6. 監修者コメント:シミュレーションを「自分ごと」にするためのチェックポイント

中本 智恵

今回ご紹介した試算はあくまで「毎月5万円・15年間・想定利回り〇%」という一つのモデルケースです。窓口でNISAのご相談を受けていても、実際に無理なく続けられる金額やご家庭の状況は一人ひとり異なります。まずはご自身の家計簿から、生活防衛資金を確保したうえで毎月どのくらいを投資に回せそうか、無理のない金額を洗い出すことから始めてみてください。

また、想定利回りはあくまで仮定の数字であり、実際の運用成績を保証するものではありません。年によってはマイナスになる年もあれば、想定以上に増える年もあります。単年の値動きに一喜一憂せず、15年・20年といった長期の視点で淡々と積立を続けられるかどうかが、最終的な資産額を大きく左右します。

最後に、非課税保有限度額(1800万円)を超えた分は課税口座での運用になる点も忘れずに押さえておきましょう。積立額や運用期間によっては、思ったより早く上限に近づくケースもあります。定期的にご自身の投資枠の使用状況を確認する習慣をつけておくと安心です。

7. 新NISAを効果的に活用する鍵は「非課税メリット」と「長期積立」の掛け合わせ

本記事では、新NISAの基本ルールやメリットを解説するとともに、実際の試算例を用いて将来の資産形成の姿を具体的に示しました。

新NISAは、投資から得られる利益に税金がかからないことで、個人の資産形成を強力にサポートしてくれるお得な制度です。

しかし、制度のメリットを最大限に引き出すためには、仕組みをしっかり理解したうえで、自身に見合った積立金額や投資期間を適切にプランニングすることが不可欠です。

今回の試算結果が示す通り、投資期間や毎月の積立枠が同じであっても、運用利回りや積立設定額によって最終的に手元に残る金額には大きな差が生じます。

短期間で目標金額を準備しようとすると毎月の投資負担が重くなってしまいますが、時間を味方につけて長期で取り組めば、無理のないペースで着実に資金を貯められます。

運用のリスクを十分に理解したうえで、自分自身の経済状況に応じた計画を立て、粘り強く継続していくことこそが、将来のゆとりある暮らしを支える資産づくりへの一番の近道です。

8. 「オルカン」と「S&P500」、新NISAで人気の2本はどう選ぶ?

新NISAのつみたて投資枠でとくに人気を集めているのが、「オルカン(eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー))」と「S&P500(eMAXIS Slim 米国株式(S&P500))」です。運用会社の公式サイトで確認できる、2026年8月7日時点における両ファンドの騰落率(分配金再投資)を見ていきましょう。

eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)(愛称:オルカン)

  • 1ヵ月:-0.60%
  • 3ヵ月:+5.52%
  • 6ヵ月:+11.79%
  • 1年:+33.69%
  • 3年:+95.00%
  • 5年:+144.65%
  • 設定来(2018年10月31日〜):+283.02%

eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)

  • 1ヵ月:+0.12%
  • 3ヵ月:+6.44%
  • 6ヵ月:+12.95%
  • 1年:+31.82%
  • 3年:+99.16%
  • 5年:+165.09%
  • 設定来(2018年7月3日〜):+349.75%

直近1年間はオルカンがS&P500をやや上回った一方、直近3年・5年・設定来のリターンはいずれもS&P500が優勢という結果になっています。なお両ファンドは設定日が約3カ月異なるため、設定来リターンの単純比較はできない点には留意が必要です。

この2本は組入上位銘柄のほとんどが共通しており、NVIDIAやApple、Microsoftといった巨大IT企業が成長エンジンになっている点は同じです。では、なぜ運用実績に差が生まれるのでしょうか。その鍵を握るのが、構成銘柄の「比率」と投資対象地域の広さです。

S&P500は米国の主要企業約500社のみで構成されているため、NVIDIAやAppleといった上位企業の組入比率が非常に高くなります。一方、オルカンも構成の約6割は米国株ですが、残りの約4割には日本や欧州、新興国などが含まれています。

つまり「米国の成長を信じるならS&P500、米国以外の成長も取りこぼしたくないならオルカン」という考え方の違いが、そのまま運用実績の差につながっているのです。直近1年でオルカンがS&P500を上回ったのも、この「米国以外の約4割」の分散効果が発揮された結果といえます。

中本 智恵
窓口でも「オルカン一本でいいのか、S&P500も混ぜるべきか」で悩まれる方が本当に多いです。突き詰めると「どちらが儲かるか」ではなく「自分がどこまで値動きのブレを受け止められるか」という話になります。集中と分散のどちらが正解ということはなく、下落局面でも積立を止めずに続けられるほうが、結果的にご自身に合っている選択だと思います。なお、ここで並べた数字はあくまで「過去にどうだったか」であって、これからを保証するものではありません。

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  • 本記事は、公開されている公的資料および一般的な情報に基づき作成されたものであり、特定の制度・金融商品・投資行動を推奨するものではありません。
  • 掲載している数値・制度内容・シミュレーション結果は、一定の前提条件のもとでの試算または一般的な事例であり、実際の金額・支給要件・税制・運用成果等を保証するものではありません。制度内容は法改正・自治体運用・経済状況等により変更される可能性があります。
  • 投資に関する記述は、将来の運用成果を示唆または保証するものではなく、元本割れを含むリスクが存在します。本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。最終的な投資判断は、ご自身の責任において行ってください。

参考資料

中本 智恵