年収について考えることは、今の暮らしをより充実させるため、そして将来受け取る年金額を増やすためにも非常に大切なことです。

最新の「令和6年分 民間給与実態統計調査」によると、日本の平均給与は477.5万円。

しかし、この数字はあくまで全体の平均であり、雇用形態、年齢、業種、そして性別によって実態は大きく異なります。

かつて銀行員として多くのお客様の資産形成やライフプランに携わってきた筆者ですが、いざ自分が産休・育休を取得し、子どもの急な発熱による早退や、想像以上に高かった「小1の壁(そして小2、小3と続く壁)」に直面したとき、データだけでは分からない「女性がキャリアと収入を維持する難しさ」を身をもって痛感しました。

そこでこの記事では、同調査をもとに「雇用形態別」「年齢別」「業種別」の3つの視点から、日本の給与のリアルな実態を分かりやすく紐解いていきます。

1. 男女で253.5万円の差:全体の平均給与から読み解く

平均給与の推移(1年を通じて勤務した給与所得者)1/4

平均給与の推移(1年を通じて勤務した給与所得者)

出所:国税庁長官官房企画課「令和6年分 民間給与実態統計調査-調査結果報告-令和7年9月」をもとにLIMO編集部作成

令和6年分のデータによると、給与所得者全体の平均給与は477.5万円。ここ数年は緩やかな上昇傾向が続いています。

ただし、この数字を男女別に見ると話は変わります。男性の平均が586.7万円に対し、女性は333.2万円。その差は253.5万円にのぼります。

2. 正社員と正社員以外で338.6万円の開き:雇用形態別の実態

全体の平均477.5万円という数字は、正社員と正社員以外を合算した値です。雇用形態ごとに分けてみると、両者の格差がより鮮明になります。

  • 正社員:544.9万円
  • 正社員以外(パート・アルバイトなど):206.3万円

その差は338.6万円。「正社員かどうか」が、給与水準に対して非常に大きな影響を持っていることがわかります。

これを男女別に見ると、以下の通りです。

  • 正社員:男性608.6万円、女性429.9万円
  • 正社員以外:男性271.1万円、女性174.1万円

雇用形態と性別、この2つの組み合わせが給与を大きく左右しています。

3. 年齢とともに広がる男女格差:ライフイベントが女性の年収に与える影響

年齢別のデータを追うと、男女の年収が全く異なる軌跡を描いていることが見えてきます。

男性は25〜29歳の437.6万円を起点に、右肩上がりで増加します。

  • 30〜34歳:511.6万円
  • 40〜44歳:629.5万円
  • 50〜54歳:708.5万円
  • 55〜59歳:734.6万円(ピーク)
  • 60〜64歳:604.4万円(定年・役職定年等の影響で減少)

一方、女性は25〜29歳で370.1万円と男性にそれほど差はありませんが、その後はほぼ横ばいで推移します。

ピークは45〜49歳の368.6万円。

男性のように50代にかけて大きく伸びることはなく、年齢を重ねるほど男女差が広がる構図になっています。

この背景にあるのが、妊娠・出産・育児といったライフイベントによる働き方の変化です。

SNSテクノロジーズ株式会社の調査(PRTimes「妊娠中に働いた女性の約8割が『つわり・体調不良』に苦労|それでも63%が『やってよかった』」)によると、妊娠中も就労していた女性の多くが「家計をカバーするために働いた」と回答しています。

産後も就労を継続している・継続を希望していると答えた方は55.0%いる一方で、42.2%は「続けていない・続けるつもりはない」と回答しています。

また、妊娠中の就労経験者からは、以下のような苦労が挙げられました。

  • つわりや体調不良との両立
  • 通院・健診と仕事スケジュールの調整

働き続けたくても、体調や環境の壁が立ちはだかるのが現実です。

こうしたライフイベントによって働き方や雇用形態が変わることが、30代以降の女性の年収が伸びにくい一因と考えられます。

男女の年収格差は「働ける状況の差」が反映されている面も大きいのではないでしょうか。

4. 業種で最大553.1万円の差:高収入を狙える業界とは

業種別平均給与ランキング4/4

業種別平均給与ランキング

出所:国税庁長官官房企画課「令和6年分 民間給与実態統計調査-調査結果報告-令和7年9月」をもとにLIMO編集部作成

給与水準を大きく左右するもう一つの要素が「業種」です。全14業種の中で最も高い業界と最も低い業界の差は、約553.1万円にのぼります。

平均給与の高い上位3業種はこちらです。

  • 1位:電気・ガス・熱供給・水道業(832.4万円)
  • 2位:金融業・保険業(702.3万円)
  • 3位:情報通信業(659.5万円)

首位のインフラ系は832.4万円と頭一つ抜けており、2位の金融業・保険業も業界全体の平均で700万円を超えています。男性のみのデータに限ると、金融業・保険業898.1万円、電気・ガス・熱供給・水道業878.5万円と、さらに高水準になります。

一方、平均給与の低い下位3業種は以下の通りです。

  • 12位:サービス業(389.1万円)
  • 13位:農林水産・鉱業(347.9万円)
  • 14位:宿泊業・飲食サービス業(279.3万円)

どの業種に身を置くかで、年収の目安は大きく変わります。転職を検討している方は、業種ごとの水準も参考にしてみてください。

5. まとめ

今回のデータから見えてきたのは、日本の平均給与477.5万円(男性586.7万円、女性333.2万円)という数字の背景に、3つの大きな格差があるという実態です。

  • 雇用形態の差:正社員(544.9万円)と正社員以外(206.3万円)の間に338.6万円の開き
  • 年齢・性別の差:男性は50代後半にかけて着実に伸びるが、女性はほぼ横ばい。ライフイベントによる働き方の変化が、この差に影響していると考えられる
  • 業種の差:最高業種と最低業種の間に最大553.1万円の格差

年収アップを目指している人は、「平均より低い・高い」だけでなく、自分が今置かれている状況を「雇用形態」「年齢」「業種」という3つの軸で見直すことが、今後のライフプランを考える上での第一歩になるのではないでしょうか。

参考資料

和田 直子