「毎月の年金から生活費をやりくりしているけれど、これ以上どこを削ればよいのかわからない」というお話を、役場で働いていた頃によく耳にしていました。
2026年8月1日には高額療養費の自己負担限度額が改定され、外来の年間上限額も見直されました。
9月には電気・ガス料金の政府支援も終了する方針が示されており、年金家計の固定費はまた少しずつ形を変えつつあります。
この記事では、年金家計の節約について、次の3点を整理してお伝えします。
1. 年金家計の「節約」この記事の3つのポイント
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年金家計で「本当に効く節約」は変動費より固定費から -
2026年8月改定の高額療養費と、年金受給者への影響 -
国民健康保険料の軽減判定は「自動的に決まる」とは限らない
2. 年金家計で「本当に効く節約」は変動費より固定費
年金家計で節約というと、まず思いつくのは食費や日用品の切り詰めではないでしょうか。実は毎月の年金額に対して効果が大きいのは、固定費の見直しであることが多いです。
2.1 「食費を削る」は年金家計で効きにくい理由
食費や日用品は削れる幅に限りがあります。無理に削ると栄養バランスが崩れ、体調不良から医療費がかさむ悪循環に陥ることもあります。
年金家計で「毎月同じ額」がかかっている支出こそ、見直しの効果が大きい部分になります。
2.2 固定費の三本柱は「保険料」「医療費」「光熱・通信」
年金家計の固定費は、大きく3つに整理できます。1つ目は国民健康保険料や介護保険料などの社会保険料、2つ目は医療機関の窓口負担と薬代、3つ目は電気・ガス・水道と通信料です。
このうち社会保険料と医療費は、制度を知っているかどうかで支払額が大きく変わります。逆に光熱・通信は民間契約なので、切替や見直しがきく反面、シニアプランの選び方に注意も必要です。
ここで「そもそも医療費は変動費では」と感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。若い世代にとって医療費は、風邪をひいたら病院にかかるようなスポットの支出で、確かに変動費のイメージがあります。
ところが60歳代の後半に入るころから、高血圧や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病の定期通院が始まる方が増えていきます。月1回の受診と処方箋薬局の会計が、電気代のように「毎月同じくらいかかる支出」に形を変えていく段階です。
75歳を過ぎて後期高齢者医療に切り替わるころには、複数の診療科と薬局を合わせた医療費が家計の主要固定費になっている、というお話も窓口でよく伺いました。
変動費のつもりで頑張って削るよりも、高額療養費やマイナ保険証の活用、ジェネリック医薬品といった制度のしくみで整えるほうが効きやすいのは、そのためです。
3. 2026年8月改定 年金家計の「医療費節約」と高額療養費のしくみ
年金家計の固定費のうち、制度を知っているだけで負担が変わりやすいのが医療費です。2026年8月から高額療養費のしくみが見直されているため、年金受給者にも影響があります。
3.1 8月1日から自己負担限度額が引き上げ
高額療養費は、1か月間の医療費の自己負担が一定額を超えたときに、超えた分が払い戻される制度です。この自己負担限度額が2026年8月1日から、多くの所得区分で引き上げられました。
所得区分は細かく分かれており、区分ごとの具体的な金額は厚生労働省の資料などで確認できます。加入している健康保険や後期高齢者医療の窓口に問い合わせるのが確実です。
3.2 住民税非課税世帯は月額据え置き、外来「年間上限」の金額が見直し
今回の改定では、住民税非課税世帯の月額自己負担限度額は据え置かれる一方、70歳以上の外来にかかる「年間上限」の金額が見直されました。この外来の年間上限は平成29年8月から設けられているしくみで、1年間(8月から翌年7月まで)に自己負担が積み上がった分について、上限を超えた部分は保険者から還付を受けられます。
一般区分では、外来の年間上限が14万4000円から21万6000円へと引き上げられ、住民税非課税世帯のうち一定所得以下にあたる区分でも金額が改定されています。所得区分ごとの具体的な数値は、加入している健康保険や後期高齢者医療広域連合の案内で確認するのが確実です。
月ごとの限度額はマイナ保険証の提示で自動的に整理される一方、年間の上限は「いったん窓口で支払ったあと、後から申請して償還払いで戻ってくる」形になります。長期通院や長期療養の方は、加入している健康保険や後期高齢者医療広域連合の案内を早めに確認しておきましょう。
年金だけで暮らしている世帯には住民税非課税世帯が多く、外来通院が続く場合も年間の合計負担が青天井にならない設計になっています。
3.3 マイナ保険証を使えば限度額適用認定証は原則不要
