3. 「実家と少しの預貯金」が相続トラブルの火種に 「うちは大丈夫!」は危険かも…。
老後資金と並んで向き合うべきなのが「親の相続」という見えにくい負担です。
「うちは財産が少ないからもめない」と思われがちですが、最高裁判所の「令和6年 司法統計年報」によると、遺産分割事件の約78%が「遺産総額5000万円以下」のケースです。
「実家と少しの預貯金」といった分けにくい財産構成こそが争いの種になりやすく、親の財産を把握していないと遺産分割が難航し、子どもに精神的・経済的な負担がのしかかります。
3.1 親が元気な「今」が家族会議のベストタイミング
相続トラブルを防ぐためには、預貯金や不動産、保険、そして重要書類の所在を家族間で共有しておくことが不可欠です。
親が元気なうちに情報をオープンにし、介護資金の管理方法や家族の役割分担を決めておくことが、将来の負担軽減に直結します。
3.2 口座が凍結される?認知症による財産管理の壁
厚生労働省の推計によると、「2025年には65歳以上の約20%が認知症になる」とされており、早めの対策が求められます。
判断能力が低下すると、本人名義の口座凍結や契約手続きが難しくなり、家族が介護費用の支払いに苦労するケースも少なくありません。
また、一人の子どもが親の通帳を預かって管理していた場合、他の家族に経緯を共有していないと、相続時に「使い込み」を疑われるトラブルに発展する恐れもあります。
成年後見制度を利用する選択肢もありますが、最も大切なのは「親が元気なうちに、家族全員で財産内容や管理方法を話し合うこと」です。事前の情報共有や記録を徹底することで、介護から相続までの負担を大きく減らすことができます。
4. 子どもに苦労をかけたくない。注目が高まる「墓じまい」という選択肢
親の相続や実家の片付けを経験した世代を中心に、「自分の子どもには同じ苦労をさせたくない」という思いから「墓じまい」への注目が高まっています。
4.1 アンケートで判明!60歳代の過半数が「墓じまい」に関心あり
全国石製品協同組合が40歳代から70歳代以上を対象に実施したアンケート調査によると、墓じまいを「経験した」「検討している」「将来検討する可能性がある」と答えた人は全体の42.8%に上りました。
年齢別に見ると、50歳代で35.8%、60歳代では53.2%と過半数を占めており、関心の高さがうかがえます。
検討のきっかけは「今あるお墓の管理やお参りが大変」(21.0%)が最多でした。
また、相談するタイミングとして「自身の終活を始めた時」(21.2%)が上位に入っており、身内の不幸があってから慌てるのではなく、セカンドライフを見据えて主体的に行動する人が増えている実態がわかります。
5. 監修者からのコメント
今回のアンケート結果からもわかるように、「実家のお墓を子どもに継がせてよいのか」と悩む50歳代・60歳代の方は少なくありません。
遠方で生活基盤を築く子ども世代にとって、お墓の維持管理は時間的にも経済的にも重い負担となりかねません。
「子どもには自由な人生を歩んでほしい」という思いから、終活の一環として早めに墓じまいを検討するご家庭は今後さらに増えていくでしょう。
大切なのは、家族が元気なうちに気持ちや費用の負担について率直に話し合い、墓石の撤去費用や改葬先の確保なども含めて計画的に準備を進めておくことです。
専門家への相談も上手に活用しながら、後悔のない選択をしていただければと思います。
6. まとめにかえて
今回は、50歳代・60歳代の貯蓄事情や、お墓・相続をめぐるリアルな動向を確認してきました。
自分自身の老後資金の準備を進めるかたわらで、親の介護や相続にも直面する方は少なくないようです。
実家の財産整理や、お墓を含めた将来の負担を子ども世代に残さないための準備も、今後ますます重要になっていくでしょう。
墓じまいや相続に向けた生前整理を進めるには、専門家への依頼費用や墓石の撤去費用など、一定の資金が必要になる場合もあるため、事前に確認しておくと安心です。
元気なうちから計画を立て、家族と話し合っておくことが、自分自身の将来への安心にもつながります。
大切な子どもたちに負担を残さないためにも、より豊かなセカンドライフを築くためにも、早いうちからできる準備を始めてみてはいかがでしょうか。
※個別の相続税や法的手続きについては、税理士や弁護士などの専門家にご相談ください
参考資料
- J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」
- 最高裁判所「令和6年 司法統計年報(家事編)」
- 全国石製品協同組合「『墓じまい』に関するアンケート調査を実施」(2026年5月11日)
- 厚生労働省「認知症参考資料」
菅原 美優


