5. 年金は額面通りではない!天引きされる「税金・社会保険料」に注意

これまでに算出した年金額や統計データはすべて「額面」の数字であるため、その金額をまるまる生活費として使えるわけではありません。

会社員時代の給与と同じように、年金収入が一定額を超えると、そこから税金や社会保険料が天引き(特別徴収)される仕組みになっています。

年金から直接差し引かれる主な項目は以下の通りです。

  • 所得税
  • 住民税(お住まいの市区町村・都道府県へ納付)
  • 健康保険料(国民健康保険料、または75歳以上の後期高齢者医療保険料)
  • 介護保険料

ここで、総務省の「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」をもとに、65歳以上の単身無職世帯のリアルな家計状況を確認してみましょう。

65歳以上の単身無職世帯における収支状況5/5

65歳以上の単身無職世帯における収支状況

出所:総務省「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」

  • 実収入(年金などの額面):13万1,456円
  • 可処分所得(実際に使える手取り):11万8,465円
  • 消費支出(食費などの生活費):14万8,445円
  • 非消費支出(天引きされる税金や社会保険料):1万2,990円

このデータでは、毎月の実収入が約13.1万円であるのに対し、税金や社会保険料として約1.3万円が差し引かれ、最終的な手取り額は約11.8万円になっていることが分かります。

実際に天引きされる金額は、お住まいの地域や前年の所得額、世帯構成によって異なりますが、一般的には年金収入の10%〜15%程度が差し引かれると考えておくとよいでしょう。

中本 智恵
銀行員時代、窓口では「額面」と「振込額」の差に驚かれる方が多くいらっしゃいました。老後の家計を考えるときは、必ず天引き後の手取りベースで生活費と照らし合わせる習慣をつけておきましょう。

6. 監修者コメント:モデルケースの数字を、ご自身の見込額と照らし合わせる方法

中本 智恵

今回のモデルケースは「平均年収700万円・勤続39年」という一つの仮定にすぎません。実際の年金見込額は、転職や休職、育児休業、給与の推移など、一人ひとりのキャリアによって大きく変わります。

正確な見込額を知りたい場合は、日本年金機構の「ねんきんネット」を活用するのがおすすめです。これまでの実際の加入記録をもとに試算されるため、モデルケースよりもずっと精度の高い金額を確認できます。50歳以上の方は、毎年届く「ねんきん定期便」にも、現在の加入実績に応じた見込額が記載されています。

また、見込額を確認したら、そこから税金・社会保険料としておおむね10〜15%が差し引かれることも忘れずに織り込んでおいてください。「額面19万円台だから大丈夫」ではなく、「手取り17万円前後で生活費をまかなえるか」という視点で老後の家計を考えることが、実態に即した資金計画につながります。

7. 老後資金の計画は「年金の手取り額」をベースに考えよう

本記事では、公的年金制度の仕組みを振り返りながら、「平均年収700万円・39年間勤務」というモデルケースでの老後の年金額をシミュレーションしました。

今回の計算結果では、厚生年金と国民年金を合わせた受給額の目安は月額で約19万4000円となりました。

しかし、実際の受給状況のデータを見ると、月額19万円未満の人が全体の約75.2%を占めており、この水準の年金を受け取れる人は全体の中では少数派であることが分かります。

さらに忘れてはならないのが、年金からも税金や社会保険料が差し引かれ、実際の手取り額は額面の金額よりも10%〜15%ほど目減りするという点です。

老後の生活設計を行う際は、額面の年金額だけでなく「実際の手取り額がいくらになるのか」を正確に把握し、不足する生活費については早めの資産形成などでカバーしていく視点が重要です。

参考資料

中本 智恵