厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、厚生年金の平均受給額(老齢年金)は月15万289円、国民年金の平均受給額(老齢年金)は月5万9310円となっています。
特に「周りの人は一体いくらくらい年金をもらっているのだろう」「今の年金だけで、この先の生活は大丈夫かしら」といった不安を感じることもあるでしょう。
この記事では、日本の公的年金の基本的な仕組みから、厚生年金と国民年金の平均受給額、そして年金生活を送るシニア世帯のリアルな家計収支まで、最新のデータを基に元銀行員の筆者が詳しく解説します。
ご自身の状況と照らし合わせながら、今後の生活設計のヒントを見つけていただければ幸いです。
1. この記事の3つのポイント
-
厚生年金・国民年金の平均受給額には大きな差と幅がある -
65歳以上の無職世帯は年金だけでは毎月赤字に -
国民年金のみ加入者は「付加年金」で受給額を上乗せできる
2. 日本の公的年金は「2階建て」構造
日本の公的年金制度は、働き方にかかわらず加入する国民年金と、会社員などが加入する厚生年金の2階建て構造が特徴です。この仕組みを理解することが、ご自身の年金額を把握する第一歩となります。
2.1 1階部分:国民年金(基礎年金)の仕組み
最初に、制度の1階部分にあたる「国民年金」についてご説明します。国民年金は、原則として日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入する制度です。
国民年金保険料は全国で一律となっており、毎年度見直しが行われます。参考までに、2026年度の月額保険料は1万7920円です。
40年間すべての保険料を納付した場合、65歳から満額の老齢基礎年金(2026年度で月額7万608円)を受け取ることができます。保険料の未納期間がある場合は、その期間に応じて年金額が減額される仕組みになっています。
2.2 2階部分:厚生年金の仕組み
次に、2階部分に該当する厚生年金制度について見ていきましょう。この制度の加入対象者は、会社員や公務員のほか、特定適用事業所で働くパートタイマーなど、定められた要件を満たした方々です。
厚生年金は国民年金に上乗せして加入する形になるため、公的年金は「2階建て」と呼ばれています。
国民年金とは異なり、厚生年金の保険料は給与の金額に応じて決まるため、収入が多いほど保険料も高くなります。ただし、保険料には上限が設定されているため、一定以上の収入がある方は同額の保険料となります。
将来受け取る年金額は、厚生年金への加入期間や納めた保険料の総額によって変動するため、受給額には個人差が生じやすいのが特徴です。
解説にもあるとおり、1階部分の国民年金は保険料も受給額も全国一律ですが、未納期間があるとその分だけ将来の受給額が減ってしまいます。学生時代の未納や転職時のブランクなど、意外と見落とされがちな期間があるため、まずはご自身の納付状況を確認することをおすすめします。
3. 2026年度における年金の受給額について
公的年金の受給額は、物価や賃金の動向を踏まえて年度ごとに見直しがおこなわれます。
今回の引き上げ率(国民年金1.9%、厚生年金2.0%)は、物価や賃金の上昇を踏まえたものですが、実際の生活実感としては、食料品や光熱費などの値上がりペースの方が上回っていると感じる方も少なくありません。年金額が名目上増えていても、実質的な購買力が維持されているとは限らない点は、老後の家計を考えるうえで意識しておきたいポイントです。
2025度に比べ、国民年金(基礎年金)が 1.9%の引上げ、厚生年金(報酬比例部分)が 2.0%の引上げとなります。
3.1 国民年金と厚生年金、2026年度の受給額モデルケース
- 国民年金(老齢基礎年金(満額):1人分):7万608円(+1300円)
- 厚生年金:23万7279円(夫婦2人分)(+4495円)
※昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金の満額は月額7万408円(対前年度比+1300円)
※厚生年金は「男性の平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45万5000円)」で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準
