「物価高で毎月の生活費が苦しい」という声は、ここ数年でかなり増えている印象です。
そうした中、政府の実務者会議では、中低所得の現役勤労者を主な対象とする「給付付き税額控除」の本格導入に向けた議論が進められています。
中間とりまとめ案では、令和11年度からの本格導入を目指す方向に加え、それまでの「つなぎ」として、令和9年4月から食料品の消費税率を一時的に1%へ引き下げる案も示されました。
ただし、制度の複雑さや事業者への負担、給付との切り離しをめぐり協議は流動的であり、今後の議論の行方に注目が集まっています。
本記事では、給付付き税額控除の中間とりまとめ案をもとに、本格導入の時期や対象者、本格導入までの経過措置(つなぎ措置)について確認していきます。
1. 給付付き税額控除は、令和11年度からの本格導入を目指す
給付付き税額控除は、令和11年度(2029年度)からの本格導入が目指されています。
所得情報の把握や給付の判定、実際にお金を届けるための仕組みづくりなどに一定の時間がかかるとしており、すぐに始まる制度ではありません。
1.1 対象者は中低所得の現役勤労者
対象として想定されているのは、主に中低所得の現役勤労者です。会社員だけでなく、個人事業主やフリーランスなども含まれる見通しとなっています。
また、一定の所得があり、税金や社会保険料を負担している人が対象になる方向です。中低所得の高齢者についても、就労しており、税・社会保険料の負担が一定程度ある場合は対象に含まれる可能性があります。
一方で、具体的な所得基準や給付額は、現時点ではまだ決まっていません。今後、財源の確保や制度設計とあわせて検討が進められる予定です。
1.2 給付額のイメージ
制度のイメージとしては、次の3段階で給付額が変化する仕組みが想定されています。
- 非課税ライン以下の低所得層には、まず「定額」を支給
- そこから一定の勤労所得に達するまでは、給付額を増やしていく
- 一定の勤労所得を超え、総所得が高くなるにつれて、給付額を段階的に減らしていく
給付付き税額控除 制度設計のイメージ
出所:内閣官房「第12回給付付き税額控除等に関する実務者会議(令和8年5月27日) 給付付き税額控除のイメージ」
最終的には、一定以上の所得水準で給付額がゼロとなり、対象外となる仕組みも検討されています。
一律給付とは異なり、所得や家計の状況に応じて段階的に支援額を調整する点が、給付付き税額控除の特徴といえるでしょう。
2. 物価高が続く家計における課題と、給付付き税額控除への期待
近年強く感じるのは、食料品や日用品の値上げが、特に中低所得層の家計を直撃しているという点です。
収入がある程度あっても、税金や社会保険料が差し引かれたあとの手取りで生活費をやりくりする以上、物価上昇の影響は避けられません。
とりわけ、扶養する子どもがいる世帯や、非課税ラインぎりぎりで働く世帯では、家計の余力が乏しく、値上げの影響をダイレクトに受けやすい傾向があります。
こうした状況を踏まえると、給付付き税額控除には、次のような点が期待できると考えられます。
2.1 一律給付より「的を絞った支援」になりやすい
所得に応じて給付額が変動する仕組みのため、限られた財源のなかでも、本当に支援が必要な層に手厚く配分しやすいというメリットがあります。
2.2 勤労インセンティブを損ないにくい設計
非課税ラインを超えて働くほど給付額が増えていく仕組みであれば、「働くと損をする」という逆効果を避けやすくなります。
この点は、パート・アルバイトの「年収の壁」問題とも共通する論点といえるでしょう。
2.3 本格導入までのタイムラグと支援の空白に注視が必要
令和11年度の本格導入までは、まだ数年の期間があります。
当初検討されていた「令和9年4月からの経過措置(つなぎ措置)」については、事業者負担や制度設計をめぐる議論の過程で一時切り離して検討される場面もありました。本格導入までの間、物価高に苦しむ家計をどのように下支えしていくのか、暫定的な支援策の行方を注視する必要があります。
