3. 絶好調の決算と、意外な「来期予想」のメッセージ

それでは、直近の業績はどのように推移しているのでしょうか。2026年3月期の通期決算(実績)は、非常に好調な結果となりました。

  • 売上高:1兆5,837億円(前期比+3.5%)
  • 事業利益:1,811億円(前期比+13.7%)
  • 親会社所有者帰属当期利益(最終利益):1,346億円(前期比+91.6%)

増益の要因を分解すると、粗利率の改善(+273億円)と売上増(+191億円)が大きく貢献しています。一方で、人件費やマーケティング投資、R&D(研究開発)などの販管費増加(約△263億円)が利益を一部相殺する形となりました。

セグメント別に見ると、主力である「調味料・食品」は1,341億円から1,430億円へと手堅く増益を果たしています。しかし、全社の中で最も利益を伸ばしたのは、ABFを含む「ヘルスケア等」のセグメントでした。前期の456億円から662億円へと大幅に伸長しており、その内訳のほとんどがABF(ファンクショナルマテリアルズ)によるものです。

ヘルスケア等セグメント 事業利益の推移と予想3/3

ヘルスケア等セグメント 事業利益の推移と予想

出所:味の素「2027年3月期 セグメント別業績予想」(2026年5月7日)を基にイズミダイズム作成

ところが、同時に発表された来期(2027年3月期)の会社予想を見ると、興味深い変化が起きています。

AI関連として注目を集めるABF(ファンクショナルマテリアルズ)の事業利益予想は、今期の546億円から来期は605億円へ、約50億円程度の微増に留まっています。

その一方で、同じヘルスケア等セグメントに含まれる「バイオファーマサービス&イングリディエンツ」が、今期の95億円から来期は170億円へと、約75億円もの大幅な増益を見込んでいるのです。

データセンターやAIの文脈でABFに期待が集まる中、会社側が「それ以外の事業(バイオファーマ)」の伸びを大きく見積もっている点について、泉田氏は「そもそも保守的なのか、生産キャパシティの問題もあったりするんで(中略)現時点ではこれだけども、もしかしたらアップサイドあるのかなと考えることもできる」と、今後の業績上振れの可能性を示唆しています。