老後の生活を支える大切な収入源である、公的年金。できればたくさんもらいたいと思うものです。どれほど支給されるのか気になる方も多いでしょう。
年金受給額は年金加入状況により決まるため、個人差が大きい点に注意が必要です。
これを踏まえた上で、どれくらいの個人差があるのかを見てみましょう。
4. 【データで見る】厚生年金・国民年金の平均受給額と個人差
ここでは、厚生労働省のデータを基に、厚生年金と国民年金の平均額や受給額の分布を見ていきましょう。
4.1 厚生年金の平均受給月額と男女差
銀行の窓口でご夫婦で資産運用のご相談にいらっしゃる際、年金の見込み額を確認すると、奥様の年金額がご主人よりも大幅に少ないことに驚かれるケースを数多く見てきました。記事にあるとおり、平均で見ても男性と女性の間には約6万円もの差があります。この差は単純な性別の違いというよりも、出産・育児による離職期間、非正規雇用としての就業期間の長さ、そして厚生年金加入期間中の平均収入の違いなど、これまでの「働き方の履歴」が積み重なって生じているものです。
とくに気をつけていただきたいのは、分布データが示すとおり、月額1万円未満から30万円以上まで非常に幅広くばらついている点です。「平均額」だけを見て自分の見込み額を想像してしまうと、実際の受給額とのギャップに老後になって初めて気づく、という事態になりかねません。
ご自身だけでなく配偶者の分も含めて、「ねんきん定期便」やねんきんネットで具体的な見込み額を早いうちに確認しておくことが大切です。
厚生労働省年金局が公表した「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金保険(第1号)受給権者の平均年金月額は以下の通りです。
- 〈全体〉平均年金月額:15万289円
- 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
- 〈女性〉平均年金月額:11万1413円
※上記の金額には国民年金(基礎年金)部分が含まれています。
4.2 厚生年金受給額の分布状況
厚生年金受給権者の受給額分布(1万円刻み)は以下のようになっています。
- ~1万円:4万3399人
- 1万円以上~2万円未満:1万4137人
- 2万円以上~3万円未満:3万5397人
- 3万円以上~4万円未満:6万8210人
- 4万円以上~5万円未満:7万6692人
- 5万円以上~6万円未満:10万8447人
- 6万円以上~7万円未満:31万5106人
- 7万円以上~8万円未満:57万8950人
- 8万円以上~9万円未満:80万2179人
- 9万円以上~10万円未満:101万1457人
- 10万円以上~11万円未満:111万2828人
- 11万円以上~12万円未満:107万1485人
- 12万円以上~13万円未満:97万9155人
- 13万円以上~14万円未満:92万3506人
- 14万円以上~15万円未満:92万9264人
- 15万円以上~16万円未満:96万5035人
- 16万円以上~17万円未満:100万1322人
- 17万円以上~18万円未満:103万1951人
- 18万円以上~19万円未満:102万6888人
- 19万円以上~20万円未満:96万2615人
- 20万円以上~21万円未満:85万3591人
- 21万円以上~22万円未満:70万4633人
- 22万円以上~23万円未満:52万3958人
- 23万円以上~24万円未満:35万4人
- 24万円以上~25万円未満:23万211人
- 25万円以上~26万円未満:15万796人
- 26万円以上~27万円未満:9万4667人
- 27万円以上~28万円未満:5万5083人
- 28万円以上~29万円未満:3万289人
- 29万円以上~30万円未満:1万5158人
- 30万円以上~:1万9283人
男女別に見ると、男性の平均月額が16万9967円、女性が11万1413円と、約6万円の差が見られます。
また、上記の分布データが示すように、受給額は「月額1万円未満から30万円以上」まで非常に幅広く分布しており、個々の状況を確認することの重要性がわかります。
4.3 国民年金の平均受給月額と男女差
国民年金は厚生年金に比べて受給額のばらつきが小さく、多くの方が「6万円以上~7万円未満」というボリュームゾーンに集中しています。
