いよいよ夏休みシーズンが本格化する7月下旬。連日の猛暑による外出控えに加え、エアコンの使用に伴う電気代など「光熱費の負担」が家計に重くのしかかる時期です。

株式会社インテージが発表した調査によると、今年の夏休みは「自宅で過ごす」と答えた人が4割に迫り、猛暑への不安も“巣ごもり”を後押ししているようです。

しかし、家にいれば光熱費が上がり、買い物に行けば食品が高くなっているのが現実です。

帝国データバンクの調査では、7月に2566品目、さらに9月には3000品目を超える飲食料品の値上げが予定されており、秋に向けてさらなる値上げラッシュが家計を直撃します。

総務省統計局の「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」によると、65歳以上の無職高齢夫婦世帯では、光熱・水道費に月々約2万4000円、食費には約7万9000円を支出しているというデータもあります。

終わりの見えない物価高の中、「今の年金収入だけで生活できるのか」と不安を抱えるシニア世代は少なくありません。

家計に少しでもゆとりを持たせるためには、利用できる公的支援を最大限に活用することが重要です。しかし、支援制度の中には自ら手続きをしないと受け取れないものも多く存在します。

この記事では、シニアのリアルな経済事情のデータを振り返りつつ、所得が一定基準以下の年金受給者を支える「年金生活者支援給付金」に注目し、その仕組みや対象者、見落としがちな手続き方法までわかりやすく解説します。

1. この記事の3つのポイント

  •  高齢者世帯の4割以上が収入源「公的年金のみ」で物価高の打撃を受けている
  •  2026年度の年金生活者支援給付金は前年比3.2%増額、老齢は月額5620(基準額)円
  •  対象者には9月頃から案内が届くが、自ら申請(投函等)しないと支給されない
熊谷 良子

いよいよ夏本番、熱中症予防のためにもエアコンは必須ですが、電気代が気になりますよね。

私自身、過去にビジネスケアラーとして認知症の家族を介護しながら働いていた時期があり、「親の年金額」を正確に把握しておくことの重要性を痛感しました。

支援制度を見落とさないための第一歩は、親の「ねんきん定期便」や年金振込通知書を一緒に確認することです。

お盆休みなどで帰省するこの時期、ご家族で経済状況を共有する良い機会にしてみてくださいね。

2. 高齢者世帯の4割以上が収入源は「公的年金のみ」という現実

まずは、今のシニア世代が直面している経済状況を確認しておきましょう。

厚生労働省が公表した「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」からは、高齢者世帯(※)における収入の厳しい実情がうかがえます。

この調査によると、高齢者世帯全体の平均所得構成を見ると、「公的年金・恩給」が63.5%と大半を占めており、次いで「稼働所得」が25.3%、「財産所得」が4.6%となっています。

さらに詳しく「公的年金・恩給を受給している世帯」に絞って分析すると、全収入が「公的年金・恩給」のみという世帯が43.4%にも達していることが明らかになりました。

※高齢者世帯:65歳以上の者のみで構成するか、又はこれに18歳未満の者が加わった世帯

2.1 【所得に占める公的年金の割合(世帯構成データ)】

  • 総所得に占める公的年金・恩給の割合が100%の世帯:41.3%
  • 総所得に占める公的年金・恩給の割合が80~100%未満の世帯:17.1%
  • 総所得に占める公的年金・恩給の割合が60~80%未満の世帯:14.1%
  • 総所得に占める公的年金・恩給の割合が40~60%未満の世帯:13.6%
  • 総所得に占める公的年金・恩給の割合が20~40%未満の世帯:9.7%
  • 総所得に占める公的年金・恩給の割合が20%未満の世帯:4.2%

年金を受給している世帯の半数近くが、公的年金からの収入だけで生活を成り立たせているということです。

こうした状況において、昨今の物価高は家計に深刻な影響を与えかねません。だからこそ、公的支援の活用が重要になります。

熊谷 良子

「年金収入のみ」の世帯が4割以上というリアルな数字、みなさんはどう感じましたか?

