偶数月である8月は、2カ月に一度の「年金支給月」です。ニュースなどで年金振込の話題を目にしたり支給日を迎えたりするなかで、「将来自分は毎月いくらもらえるのか」「ゆとりある生活が送れるのか」と疑問や不安を抱いた方も多いのではないでしょうか。
将来の年金受給額は、現役時代の給与額だけで決まるわけではありません。どのような年金制度に加入していたか、どのような働き方をしてきたかによって金額は大きく変動します。
とくに、基礎となる国民年金だけを受け取る場合と、会社員として厚生年金も上乗せして受け取る場合とでは、老後の収入に歴然とした差が生まれます。
そこで本記事では、公的年金制度の基本的な仕組みをわかりやすく解説したうえで、「平均年収700万円・39年間勤務」という具体的なモデルケースを用いて、将来受け取れる年金額の目安を計算してみます。
あわせて、現在のシニア世代のリアルな年金受給額の分布や、年金から天引きされる税金・社会保険料についても触れ、老後資金の計画に役立つ情報をお届けします。
なお、公的年金制度の仕組みや受給額分布、天引きに関する詳しい解説は下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
1. この記事を読むとわかる3つのポイント
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「平均年収700万円・勤続39年」のモデルケースでは、年金受給額の目安は月額約19万4000円 -
現在のシニア世代で月額19万円以上を受給している人は全体の約4分の1にとどまる -
年金は額面通りではなく、税金・社会保険料として10〜15%ほどが天引きされる
2. 公的年金の仕組みをおさらい。「国民年金」と「厚生年金」の違いとは?
たとえ平均年収が700万円あったとしても、39年間の労働期間中に厚生年金に加入していたか否かで、老後に受け取る年金額は全く異なります。
まずは、日本の公的年金制度がどのような構造になっているのか、基礎知識を確認しておきましょう。
日本の年金制度は、よく「2階建て」の建物に例えられます。
すべての国民が加入する国民年金(基礎年金)が1階部分の土台となり、その上の2階部分として、会社員や公務員が加入する厚生年金が上乗せされる仕組みです。
- 第1号被保険者:自営業者、フリーランス、学生、無職の方など
- 第2号被保険者:民間企業の会社員、公務員など
- 第3号被保険者:第2号被保険者に扶養されている専業主婦(夫)など
国民年金は、日本国内に住む20歳以上60歳未満の全員に加入が義務付けられている制度です。
納付する保険料の額は一律で決まっているため、未納期間がなければ、将来もらえる年金額に大きな差は生じないのが特徴です。
一方で厚生年金は、国民年金にプラスして給付される制度であり、主に会社員や公務員が加入します。
こちらは現役時代の収入(給与や賞与)に応じて毎月の保険料が計算されるため、たくさん稼いで保険料を多く納めた人ほど、将来の年金受給額も増えるという特徴を持っています。
次章では、会社員として厚生年金と国民年金の両方に加入していたケースを想定し、「平均年収700万円」「勤続39年」の条件で老後の年金月額がいくらになるのかをシミュレーションします。
3. 平均年収700万円・勤続39年の場合、年金(厚生年金+国民年金)はいくらもらえる?