厚生労働省年金局の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、国民年金受給権者の平均年金月額は以下の通りです。
- 〈全体〉平均年金月額:5万9310円
- 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
- 〈女性〉平均年金月額:5万7582円
4.4 国民年金受給額の分布状況
国民年金受給権者の受給額分布(1万円刻み)は以下のようになっています。
- 1万円未満:5万1828人
- 1万円以上~2万円未満:21万3583人
- 2万円以上~3万円未満:68万4559人
- 3万円以上~4万円未満:206万1539人
- 4万円以上~5万円未満:388万83人
- 5万円以上~6万円未満:641万228人
- 6万円以上~7万円未満:1715万5059人
- 7万円以上~:299万7738人
国民年金の平均月額は、男女全体および男女別ともに5万円台となっています。上のグラフが示すように、受給額は「月額1万円未満から7万円以上」の範囲で分布していることが確認できます。
国民年金は満額が定められているため、厚生年金と比較すると、受給額のばらつきは小さい傾向にあります。
最も多いボリュームゾーンは「6万円以上~7万円未満」であり、このデータから、多くの方が満額に近い年金を受給していることがうかがえます。
5. シニア世帯のリアルな家計簿:65歳以上・無職夫婦の場合
この章では、65歳以上の無職世帯(夫婦および単身)の1ヶ月あたりの家計収支について見ていきます。
ここでは、総務省統計局が公表した「家計調査報告〔家計収支編〕2025年(令和7年)平均結果の概要」を基に、具体的な家計収支を見ていきます。
保健医療費や光熱・水道費のように、年齢を重ねるほど増えやすい支出項目がある一方で、教育費のように現役時代とは異なりゼロになる項目もあります。つまり、65歳以降の家計は現役時代の延長線上で考えるのではなく、支出の中身が入れ替わるものとして捉え直す必要があるといえるでしょう。
5.1 収入の内訳
- 実収入:25万4395円
- うち社会保障給付:22万8614円 ※主に年金
5.2 支出の内訳
- 実支出:29万6829円
- うち消費支出:26万3979円
消費支出は、一般的に「生活費」と呼ばれるものです。その内訳は以下の通りです。
- 食料:7万8964円
- 住居:1万7739円
- 光熱・水道:2万3540円
- 家具・家事用品:1万1237円
- 被服及び履物:5354円
- 保健医療:1万7941円
- 交通・通信:3万1325円
- 教育:0円
- 教養娯楽:2万6538円
- その他の消費支出:5万1341円
- うち諸雑費:2万2047円
- うち交際費:2万3257円
- うち仕送り金:1135円
また、税金や社会保険料などの非消費支出は3万2850円で、その内訳は次のようになっています。
- 直接税:1万2547円
- 社会保険料:2万296円
このモデルケースでは、1ヶ月の実収入25万4395円に対して支出の合計が29万6829円となり、毎月4万2434円が不足する計算になります。
6. シニア世帯のリアルな家計簿:65歳以上・無職単身の場合
次に、単身世帯の家計収支についても同様に確認していきましょう。
単身世帯で特に注意したいのは、生活費を分担できる相手がいないため、住居費や光熱・水道費などの固定費を一人で負担しなければならない点です。
夫婦世帯では住居費や光熱費などを二人で分担できるため、一人当たりの負担を抑えやすくなります。一方、単身世帯ではこうした固定費をすべて一人で負担することになるため、収入に占める固定費の割合が高くなりやすい傾向があります。
6.1 収入の内訳
- 実収入:13万1456円
- うち社会保障給付:12万212円 ※主に年金
6.2 支出の内訳
- 支出:16万1435円
- うち消費支出:14万8445円
消費支出の具体的な内訳は以下の通りです。
- 食料:4万2545円
- 住居:1万1416円
- 光熱・水道:1万5565円
- 家具・家事用品:6069円
- 被服及び履物:3049円
- 保健医療:8388円
- 交通・通信:1万3601円
- 教育:0円
- 教養娯楽:1万6132円
- その他の消費支出:3万1681円
- うち諸雑費:1万4052円
- うち交際費:1万6956円
- うち仕送り金:591円
非消費支出の平均額は1万2990円でした。
