75歳以上の人が加入する後期高齢者医療制度では、医療機関を受診したときの自己負担だけでなく、毎年支払う保険料も家計に影響します。

筆者はFPとして家計や老後資金に関する記事を執筆するなかで、高齢期の支出は「医療費そのもの」だけでなく、保険料や介護費なども含めて考えることが大切だと感じています。

本記事では、後期高齢者医療制度の仕組みをおさらいしながら、2026・2027年度の保険料や都道府県別ランキング、2026年度から始まる子ども・子育て支援金の負担額を確認します。

齊藤 慧
厚生労働省をはじめとする行政機関で医療保険制度改革の議論を取材してきた経験からお伝えしたいのは、後期高齢者医療制度は現役世代の負担軽減と高齢者自身の応能負担のバランスを巡り、今後も継続的な見直しが行われる極めてデリケートな領域であるという点です。

2026年度からの保険料改定や新たな支援金制度の導入は、シニア世帯の可処分所得(純手取り)に直結します。統計の平均値だけに目を奪われず、

ご自身の住む地域での具体的な負担水準を決定通知書などで確認する視座を持って本記事をお読みください。

本記事は、編集部が金融経済教育推進機構などが公表する公式資料を確認の上、執筆・検証しています。

1. この記事の3つのポイント

  •  後期高齢者医療保険料は都道府県ごとの広域連合によって算出され、医療費水準や所得区分に応じて地域ごとに実際の負担額には差異が生じる。
  •  2026年度から導入される「子ども・子育て支援金」は後期高齢者も徴収対象であり、健康保険を通じて段階的な負担が始まる仕組みとなっている。
  •  老後の家計管理においては、医療の窓口負担だけにとらわれず、天引きされる保険料や税金を踏まえた実質的な「可処分所得(手取り年金)」を基準に据えることが重要である。

2. 後期高齢者医療制度とは?75歳以上の医療費負担の仕組みをおさらい

日本では「国民皆保険制度」のもと、原則としてすべての人が公的医療保険に加入します。

加入する医療保険は、職業や年齢によって異なります。

  • 会社員:協会けんぽ、健康保険組合
  • 公務員や教職員:共済組合
  • 自営業者や退職者:国民健康保険

そして、75歳になると、それまで加入していた健康保険から「後期高齢者医療制度」へ移行するのが原則です。

また、65歳以上75歳未満の人でも、一定の障害認定を受けている場合は、本人の申請により後期高齢者医療制度に加入できる場合があります。

2.1 自己負担割合は1割・2割・3割に分かれる

後期高齢者医療制度は、各都道府県に設置された「後期高齢者医療広域連合」が運営しています。全国すべての市区町村がこの制度に参加しており、保険料の徴収や窓口業務などは市区町村が担います。

医療機関を受診した際の自己負担割合は、所得に応じて1割・2割・3割に分かれます。

後期高齢者医療制度について

後期高齢者医療制度について

出所:厚生労働省「医療費の一部負担(自己負担)割合について」

一般所得者等(1割)は、課税所得が28万円未満の人、または課税所得が28万円以上でも一定の収入要件に該当しない人です。

一定以上所得者(2割)は、課税所得が28万円以上145万円未満で、「年金収入+その他の合計所得金額」が単身世帯で200万円以上、複数世帯で320万円以上の人を指します。

現役並み所得者(3割)は、課税所得が145万円以上の人です。ただし、3割負担に該当する場合でも、収入が一定基準に満たないときは、申請等により1割または2割負担となるケースがあります。

3. 【75歳以上】2026・2027年度の後期高齢者医療保険料はいくら?

