帝国データバンクの調査によると、今年7月は2566品目にのぼる飲食料品の値上げラッシュが家計を直撃しています。

一方で夏のボーナスの使い道については、ソニー損保の調査で「預金」や「生活費の補填」といった堅実な用途が今年も上位を占め、ロイヤリティ マーケティングの調査でも「貯金・預金」が13年連続で1位となるなど、私たちのお金に対する防衛意識はますます高まっていると言えそうです。

目の前のやりくりに追われがちですが、家計管理は家族の未来を守るための大切なテーマです。

今回は、2026年5月に公表された最新の総務省統計局「家計調査 貯蓄・負債編 2025年(令和7年)」の結果から、「年収1000万円世帯」と「年収600万円世帯」のリアルなお財布事情をのぞき見してみましょう。

1. この記事の3つのポイント

  •  年収1000万円世帯の純貯蓄は1122万円、600万円世帯は560万円と約2倍の格差。
  •  貯蓄格差の背景には「妻の働き方(共働き率)」と「有価証券の保有割合」が影響。
  •  50歳未満は住宅ローン等で負債超過が一般的。年代に合わせた資産形成がカギ。

 

熊谷 良子

官公庁のデータを日々分析していると、家計調査はご自身の立ち位置を客観視できる「健康診断ツール」だと感じます。

ニュースなどで「平均貯蓄額」を見て「うちはこんなにない…」と落ち込む必要はありません。

実はこうした統計データは、一部の富裕層が数値を大きく引き上げるため、実態より高めに出る傾向があります。

より一般的な感覚に近いのは、データを順に並べた真ん中の値である「中央値」です。

また、今回のように「純貯蓄額(貯蓄-負債)」を計算してみることで、見かけの貯金だけでなくご家庭のリアルな家計の体力が見えてきます。

ボーナス期の今、ぜひ一度計算してみてくださいね。

2. 年収1000万円世帯のお財布事情!貯蓄と負債のバランスは?

総務省のデータによると、「年収1000万~1250万円」の勤労世帯(働く人がいる二人以上の世帯)のお金事情は次のような結果になっています。

2.1 世帯年収1000万~1250万円の勤労世帯《貯蓄と負債》

世帯年収1000万~1250万円の勤労世帯《貯蓄と負債》
※内訳は四捨五入の関係で合計と一致しない場合があります1/4

出所:総務省統計局「家計調査 貯蓄・負債編 第8-2表<貯蓄・負債>年間収入階級別貯蓄及び負債の1世帯当たり現在高(二人以上の世帯のうち勤労者世帯)」をもとに筆者作成

平均貯蓄額:2346万円

【貯蓄の内訳】

  • 通貨性預貯金:810万円
  • 定期性預貯金:407万円
  • 生命保険など:421万円
  • 有価証券:623万円
  • 金融機関外:85万円

平均負債額:1224万円 (うち住宅・土地のための負債:1138万円)

本当の貯蓄額(純貯蓄額=平均貯蓄額-平均負債額):1122万円

参考までに、家族構成や働き方のデータも見てみましょう。

2.2 世帯年収1000万~1250万円の勤労世帯《共働き率や持ち家率》

  • 世帯主の平均年齢:50.5歳
  • 世帯人数の平均:3.32人(うち18歳未満の世帯人員:0.83人)
  • 世帯主の配偶者のうち女性の有業率:71.4%
  • 持ち家率:85.0%

女性の有業率が71.4%となっていることから、約7割が共働き世帯であることがわかります。

年収1000万円のゆとりある家計は、夫婦の協力プレーによって支えられている面が大きそうですね。

3. 年収600万円世帯のお財布事情!本当の貯蓄額はいくら?

続いて、日本の平均的な年収層に近い「年収550~600万円」世帯の結果を見てみましょう。

厚生労働省の「国民生活基礎調査」によると、全世帯の1世帯当たり平均所得金額は約575.2万円となっており、この階級が今の日本の最も平均的な家計の姿に近いと言えます。

3.1 世帯年収550万~600万円の勤労世帯《貯蓄と負債》

世帯年収1000万~1250万円の勤労世帯《貯蓄と負債》
※内訳は四捨五入の関係で合計と一致しない場合があります2/4

出所:総務省統計局「家計調査 貯蓄・負債編 第8-2表<貯蓄・負債>年間収入階級別貯蓄及び負債の1世帯当たり現在高(二人以上の世帯のうち勤労者世帯)」をもとに筆者作成

平均貯蓄額:1243万円

【貯蓄の内訳】

  • 通貨性預貯金:444万円
  • 定期性預貯金:336万円
  • 生命保険など:251万円
  • 有価証券:193万円
  • 金融機関外:20万円

平均負債額:683万円 (うち住宅・土地のための負債:631万円)

本当の貯蓄額(純貯蓄額=平均貯蓄額-平均負債額):560万円

平均貯蓄額は1243万円と、1000万円の大台には乗りましたが、住宅ローンなどの負債を差し引いた「本当の貯蓄額(純貯蓄額)」は560万円という結果になりました。

3.2 世帯年収550万~600万円の勤労世帯《共働き率や持ち家率》

  • 世帯主の平均年齢:51.2歳
  • 世帯人数の平均:3.16人(うち18歳未満の世帯人員:0.84人)
  • 世帯主の配偶者のうち女性の有業率:54.6%
  • 持ち家率:85.8%

4. 純貯蓄額の差は約2倍!その意外な理由とは?