50歳代になった私自身、ねんきん定期便で自身のリアルな見込額を見て「これだけ?」と焦った経験があります。特に私はフリーランス期間があったため、国民年金のみの期間は厚生年金に比べて将来の受給額が少なくなります。

働き方が多様化するいま、将来年金だけで困らないようにするには、若いうちからiDeCo(個人型確定拠出年金)や新NISAを活用して「じぶん年金」を作っていく視点が大切になってくるでしょう。

3. 【2026年度】年金生活者支援給付金はいくらもらえる?老齢・障害・遺族の給付額

年金受給者を支える公的支援の代表格が「年金生活者支援給付金」です。

2026年度における年金生活者支援給付金の額は、前年の物価変動を反映し、3.2%の増額改定が実施されました。各給付金ごとの月額は以下の通りです。

3.1 【2026年度の給付額(3.2%増額)】

年金生活者支援給付金の給付額2/6

年金生活者支援給付金の給付額

出所:厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」をもとにLIMO編集部作成

  • 老齢年金生活者支援給付金(基準額):月額5620円
  • 障害年金生活者支援給付金:1級 月額7025円、2級 月額5620円
  • 遺族年金生活者支援給付金:月額5620円

(※2人以上の子どもが遺族基礎年金を受給している場合は、5620円を子の人数で割った金額がそれぞれに支給されます)

老齢年金生活者支援給付金の実際の支給額は、この基準額をベースに、個人の保険料納付済期間や免除期間に応じて計算され、年金に上乗せして支給されます。

熊谷 良子

「月額5620円の上乗せ」と聞いて、「たったそれだけ?」と思うかもしれませんが、実はこの年金生活者支援給付金は「非課税」扱いになります。

所得税や住民税の計算には含まれず、まるまる手取りとして使えるお金なのです。

また、一度手続きをして要件を満たし続ければ、毎年申請しなくても自動的に継続支給されます。

最初の請求手続きさえ越えれば、ずっと家計を助けてくれる心強い味方になりますよ。

4. 年金生活者支援給付金とは?「老齢・障害・遺族」の3つの種類を解説

年金生活者支援給付金制度について3/6

年金生活者支援給付金制度について

出所:厚生労働省「年金生活者支援給付金制度について」

そもそも年金生活者支援給付金とは、公的年金やその他の所得が一定の基準を下回る方を対象とした制度です。受け取っている年金の種類に応じて、以下の3つに分けられます。

  • 老齢年金生活者支援給付金
  • 障害年金生活者支援給付金
  • 遺族年金生活者支援給付金

いずれも、それぞれの基礎年金を受給しており、所得要件を満たす場合に受け取ることが可能です。

給付金は2カ月に一度、年金本体とは別に支給されます。今回は、このなかでも最も対象者が多い「老齢年金生活者支援給付金」についてさらに詳しく見ていきましょう。

5. 【老齢年金生活者支援給付金】対象者は誰?満たすべき3つの支給要件

老齢年金生活者支援給付金を受給するには、定められた支給要件をすべてクリアする必要があります。主な判断基準は、受給者ご本人と世帯全体の所得状況です。以下の3つの要件をすべて満たしている方が支給対象となります。

5.1 【支給要件】

  1. 65歳以上で、老齢基礎年金を受給していること。
  2. ご自身を含む世帯員全員の市町村民税が非課税であること。
  3. 前年の公的年金などの収入金額(※1)と、それ以外の所得との合計額が、基準額以下であること。
  • 昭和31年4月2日以降生まれの方:80万9000円以下
  • 昭和31年4月1日以前生まれの方:80万6700円以下(※2)

※1 障害年金や遺族年金といった非課税収入は、ここでの収入金額には含まれません。
※2 収入と所得の合計額が基準額を超えても一定の範囲内(昭和31年4月2日以降生まれの方は90万9000円以下、昭和31年4月1日以前生まれの方は90万6700円以下)であれば、「補足的老齢年金生活者支援給付金」の対象となる場合があります。

