5. 「新たな富裕層」の実像

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本記事の冒頭で触れた「新たな富裕層」とは何を指すのでしょうか。博報堂の富裕層マーケティングラボが2025年3月に実施した「新富裕層調査2025」によると、世帯年収3000万円を超えると金融資産1億円以上を持つ人の割合が51.6%に達し、いわば「インカムリッチ」と「資産富裕層」を兼ね備えた層が顕在化するといいます。

世帯年収5000万円以上の層では、金融資産5億円以上を持つ人が50.7%にのぼります。

職業別に見ると、会社経営者・役員の比率は世帯年収3000万円以上で18.0%〜20.9%まで急増し、投資対象もアクティブファンドやREIT、暗号資産、美術品や時計・宝飾品といった現物資産へと広がりを見せています。

従来の「高収入で堅実に貯める」イメージとは異なる、資産の攻めと守りを両立させる新しい富裕層像が浮かび上がってくるのです。

6. 広がる投資の裾野と「二極化」

投資という選択肢は、世代を超えてどこまで浸透しているのでしょうか。金融経済教育推進機構(J-FLEC)の「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」(二人以上世帯調査)によると、銀行口座に加えて証券会社等の口座も保有している世帯の割合は次の通りです。

  • 全体:57.1%
  • 20歳代:61.4%
  • 30歳代:61.7%
  • 40歳代:59.8%
  • 50歳代:53.9%
  • 60歳代:58.1%
  • 70歳代:53.1%

若い世代の方がむしろ高い水準にあることが分かります。投資信託の保有率を見ても、世代間の差はごくわずかです。

  • 20歳代:33.9%
  • 30歳代:35.8%
  • 40歳代:34.3%
  • 50歳代:32.3%
  • 60歳代:35.0%
  • 70歳代:29.6%

その差はおよそ6ポイントにとどまり、かつてのような「年齢が上がるほど投資家が多い」という構図は薄れつつあります。

一方で株式の保有率は20歳代24.6%から60歳代45.0%へと年齢とともに上昇しており、少額から始めやすい新NISAのつみたて投資枠などが、若年層にとって投資の入り口になっている様子がうかがえます。

7. まとめにかえて

夏のボーナスをすでに受け取り、お盆休みでひと息つくこの時期こそ、ご自身の家計のバランスシートを冷静に見直す絶好のタイミングです。

今回の最新データから見えてきたのは、「貯蓄4000万円=高年収」という単純な構図はもはや通用せず、資産運用の有無や「新たな富裕層」への資産移転・負債の状況によって、同じ年収帯であっても大きな二極化が進行しているという現実でした。

家計の本当の体力を測るには、表面的な貯蓄額だけでなく、住宅ローンなどの負債を差し引いた純貯蓄額や、持ち家などの実物資産を含めて総合的に判断することが不可欠です。

まずはご自身の現在の資産と負債を正確に把握すること。 その上で、ボーナスの一部を投資や貯蓄に回すなど、自分に合った無理のない資産形成戦略を練ることが、「貯蓄4000万円」への着実な第一歩となるでしょう。

8. 監修者からのコメント

熊谷 良子

「貯蓄4000万円」という数字は、あくまで一つの目安であり、それ自体が資産形成のゴールではありません。

今回見てきたように、同じ貯蓄額でも年収や年齢、負債の状況によって家計の実態は大きく異なりますし、「新たな富裕層」の広がりが示すように、資産形成の道筋も一様ではなくなっています。

まず取り組んでいただきたいのは、貯蓄・負債・持ち家などの実物資産を含めたご自身の家計の「棚卸し」です。

そのうえで、新NISAなどを活用した資産運用を検討する場合も、リスクを正しく理解し、生活資金と分けて無理のない範囲で行うことが基本となります。

特別なことをする必要はなく、まずは現状を「見える化」することが、着実な一歩につながります。

参考資料

9.1 【ご参考】貯蓄とは

総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]によると、貯蓄とは、ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧郵政公社)、銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金、生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいいます。

9.2 【ご参考】年間収入とは

総務省統計局の「家計調査」における「年間収入」とは、世帯全体の過去1年間の収入(税込み収入)です。以下1~6の収入の合計金額となっています。
1. 勤め先収入(定期収入、賞与等)
2. 営業年間利益(原材料費、人件費、営業上の諸経費等を除く。)
3. 内職年間収入(材料費等を除く。)
4. 公的年金・恩給、農林漁業収入(農機具等の材料費、営業上の諸経費等を除く。)
5. その他の年間収入(預貯金利子、仕送り金、家賃収入等)
6. 現物消費の見積り額

池上 翠