年収1000万円世帯の純貯蓄額は1122万円で、年収600万円前後の世帯の560万円を約2倍上回っています。

この差の大きな要因の一つは、「妻の働き方」にありそうです。年収1000万円世帯では71.4%が共働きであるのに対し、年収550万〜600万円世帯では54.6%に留まります。

世帯主の年齢や子どもの人数に大きな差はないため、妻が仕事を持つことが世帯収入を底上げし、貯蓄に回す余裕を生み出していると考えられます。

また、年収1000万円世帯は有価証券(株式や投資信託など)の保有額が高く、預貯金以外の方法で積極的にお金を増やそうとしている点も、資産の差につながっていると言えそうです。

熊谷 良子

年収や貯蓄の差に「妻の働き方」が影響しているのを見ると、私自身フリーランスも含めて様々な働き方を経験してきた身として、非常に考えさせられます。

世帯収入を増やすための共働きは、目先の手取りを増やすだけでなく、「厚生年金」という老後の大きな資産づくりにも直結します。

会社員として社会保険に加入して働く期間が長いほど、将来の年金受給額は手厚くなります。夫婦ダブルで厚生年金をつくれることは、現役時代はもちろん、老後の家計にとっても最強のリスクヘッジになりますよ。

今の貯蓄を増やす工夫と同時に、働き方の選択が「見えない資産」を育てていることも意識しておきたいですね。

5. 【コラム】年代別で見る「純貯蓄額」のリアル:資産形成は焦らず自分のペースで!

「うちの純貯蓄額、マイナスかも…」と焦ってしまった方もいるかもしれませんが、ぜひ知っておきたい傾向もあります。

総務省のデータによると、世帯主が50歳未満の年代では、住宅ローンなどの影響で負債が貯蓄を上回る「負債超過(純貯蓄額がマイナス)」の世帯が一般的です。特に40代では約7割が負債を抱えています。

しかし、50歳以上になると負債が減り、貯蓄が逆転する「貯蓄超過」へと自然に変化していきます。そして退職金などが入る60代で純貯蓄額はピークを迎えます。ライフステージごとの「家計の波」を知っておくことが、心穏やかにやりくりを続けるコツです。

熊谷 良子

住宅ローンなどの負債が減少し「貯蓄超過」へと転じる50歳代は、老後資金づくりのラストスパート期です。

私も50歳になり「ねんきん定期便」のリアルな見込額を目にしたとき、「年金の履歴は、これまでの生き方や働き方の履歴そのものだ」と強く痛感しました。

教育費の負担が落ち着く世帯が多いこの時期からは、ただ預金するだけでなく、掛金が全額所得控除になるiDeCoなどを活用し、毎年の税負担を軽くしながら効率よく老後資金を育てていく「お金の置き場所の分散」も有効なテクニックになります。

若いうちから年金の知識を備えておけば、自分らしいキャリアを歩みながら無理なく備えられますよ。

6. 物価高に負けない!純貯蓄額を増やすヒント

物価高や値上げの波が続く中、ただ節約するだけで純貯蓄を増やすのは限界があります。

世帯収入を上げるのが一番の近道ですが、すぐに昇給や転職ができるわけではありません。妻が働きに出ることも選択肢ですが、子育てや介護で難しいケースもあるでしょう。

そこで、まとまったお金が手元にあるときに検討したいのが、「お金にも働いてもらう(資産運用)」という方法です。

6.1 家計の金融資産構成(日米欧比較)

「日本人は投資より預貯金を好む」としばしば言われますね。

家計の金融資産構成(日米欧比較)4/4

家計の金融資産構成

出所:日本銀行調査統計局「資金循環の日米欧比較」2025年8月29日

日本銀行調査統計局の「資金循環の日米欧比較」データ(2025年3月末時点)を見ても、日本の家計の金融資産に占める「現金・預金」の割合は51.0%と、依然として約半分を占めています。

一方、アメリカでは「現金・預金」の割合は11.5%、ユーロエリアでも31.8%にとどまっています。

また、株式や投資信託の保有割合を見ると、日本は合計18.2%(株式等12.2%、投資信託6.0%)ですが、アメリカは合計54.6%(株式等41.5%、投資信託13.1%)、ユーロエリアは合計36.2%(株式等25.3%、投資信託10.9%)と、日本とは対照的な構成になっています。

「今の貯蓄が少ない……」と悲観的になるのではなく、物価高で現金の価値が目減りしやすい今だからこそ、夏のボーナスなどを見直すこのタイミングで、ご家庭の「純貯蓄額」を計算してみませんか?

新NISAやiDeCoといった非課税制度も活用しながら、預貯金と投資のバランスを少しだけ変えてみることが、物価高に負けない未来の安心をつくる第一歩になるでしょう。
 

熊谷 良子

将来の安心を考える際、もう一つ忘れてはならないのが「想定外の出費」です。

かつて働きながら認知症の家族を介護した時期があり、仕事と介護の両立に向けた働く環境の確保に本当に苦労しました。

老後は生活費に加え、医療・介護といった見えないリスクが潜んでいます。

だからこそ、若いうちから「純貯蓄額」を把握し、非課税制度も活用して「お金にも働いてもらう」仕組みを早くから作っておくことが大切です。

また、元気なうちに実家の財産や将来の介護について家族でオープンに話し合っておくことも、見えない負債を抱えないための立派な防衛策になりますよ。

参考資料