医療費が高額になりそうなときの立替対策として、以前は「限度額適用認定証」を事前に申請して医療機関の窓口に提示するのが一般的でした。実は令和3年10月から始まったオンライン資格確認のしくみによって、マイナ保険証を提示するだけで自動的に限度額までの支払いになるようになっています。
紙の健康保険証は令和6年12月2日で新規発行が終わっており、代わりに「資格確認書」が交付されています。資格確認書に自己負担限度額の区分が記載されていれば、こちらを提示するかたちでも限度額適用は自動化されます。
「認定証がないと窓口で立替になる」という以前の常識は、少しずつ形を変えつつあります。
3.4 マイナ保険証があっても認定証の申請が必要になる場面
自動化が進んだ一方で、マイナ保険証を使っていても「限度額適用・標準負担額減額認定証」の申請が今も必要な場面があります。
代表的なのは、住民税非課税世帯の方が入院時の食事療養費の減額を受けたい場合や、長期の入院(申請月以前12か月に90日を超える)で食事療養費の追加減額を受けたい場合です。オンライン資格確認だけでは、こうした個別の減額まではカバーしきれない設計になっています。
そのほか、オンライン資格確認のシステムを導入していない医療機関を利用する場合や、国民健康保険料の滞納がある場合も、認定証の別途申請が求められることがあります。
年金世代のうち、住民税非課税で長期入院に該当しそうな方は、市区町村役場の窓口で一度確認しておくと安心です。
4. 国民健康保険料の「軽減判定」は自動的に決まらない
もう1つ、年金世代の固定費として見落とされやすいのが国民健康保険料です。年金額は市区町村で把握していますが、軽減の判定には別途「所得の申告」が必要になる場面があります。
4.1 軽減は世帯所得ベース
例えば国民健康保険料には、世帯の所得に応じて均等割・平等割が7割・5割・2割軽減される制度があります。所得が一定額以下の世帯が対象で、判定は世帯単位で行われます。
年金収入だけの世帯でも、条件を満たすと軽減対象になることがあります。
4.2 「所得の申告」をしないと軽減されないケース
まず前提として、公的年金の支払い情報は日本年金機構から市区町村に「公的年金等支払報告書」で毎年1月末までに送られており、年金所得そのものは市区町村に伝わっています。
それでも「所得の申告が必要」と言われるのは、公的年金以外の所得の有無まで市区町村が自動で確定できるわけではないためです。「年金以外の収入はありません」と申告して初めて「所得0円」の扱いになり、申告がない状態は「所得不明」の扱いに分類されるしくみです。
この「所得0円」と「所得不明」は法的に別のものとされていて、世帯内に1人でも「所得不明」の方がいると、国民健康保険料の7割・5割・2割軽減の対象から外れることがあります。
ただし、この扱いには自治体差があります。年金以外の所得がない方について、「公的年金等支払報告書が届いていれば申告不要」としている自治体もあれば、「所得なしの申告書を別途提出してください」としている自治体もあります。
4.3 令和8年度の国民健康保険料 年間上限は3区分合計で113万円まで
国民健康保険料の医療分(基礎賦課額)の年間上限は、令和6年度まで65万円で据え置かれていましたが、令和7年度に66万円、令和8年度に67万円へと2年連続で引き上げられました。あわせて令和8年度からは「子ども・子育て支援納付金分」(上限3万円)が新たに設けられ、医療分・後期高齢者支援金分・介護分と合わせた4区分の年間上限は合計113万円になっています。
上限に近い所得帯の世帯には影響がありますが、年金だけで暮らしている大多数の世帯には、軽減判定のほうが影響が大きい部分になります。
まずは自分の世帯がどの区分にあたるのか、市区町村から届く決定通知書で確認するところから始めましょう。
4.4 75歳以降の後期高齢者医療にも同じ軽減枠組み
75歳を過ぎて後期高齢者医療に切り替わっても、均等割の7割・5割・2割軽減という枠組みは続きます。判定が世帯単位で行われる点、所得の申告が必要な点も国民健康保険と同じです。
令和8年度・令和9年度は、均等割額が全国平均で年5万6083円と、前期より少し上がる予定です。一方で、低所得者向けの特例軽減として、均等割の9割・8.5割軽減や所得割5割軽減が引き続き設けられています。
会社員だった配偶者に扶養されていた方が75歳になった場合は、後期高齢者医療への加入から一定の期間、均等割が軽減されるしくみもあります。
健康保険が切り替わる年は特に、市区町村役場か後期高齢者医療広域連合の窓口で「今の判定」を一度確認しておくと安心です。
75歳を過ぎて後期高齢者医療に切り替わっても、均等割の7割・5割・2割軽減という枠組みは続きます。判定が世帯単位で行われる点、所得の申告状況で「所得0円」か「所得不明」かに分かれる点も国民健康保険と同じ考え方です。
年金家計の節約は、変動費よりも固定費を先に見直すのが効果的です。国民健康保険料の軽減判定と、マイナ保険証で自動化された限度額適用のしくみは、知っているかどうかで年間の負担が変わります。