ここでは、生涯の平均年収を700万円とし、民間企業で39年間働き続けたモデルケースを想定して、老後の年金受給額を計算してみます。
試算の前提条件は以下の通りです。
- 2003年4月以降の制度に基づき、厚生年金に39年間加入している
- 国民年金は20歳から60歳までの40年間のうち、学生納付特例(追納なし)などにより実質納付期間が39年と仮定する
3.1 2階部分にあたる「厚生年金」の受給額を計算
厚生年金の受給額は、国が定めた計算式によって導き出されます。
【厚生年金額=報酬比例部分+経過的加算+加給年金額】
ここで言う「経過的加算」とは、定額部分が老齢基礎年金の額を上回った場合にその差額を調整する仕組みです。また「加給年金」は、条件を満たす配偶者や子どもを扶養している場合に支給される家族手当のようなものです。
今回の試算では、年金額のメインとなる「報酬比例部分」のみに絞って計算を行い、「経過的加算」と「加給年金額」は除外しています。
報酬比例部分は、以下の計算式で求められます。
【報酬比例部分=A+B】
- A(2003年3月までの期間):平均標準報酬月額×7.125/1000×2003年3月までの加入月数
- B(2003年4月以降の期間):平均標準報酬額×5.481/1000×2003年4月以降の加入月数
「平均標準報酬月額」(Aの期間)は、2003年3月以前の加入期間において、毎月の標準報酬月額の合計を加入月数で割った金額です。
これに対し、「平均標準報酬額」(Bの期間)は、2003年4月以降の加入期間について、標準報酬月額と賞与(ボーナス)を合わせた総額を加入月数で割って算出します。
たとえば、2003年4月以降に39年間厚生年金に加入し、平均年収が700万円だったとします。これを単純に12ヶ月で割ると、ボーナスを含めた1ヶ月あたりの「平均標準報酬額」の目安は約58万3000円となります。
この条件で大まかに計算すると、将来もらえる厚生年金の額面は月額およそ12万5000円(年額にすると約150万円)となります。
3.2 1階部分にあたる「国民年金」の受給額を計算
会社員として厚生年金に加入している人は「第2号被保険者」となり、老後は1階の国民年金(老齢基礎年金)と2階の厚生年金(老齢厚生年金)をダブルで受け取ることができます。
続いて、ベースとなる国民年金の受給額を計算してみましょう。
国民年金の受給額は、以下の計算式で算出されます。
ベースとなる満額の金額(年度により変動あり)に対し、「実際に保険料を納めた月数÷加入可能年数(原則40年=480ヶ月)」を掛けて計算します。
今回のシミュレーションでは、実質的な納付期間を39年間(468ヶ月)としています。この条件で計算すると、国民年金として受け取れる額面は月額約6万9000円(年額換算で約82万8000円)となります。
これらを合算すると、「平均年収700万円」で「39年間」勤務したケースでは、厚生年金(約12万5000円)と国民年金(約6万9000円)を合わせた総受給額は、月額およそ19万4000円(年額で約232万8000円)になるという結果になります。
4. 現在のシニア世代は「厚生年金+国民年金」をいくらもらっている?
前章では、「平均年収700万円・勤続39年」のモデルケースにおいて、受け取れる年金額の目安を算出しました。
では、すでに年金を受給している現在のシニア世代は、毎月どのくらいの金額を受け取っているのでしょうか。
厚生労働省年金局が発表した「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、厚生年金受給者(国民年金分を含む)の受給額分布を見てみましょう。
- 月額10万円未満の割合:19.0%
- 月額10万円以上の割合:81.0%
- 月額15万円以上の割合:49.8%
- 月額20万円以上の割合:18.8%
- 月額20万円未満の割合:81.2%
- 月額30万円以上の割合:0.12%
このデータによると、国民年金と厚生年金を合わせて月額15万円以上を受給している人は全体の約49.8%となり、およそ半数であることが分かります。
一方で、今回の試算で算出した「合計月額19万4000円」に近い月額19万円未満の受給者割合を見てみると、全体の約75.2%にのぼります。つまり、月額19万円以上受け取っている人は全体の4分の1程度にとどまり、比較的受給額が多い層に分類されると言えます。
なお、ここで示されている金額はすべて税引き前の「額面」です。実際の銀行口座に振り込まれる金額は、ここから税金などが引かれた手取り額になる点には十分注意しましょう。
年代別(60歳代・70歳代・80歳代・90歳以上)の平均年金月額についてはこちらの記事でくわしく解説しています。あわせてご参考ください。
4月分(6月支給分)から年金が増えます!老齢年金一覧表「60歳代・70歳代・80歳代・90歳以上」の平均年金月額はいくら? いまどきシニアの平均月額を整理