6. 【手続き】年金生活者支援給付金の申請方法は?ケース別の流れを解説

支援制度のなかには、自分から手続きしなければ受け取れないものも多く存在し、この給付金も例外ではありません。

支給対象となる可能性のある方へは、日本年金機構から請求手続きに関する案内が送付されます。年金の受給状況によって案内の形式や届くタイミングが異なるため、3つのパターンに分けて手続きの流れを確認します。

6.1 【ケース1】これから老齢年金を受給開始する方(緑の封筒)

65歳を迎えて新たに老齢基礎年金の受給を始める方には、65歳になる3カ月前に「年金請求書(事前送付用)」が届きます。

この書類の中に「年金生活者支援給付金請求書」が同封されていますので、確認しましょう。

必要事項を記入したうえで、受給開始年齢(原則65歳)の誕生日の前日以降に、年金請求書と一緒に年金事務所へ提出します。

6.2 【ケース2】すでに年金を受給中の方(うす緑の封筒)

年金生活者支援給付金請求書の封筒5/6

年金生活者支援給付金請求書の封筒

出所:日本年金機構「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)送付用封筒」

すでに老齢基礎年金を受け取っている方で、新たに給付金の支給対象となった場合には、2025年9月1日から順次、「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が郵送されます。

請求書(はがき)に必要事項を記入し、同封されている目隠しシールを貼り付けた後、切手を貼ってポストへ投函すれば手続きは完了です。

(※支給要件に該当するか確認できない方には、A4サイズの請求書と所得状況届が送付されます)

6.3 【ケース3】老齢基礎年金を繰上げ受給している方(うすだいだい色の封筒)

年金生活者支援給付金の請求書封筒、繰上げ受給中の人用6/6

年金生活者支援給付金の請求書封筒、繰上げ受給中の人用

出所:日本年金機構「65歳の誕生日を迎えた方で、老齢基礎年金を繰上げ受給している方」

老齢基礎年金を繰上げ受給している方で、給付金の対象となる見込みがある場合、65歳になる誕生月の初旬(1日生まれの方は前月の初旬)に「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が届きます。

手続き方法はケース2と同じで、はがきに必要事項を記入して目隠しシールを貼り、切手を貼って投函します。(※支給要件に該当するか確認できない方には、A4サイズの請求書と所得状況届が送付されます)

7. まとめ:年金生活者支援給付金を活用して、続く物価高に備えよう

本記事では、背景にあるシニア世帯の経済事情から、65歳以上の方を対象とする老齢年金生活者支援給付金の制度概要、手続き方法までを解説しました。

2026年度の給付額は3.2%の増額改定が実施されましたが、この夏も食品値上げが続くように、物価上昇のスピードに家計が追いついていないと感じる方が多いのが現状でしょう。

高齢者世帯の4割以上が「公的年金のみ」で生活しているというデータが示す通り、年金だけで日々の生活費や医療費・介護費といったあらゆる出費をまかなうのは容易ではありません。

だからこそ、年金生活者支援給付金のような公的支援制度を正しく理解し、対象となる場合には確実に利用することが、ご自身や家族の家計を守るうえで非常に重要です。

新たに支給対象となる方には、9月頃から順次、日本年金機構よりはがき型の請求書が届き始めます。関連書類が届いた際は内容をしっかりと確認し、期限内に忘れずに手続きを進めることをお勧めします。

熊谷 良子

実際に親の介護や看取りを経験して痛感したのが、親の「年金受給先や口座」を把握しておく大切さです。

万が一親が亡くなった際、条件を満たす遺族であれば、まだ受け取っていない「未支給年金」を請求できます。

しかし、親が何の年金をどこで受け取っていたかを知らないと、手続きの入り口で非常に手こずります。

今回の申請や通知を良いきっかけとして、実家の「年金関係の書類」や「通帳」の保管場所を親子で共有しておくことを強くおすすめします。

参考資料