後期高齢者医療制度の保険料率は、原則として2年ごとに見直されます。

前回は2024年度に改定されているため、2026年度・2027年度は新しい保険料率が適用されます。

なお、2026年度からは、後期高齢者医療制度の保険料についても「医療分」に加えて「子ども・子育て支援金分」が上乗せされます。

まずは、医療分の保険料を確認してみましょう。

  • 被保険者均等割額の年額:5万6083円
  • 被保険者均等割額の月額:4673円
  • 所得割率:10.17%
  • 平均保険料額の年額:9万5875円
  • 平均保険料額の月額:7989円

後期高齢者医療制度の保険料は、被保険者が原則として等しく負担する「均等割」と、所得に応じて負担する「所得割」で構成されています。

2026年度・2027年度の医療分について、全国平均の均等割額は年額5万6083円です。月額にすると4673円となります。

また、所得に応じて計算される所得割率は10.17%です。

医療分の平均保険料額は年額9万5875円、月額では7989円となっています。ただし、この保険料額は全国平均であり、実際の保険料は住んでいる都道府県や本人の所得によって異なります。

4. 【都道府県別ランキング】後期高齢者医療保険料が最も高いのは東京都

ここからは、厚生労働省の資料をもとに、2026・2027年度の都道府県別の平均保険料額を確認します。

なお、以下は後期高齢者医療制度の「医療分」の平均保険料額です。

4.1 2026・2027年度の平均保険料額(医療分)

  • 東京都    1万352円
  • 神奈川県    9842円
  • 愛知県    9045円
  • 大阪府    9010円
  • 沖縄県    8731円
  • 奈良県    8622円
  • 福岡県    8330円
  • 兵庫県    8301円
  • 京都府    8280円
  • 千葉県    8237円
  • 埼玉県    8189円
  • 佐賀県    8159円
  • 石川県    8065円
  • 滋賀県    8051円
  • 岡山県    7891円
  • 福井県    7840円
  • 山口県    7836円
  • 広島県    7831円
  • 静岡県    7415円
  • 香川県    7388円
  • 岐阜県    7317円
  • 富山県    7296円
  • 北海道    7295円
  • 大分県    7283円
  • 三重県    7263円
  • 鹿児島県    7174円
  • 茨城県    7128円
  • 熊本県    7088円
  • 山梨県    7070円
  • 宮城県    6933円
  • 群馬県    6877円
  • 徳島県    6829円
  • 和歌山県    6771円
  • 高知県    6747円
  • 長野県    6745円
  • 鳥取県    6568円
  • 島根県    6561円
  • 栃木県    6476円
  • 長崎県    6192円
  • 愛媛県    6186円
  • 山形県    6014円
  • 宮崎県    5875円
  • 新潟県    5852円
  • 秋田県    5847円
  • 福島県    5744円
  • 岩手県    5496円
  • 青森県    4990円
  • 全国   7989円

平均保険料額が最も高いのは東京都の1万352円です。一方、最も低いのは青森県の4990円となっており、両者の差は月額5362円です。

同じ後期高齢者医療制度でも、保険料の水準は都道府県によって異なります。

続いて、基礎年金受給者(年金収入84万円)の保険料を見ていきましょう。

4.2 2026・2027年度の保険料額(年金収入84万円の場合・医療分)

  • 北海道    1392円
  • 青森県    1175円
  • 岩手県    1133円
  • 宮城県    1216円
  • 秋田県    1300円
  • 山形県    1225円
  • 福島県    1143円
  • 茨城県    1155円
  • 栃木県    1146円
  • 群馬県    1267円
  • 埼玉県    1217円
  • 千葉県    1183円
  • 東京都    1242円
  • 神奈川県    1225円
  • 新潟県    1148円
  • 富山県    1302円
  • 石川県    1337円
  • 福井県    1263円
  • 山梨県    1228円
  • 長野県    1139円
  • 岐阜県    1292円
  • 静岡県    1192円
  • 愛知県    1308円
  • 三重県    1280円
  • 滋賀県    1292円
  • 京都府    1390円
  • 大阪府    1515円
  • 兵庫県    1363円
  • 奈良県    1325円
  • 和歌山県    1371円
  • 鳥取県    1217円
  • 島根県    1334円
  • 岡山県    1400円
  • 広島県    1285円
  • 山口県    1482円
  • 徳島県    1423円
  • 香川県    1353円
  • 愛媛県    1298円
  • 高知県    1409円
  • 福岡県    1548円
  • 佐賀県    1603円
  • 長崎県    1308円
  • 熊本県    1470円
  • 大分県    1492円
  • 宮崎県    1300円
  • 鹿児島県    1625円
  • 沖縄県    1423円
  • 全国    1309円

