最近の食品や日用品の値上げラッシュにより、日々の生活費の負担増を実感している方は多いのではないでしょうか。特に、老後の生活を公的年金に頼るシニア世代にとって、物価高は家計を直撃する死活問題です。
2026年度の年金額は引き上げが決まったものの、引かれものを考慮した「手取り」で考えると、手放しで喜べる状況とは言えません。
本記事では、年金の基本構造をおさらいしつつ、現在のシニア世帯が実際に受け取っている年金受給額や生活のリアルな実態、そして今後の年金制度改正の動向について解説します。
1. この記事の3つのポイント
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2026年度の年金額はプラス改定(厚生年金は+2.0%)となったものの、物価上昇の影響で実質的なゆとりは生まれにくい状況です -
厚生年金を月15万円以上受給している人は厚生年金受給権者全体の半数以下にとどまり、税金や保険料の天引きにより手取り額はさらに少なくなります -
60代単身世帯の半数が年金だけでは生活が厳しいと感じており、制度改正を踏まえた「長く働く」ライフプランの検討が求められます
2. 日本の公的年金制度「国民年金」と「厚生年金」の基本構造
日本の公的年金制度は、基礎部分となる「国民年金(基礎年金)」と、その上に加わる「厚生年金」の2種類で構成されています。
この仕組みは、一般的に「2階建て構造」と呼ばれています。
ここでは、それぞれの年金制度の基本的な内容を確認していきましょう。
【1階部分】国民年金(基礎年金)
- 加入対象:原則として日本に住む20歳から60歳未満のすべての人
- 保険料:保険料は一律ですが、年度ごとに改定されます(※1)
- 受給額:保険料を全期間(480カ月)納付した場合、65歳以降で満額の老齢基礎年金(※2)を受け取れます。未納期間がある場合は、その分が満額から差し引かれます
※1 国民年金保険料:2026年度月額は1万7920円
※2 国民年金(老齢基礎年金)の満額:2026年度月額は7万608円
【2階部分】厚生年金
- 加入対象:会社員や公務員、またパートタイマーなど、特定適用事業所(※3)で働き一定の要件を満たす人が、国民年金に上乗せで加入します
- 保険料:収入に応じて決定されます(上限あり)(※4)
- 受給額:加入期間や納付した保険料によって個人差が生じます
2階部分にあたる厚生年金は、会社員や公務員が国民年金に加えて加入する制度です。
国民年金と厚生年金では、加入対象者や保険料の決定方法、受給額の計算方法などが異なります。
そのため、老後に受け取る年金額は、加入していた制度や現役時代の収入状況によって差が生まれます。
さらに、公的年金の支給額は物価や現役世代の賃金の動向に応じて毎年度見直される仕組みであることも、理解しておきたいポイントです。
※3 特定事業所:1年のうち6カ月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が51人以上となることが見込まれる企業など
※4 厚生年金の保険料額:標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算される
3. 2026年度の年金額はいくら?厚生年金・国民年金のモデルケースを確認
公的年金の支給額は、物価や現役世代の賃金の動きを反映し、毎年度改定される仕組みになっています。
2026年1月23日、厚生労働省は2026年度(令和8年度)における年金額の目安を公表しました。
新年度の4月分から適用される改定率は、国民年金(基礎年金)で+1.9%、厚生年金(報酬比例部分)で+2.0%です。
- 国民年金(老齢基礎年金・満額):月額7万608円(1人分 ※1)
- 厚生年金(夫婦2人分のモデルケース):月額23万7279円(夫婦2人分※2)
※1 昭和31年4月1日以前に生まれた方の老齢基礎年金(満額1人分)は、月額6万9108円(前年度比+1300円)です。
※2 平均的な収入(賞与を含む月額換算で45万5000円)の男性が40年間就業した場合に受け取り始める年金額(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金満額)の給付水準です。
国民年金のみを受給する場合、保険料を全期間納付して満額(※3)であったとしても、月額は約7万円程度です。
また、受給開始を75歳まで遅らせる「繰下げ受給(※4)」を利用したとしても、月額は13万円に届かない水準となります。
※3 国民年金の保険料を40年間(480カ月)納付した場合に、65歳から受け取れる満額の年金額を指します。
※4 繰下げ受給とは、年金の受け取り開始を66歳から75歳までの間で遅らせる制度です。1カ月遅らせるごとに0.7%増額され、75歳開始では最大84%増額されます。
さらに、これらはあくまでモデルケースに基づいた金額にすぎません。
実際の受給額は現役時代の働き方や収入によって大きく異なるため、「ねんきんネット」などを活用して自身の見込み額を把握しておくことが重要です。
4. 厚生年金+国民年金の合算「額面ひと月15万円」を受け取れる人はどれほどいる?