- 直接税:7072円
- 社会保険料:5912円
単身世帯の場合、1ヶ月の実収入13万1456円に対して支出の合計が16万1435円となり、毎月2万9980円が不足するという結果でした。
7. 国民年金の受給額を増やす「付加年金」という選択肢
フリーランスや自営業の方など、厚生年金に加入しない働き方を選ぶ方も増えています。しかし、国民年金のみに加入している場合、老後の年金額が少なくなる傾向にあります。ここでは、国民年金の受給額を上乗せできる「付加年金」制度について解説します。
フリーランスや自営業の方は、厚生年金のような上乗せ部分がないため、老後の年金収入を国民年金だけに頼らざるを得ません。だからこそ、付加年金のような低コストで確実にリターンが見込める仕組みを早い段階から取り入れておくことは、限られた選択肢の中でも有効な老後対策の一つといえるでしょう。ただし、付加年金は物価スライドの対象外であるため、将来的なインフレ局面では実質的な価値が目減りする可能性がある点は留意しておく必要があります。
付加年金とは、定額の国民年金保険料(2026年度は月額1万7920円)に「付加保険料(月額400円)」を上乗せして納めることで、将来受け取る年金額を増額できる制度です。
7.1 付加保険料を納付できる対象者
- 国民年金第1号被保険者
- 65歳未満の任意加入被保険者
7.2 付加保険料を納付できないケース
- 国民年金保険料の納付を免除(法定免除、全額免除、一部免除、納付猶予、学生納付特例)されている方
- 国民年金基金に加入している方
個人型確定拠出年金(iDeCo)と付加年金は同時に加入することが可能です。ただし、iDeCoの掛金額によっては併用できない場合があるため注意が必要です。
7.3 【シミュレーション】40年間、付加保険料を納付した場合
仮に20歳から60歳までの40年間、付加保険料を納め続けた場合のシミュレーションを見てみましょう。
65歳以降に受け取れる年間の「付加年金額」は、「200円 × 付加保険料を納付した月数」で計算できます。
- 40年間に納付した付加保険料の総額:19万2000円(400円×480カ月)
- 65歳以降に受け取れる付加年金額(年間):9万6000円(200円×480カ月)
40年間で納付する付加保険料の合計は19万2000円です。一方で、毎年の年金受給額に9万6000円が上乗せされるため、この計算では、年金を受け取り始めてから2年で納付した保険料の元が取れることになり、長期的に見ると有利な制度といえるでしょう。
8. 元銀行員の筆者から:NISAを使った老後資金準備のアドバイス
銀行員時代、投資信託や株式のご相談を受けるたびに感じていたのは、「年金や退職金だけで老後は大丈夫だろう」と考えていた方ほど、実際に家計収支を数字で確認すると不安を口にされるという点でした。
今回ご紹介したとおり、65歳以上の無職世帯では夫婦で毎月約4万円、単身でも約3万円の赤字が生じるのが平均的な姿です。
この不足分を、退職金の取り崩しだけでなく「増やしながら使う」という発想に切り替えるお客様ほど、老後の資金的な余裕を長く保てていたように思います。
老後の資産形成を考える際、税制優遇を活かせる「新NISA」は非常に心強い選択肢です。
現役時代から少額でもコツコツと積立を続け、複利効果を長い時間軸で味方につけることで、退職後の不足分を補う原資を準備できます。
実際に窓口では、「毎月数千円からでも始めておけばよかった」と振り返られる方が多く、逆に「もう少し早く始めていれば」という後悔の声も少なくありませんでした。
もちろん投資にはリスクが伴いますので、生活費に充てる分は預貯金で確保しつつ、当面使わない資金を無理のない範囲でNISAに回すという「使い分け」が基本です。
年金額や家計の不足分を具体的な数字で把握したうえで、早いうちから資産形成の一歩を踏み出していただければと思います。
参考資料
- 日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
- 日本年金機構「年金はいつ支払われますか。」
- 厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 総務省統計局「家計調査報告 〔 家計収支編 〕 2025年(令和7年)平均結果の概要」
- 日本年金機構「国民年金付加年金制度のお知らせ」
中本 智恵







