厚生労働省が公表した「令和6年簡易生命表の概況」によると、2024年の平均寿命は女性が87.13年、男性が81.09年でした。人生100年時代といわれる今、60歳や65歳で仕事の第一線を退いても、基本的にその後の暮らしは20年、30年と続いていきます。
とりわけ、ひとりで暮らすおひとりさまは、その長い時間の家計を自分ひとりで支えていくことになります。「蓄えはどれくらい必要なのか」「毎月の生活費はどれくらいかかるのか」と、先の暮らしを思うと気になることも多いのではないでしょうか。
さらに総務省「2020年基準 消費者物価指数 東京都区部 2026年(令和8年)6月分(中旬速報値)」によれば、前年同月で生鮮魚介 8.0%増、衣料 5.0%増、衣料 5.0%増などと生活のあらゆる面で物価の上昇は続いており、より老後資金の重要性を感じる方は多いでしょう。
老後資金は「現役時代にどう備えるか」と「老後になってからその資金をどう守るか」の大きく分けて2つの目線で考えることが大切です。
今回は、60歳代・70歳代のおひとりさまについて、平均貯蓄額と中央値、そして定年後の生活費が毎月どこに使われているのかを、公的なデータからみていきましょう。
1. この記事を読んだらわかる3つのポイント
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60歳代・70歳代のおひとりさまの貯蓄額の実態 -
「定年後の生活費」毎月の使いみちの平均 -
老後資金対策で今から始めたい具体的な行動3つ
2. 【60歳代・70歳代おひとりさま】貯蓄ゼロの割合はどれくらいか。平均・中央値も
金融経済教育推進機構(J-FLEC)が2025年に公表した「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」によると、おひとりさま(単身世帯)の金融資産保有額(平均・中央値)は、年代ごとに次のとおりです。
※金融資産保有額とは、預貯金だけでなく株式、投資信託、生命保険などを含んだ金額です。ただし、日常的に使う普通預金の残高は含まれていません。
2.1 60歳代おひとりさまの貯蓄額(平均・中央値)
- 60歳代単身世帯:平均1364万円/中央値300万円
60歳代のおひとりさまは、平均が1364万円、中央値が300万円です。平均のほうが中央値の4倍以上大きいのは、一部に貯蓄の多い世帯があり、その金額が全体の平均を引き上げているためです。半数の世帯は中央値の300万円前後かそれ以下と考えると、実感に近いのは中央値のほうといえるでしょう。
貯蓄の分布に目を向けると、金融資産を持たない世帯が30.4%(およそ3世帯に1世帯)。その一方で2000万円以上を蓄えた世帯も21.1%(2000〜3000万円が5.5%、3000万円以上が15.6%)あり、およそ5世帯に1世帯にのぼります。ひとくちに60歳代のおひとりさまといっても、蓄えの多い・少ないの幅がかなり大きいことがわかります。
2.2 70歳代おひとりさまの貯蓄額(平均・中央値)
- 70歳代単身世帯:平均1489万円/中央値500万円
70歳代のおひとりさまは、平均1489万円に対して中央値は500万円で、平均とは3倍ほどの開きがあります。一部の資産の多い世帯が平均を押し上げる構図は、この年代でも同じです。中央値の500万円が、多くの世帯の実感に近い水準といえます。
金融資産を持たない世帯は20.4%(およそ5世帯に1世帯)。2000万円以上の世帯は25.4%(2000〜3000万円が7.9%、3000万円以上が17.5%)で、およそ4世帯に1世帯です。70歳代でも、世帯によって蓄えの状況に大きな差があるようすがうかがえます。
いずれの年代でも、平均と中央値には差があり、まとまった蓄えのある世帯と、貯蓄を持たない世帯とがともにみられます。平均の数字だけで「足りる・足りない」を判断せず、中央値や分布もあわせてみておきたいところです。
3. 「定年後の生活費」平均的な毎月の使いみちとは
貯蓄とあわせて知っておきたいのが、定年後の毎月の生活費が何に使われているかです。総務省「家計調査報告〔家計収支編〕2025年(令和7年)平均結果の概要」によると、65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)の1カ月の消費支出は平均14万8445円。何にどれくらい使っているのでしょうか。
3.1 65歳以上単身無職世帯ひと月の家計収支
- 食料:28.7%(42,545円)
- 光熱・水道:10.5%(15,565円)
- 教養娯楽:10.9%(16,132円)
- 交通・通信:9.2%(13,601円)
- 住居:7.7%(11,416円)
- 保健医療:5.7%(8,388円)など
もっとも大きいのは食料で、支出のおよそ3割を占めます。食費に光熱・水道費を合わせると、暮らしの土台となる部分だけで約4割です。上のデータでは住居費は7.7%にとどまっていますが、これは持ち家の世帯が多いことが背景にあり、賃貸の場合はここがさらに大きくなる点に注意が必要です。
また、保健医療が5.7%を占めています。年齢を重ねると通院や薬にかかるお金は増えやすく、教養娯楽(10.9%)のように暮らしを楽しむための支出とあわせて、無理なく続けられるバランスを考えておきたいところです。
毎月の消費支出14万8445円は、あくまで平均値です。住まいの形や健康状態、趣味やおつきあいによって、実際の金額も内訳も一人ひとり異なります。まずは自分の1カ月の支出を、この費目の並びに沿ってながめてみると、見直せるところが見つけやすくなります。
4. 元証券会社社員からのアドバイス
60歳代・70歳代おひとりさまの貯蓄は、60歳代で平均1364万円・中央値300万円、70歳代で平均1489万円・中央値500万円でした。毎月の生活費は平均で約14万8000円、その3割ほどを食料が占めています。蓄えの状況は人によってさまざまですが、共通して大切なのは「入ってくるお金」と「出ていくお金」の差をつかんでおくことです。
ひとりの老後を支えるのは、自分の年金と貯蓄です。だからこそ早めに手を打ちたいもの。元証券会社社員として、今日からできることをお伝えします。
まずは年金振込通知書で「手取り」を確認すること。額面から税・社会保険料を差し引いた実際の受取額と、毎月の生活費を見比べれば、貯蓄から補う必要がある金額がはっきりします。現役時代からも、ねんきん定期便やねんきんネットなどで老後の年金見込み額は確認しておきましょう。
次に口座を2つに分けること。毎月の生活費を出し入れする口座と、当面は手をつけない貯蓄用の口座を分けておくと、必要以上に取り崩すのを防ぎやすくなります。
そして公的なものやメインとなるもの以外に自分で備えられる制度を探しておきましょう。
たとえば公的年金のみで老後の生活費が賄えなければ、個人年金保険や国民年金であれば国民年金基金、またiDecoなど私的年金で備えるなどの方法もあります。預貯金をメインとした老後資金作りが難しければ、一部で資産運用などを検討して老後に備える方法もあるでしょう。定年までの収入で資産の用意が難しければ、長く働き続けるなどの方法で備えていく方法もあります。
メインと補助となるものの組み合わせで老後に備えていきましょう。
参考資料
- 金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」
- 総務省統計局「家計調査報告〔家計収支編〕2025年(令和7年)平均結果の概要」
- 厚生労働省「令和6年簡易生命表の概況」
- 総務省「2020年基準 消費者物価指数 東京都区部 2026年(令和8年)6月分(中旬速報値)」
宮野 茉莉子