厚生労働省年金局の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金受給者(男女全体)の平均月額は15万289円です。
なお、この金額には1階部分である国民年金(老齢基礎年金)の月額分も含まれています。
受給額ごとの人数分布は、以下のようになっています。
4.1 厚生年金の「受給額ごとの受給権者数」を見る
- 1万円未満:4万3399人
- 1万円以上~2万円未満:1万4137人
- 2万円以上~3万円未満:3万5397人
- 3万円以上~4万円未満:6万8210人
- 4万円以上~5万円未満:7万6692人
- 5万円以上~6万円未満:10万8447人
- 6万円以上~7万円未満:31万5106人
- 7万円以上~8万円未満:57万8950人
- 8万円以上~9万円未満:80万2179人
- 9万円以上~10万円未満:101万1457人
- 10万円以上~11万円未満:111万2828人
- 11万円以上~12万円未満:107万1485人
- 12万円以上~13万円未満:97万9155人
- 13万円以上~14万円未満:92万3506人
- 14万円以上~15万円未満:92万9264人
- 15万円以上~16万円未満:96万5035人
- 16万円以上~17万円未満:100万1322人
- 17万円以上~18万円未満:103万1951人
- 18万円以上~19万円未満:102万6888人
- 19万円以上~20万円未満:96万2615人
- 20万円以上~21万円未満:85万3591人
- 21万円以上~22万円未満:70万4633人
- 22万円以上~23万円未満:52万3958人
- 23万円以上~24万円未満:35万4人
- 24万円以上~25万円未満:23万211人
- 25万円以上~26万円未満:15万796人
- 26万円以上~27万円未満:9万4667人
- 27万円以上~28万円未満:5万5083人
- 28万円以上~29万円未満:3万289人
- 29万円以上~30万円未満:1万5158人
- 30万円以上~:1万9283人
厚生年金の受給額が月15万円以上となっている人は、全体の49.8%であり、半数に達していないことがわかります。
さらに、厚生年金を受け取っていない人も含めて考えると、この割合はより一層低くなると考えられます。
4.2 忘れてはいけない「年金から天引きされるお金」の存在
ここで注意したいのは、上記で見てきた年金額はあくまで「額面」であるという点です。 現役時代の給与と同じように、年金からも税金や社会保険料が天引きされます。
具体的に天引きされる主な項目は以下の通りです。
- 介護保険料
- 国民健康保険料(または後期高齢者医療保険料)
- 所得税
- 住民税
つまり、額面で月15万円を受け取れる場合でも、これらの負担が差し引かれるため、口座に振り込まれる「手取り額」はさらに少なくなります。
「ねんきん定期便」などで将来の受給見込額を確認する際は、この「天引き」があることを念頭に置き、実際に手元に残る金額で老後の生活設計を立てることが重要です。
5. 60歳代単身世帯の半数が「年金だけでは生活が厳しい」と回答、その実態とは
年金から税金や社会保険料が引かれ、「思ったより手取りが少ない」と感じる方は多いのではないでしょうか。
このように限られた資金の中で、現在のシニア世代は日々のやりくりをどう感じているのか。
J-FLEC(金融経済教育推進機構)の「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」のデータを紐解くと、シニア家計のリアルで厳しい実態が浮かび上がってきます。
5.1 「年金でさほど不自由なく暮らせる」人はごく少数
60歳代および70歳代で、「年金でさほど不自由なく暮らせる」と回答した人の割合は、二人以上世帯・単身世帯のいずれにおいても8%~12%台にとどまっています。
5.2 「日常生活費もまかなうのが難しい」と感じる単身世帯が多い
「日常生活費程度もまかなうのが難しい」と回答した人は、二人以上世帯では26%~33%台ですが、単身世帯では60歳代で50.7%、70歳代で35.5%にのぼります。
5.3 ゆとりがない最大の理由は「物価上昇など」
年金生活にゆとりがないと感じる理由として、どの年代・世帯類型でも「物価上昇等」が最も多く、いずれも50%を超えています。次いで「医療費の個人負担増」や「年金支給額の切り下げ」などが挙げられました。
この結果から、多くのシニア世帯が物価高による家計への圧迫を強く感じており、年金収入だけでゆとりのある生活を送ることが難しくなっている状況がわかります。
6. 筆者からのコメント
コンビニで大好きなツナのおにぎりの大幅な値上げに驚き買うのをためらったり、海苔を省いて値下げした商品を見かけたりと、物価高が止まらない日々が続いていますね。
こうした中、年金制度の先行きに不安を感じる方も多いでしょう。
しかし、私たちの年金を管理・運用するGPIFは、かつての国内債券中心から、国内外の株式や外国債券へと運用比率を多様化させ、資産を増やす工夫を行っています。
また、年金は額面から約10〜15%程度が税金や保険料で天引きされるのが一般的です。
私たちもただ不安を抱えるのではなく、ねんきん定期便で手取り額を想定しつつ、使わないお金は資産運用に回すなど、お金に働いてもらう仕組みを取り入れていくことが大切です。




