の金額はどれほどなのでしょうか。
2.1 年金生活者支援給付金「2026年度の給付額」はいくら?
2026年度の「年金生活者支援給付金」の給付額は、前年度より+3.2%増の「5620円」となりました。
- 老齢年金生活者支援給付金(基準額):月額5620円
- 障害年金生活者支援給付金:障害等級1級7025円・2級5620円
- 遺族年金生活者支援給付金:月額5620円
ただし老齢年金生活者支援給付金については、上記を基準額として、保険料納付済期間などをもとに実際の給付金額が計算されます。

老齢年金生活者支援給付金は基準額5620円をベースに、保険料納付済期間と保険料免除期間の長さによって実際の給付額が変わります。納付済期間が長いほど給付額は増える計算式になっていますが、ご夫婦でキャリアや加入歴が異なる場合は、2人の給付額が同一にはならないことも多いです。ご自身の「ねんきん定期便」や年金事務所で個別に確認することをおすすめします。
3. 夫婦2人とも受け取れる?「個人単位支給」の正しい理解
日本年金機構のFAQには、夫婦2人で暮らしており、2人とも支給要件を満たしている場合に「2人とも受け取れるのか」という問いに対して、明確に「どちらも受け取ることができます」と記載されています。
年金生活者支援給付金は、世帯に対して支給されるのではなく、あくまで個人に対して支給される給付金です。同一世帯に住んでいるかどうかは関係なく、それぞれが老齢基礎年金を受け取っていて、前年の公的年金等の収入額や所得額が一定の基準以下であれば、夫も妻もそれぞれ受給対象となります。
銀行員として多くのご家庭の家計を見てきた私の経験上、こうした給付金は「夫が申請したから妻は不要」「窓口で一緒に手続きしたから2人分できている」という思い込みが生まれやすいものです。しかし年金生活者支援給付金の請求は1人ずつ行うもので、夫婦2人分をまとめて1枚の書類で申請できるわけではありません。
ここで、FPの観点からひとつ重要な点をお伝えしておきたいのですが、「支給要件の判定」と「給付の単位」は別のルールで動いています。
給付自体は個人単位ですが、老齢年金生活者支援給付金の支給要件にある「前年の公的年金等の収入金額とその他の所得の合計額が一定基準以下であること」の判定には、世帯員全員の所得が関係してきます。
具体的には、世帯全員が市区町村民税非課税であることが要件のひとつであり、配偶者の収入が高い場合には世帯全体の課税状況に影響が出ることがあります。
夫婦どちらかだけが「自分は非課税だから大丈夫」と判断するのではなく、世帯としての課税状況をあわせて確認しておくことが大切です。
仮に夫婦2人がともに老齢年金生活者支援給付金の基準額5620円を受け取れる場合、月々の合計は1万1240円になります。年間に換算すれば13万4880円。物価高が続く今、この金額が家計に与える影響は決して軽くはないでしょう。「どうせ少額だから」と諦める前に、まずは2人それぞれの要件を確認することが、賢い家計管理の第一歩です。
もし「年金生活者支援給付金を受け取っていないが、自分は対象なのかもしれない」と感じたなら、お近くの年金事務所や市区町村の窓口に相談することをお勧めします。請求手続きは遡及して行うことができる期間に限りがあるため、気づいたときに早めに動くことが損をしない選択につながります。
夫婦で一緒に確認に行くと、その場でお互いの状況を照らし合わせながら手続きを進められるので、ぜひ2人揃って窓口を訪れてみてください。
参考資料
中本 智恵