年金収入84万円の場合、最も保険料が高いのは鹿児島県の1625円です。最も低いのは岩手県の1133円で、その差は492円となっています。

平均保険料額のランキングと比べると、年金収入84万円のケースでは都道府県ごとの差が小さくなっています。

ただし、実際の保険料は本人の所得や世帯状況、各広域連合の保険料率によって変わります。自分の負担額は、自治体や後期高齢者医療広域連合から届く通知で確認しておきましょう。

5. 【後期高齢者も対象】2026年度から始まる「子ども・子育て支援金」とは?

2026年度からは、新たに「子ども・子育て支援金制度」が始まります。この制度は、少子化対策の財源を確保するため、医療保険の仕組みを活用して集める新たな負担金です。

後期高齢者医療制度の加入者も対象で、医療分の保険料に加えて、子ども・子育て支援金分が徴収されます。

つまり、2026年度以降の後期高齢者医療制度の負担は、「医療分」と「子ども・子育て支援金分」を合わせて考える必要があります。

支援金を負担するのは、国内の公的医療保険に加入する人です。現役世代だけでなく、高齢者も一定の負担を担う仕組みとなっています。

5.1 「子ども・子育て支援金」の平均負担額は月額約200円

令和8年度の支援金額(試算)2/3

令和8年度の支援金額(試算)

出所:こども家庭庁「子ども・子育て支援金制度について」

【2026年度の支援金額の推計(平均月額)】

  • 健保組合:被保険者一人当たり 約550円
  • 国民健康保険:一世帯当たり 約300円
  • 後期高齢者医療制度:被保険者一人当たり 約200円

後期高齢者の場合、月額約200円が目安とされていますが、実際には年収によって負担額に差が生じます。

5.2 年収別に見る後期高齢者1人あたりの支援金負担額

こども家庭庁によると、後期高齢者1人あたり(単身世帯・年金収入のみ)の負担額は、以下のようになっています。

年収別の支援金額の試算(令和8年度)3/3

年収別の支援金額の試算(令和8年度)

出所:こども家庭庁「子ども・子育て支援金制度について」

  • 年収80万円の場合:月額 50円
  • 年収100万円の場合:月額 50円
  • 年収125万円の場合:月額 50円
  • 年収150万円の場合:月額 50円
  • 年収175万円の場合:月額 100円
  • 年収200万円の場合:月額 200円

年収80万円から150万円までは月額50円、年収175万円では月額100円、年収200万円では月額200円が目安です。

月額だけを見ると小さな負担に見えるかもしれませんが、医療分の保険料に上乗せされるため、年間では負担額が積み上がります。

※実際の保険料額は、加入する後期高齢者医療広域連合や本人の所得によって異なります。

6. FPが考える注意点|高齢期の負担は「医療費」だけで見ない

後期高齢者医療制度では、医療機関で支払う自己負担割合に注目しがちですが、実際の家計では毎月・毎年の保険料負担も無視できません。

筆者はFPとしての視点から、老後資金を考える際には「年金収入から何が差し引かれるのか」を確認することが大切だと感じています。

年金額そのものは一定程度見込めても、医療保険料や介護保険料、税金などが差し引かれると、実際に使えるお金は想定より少なくなる場合があるためです。

特に確認しておきたいポイントは、以下の3つです。

  1. 自分の医療費負担割合が1割・2割・3割のどれにあたるか
  2. 住んでいる都道府県の後期高齢者医療保険料はいくらか
  3. 2026年度以降、子ども・子育て支援金分の上乗せ負担はいくらか

月額では小さく見える負担でも、年単位で見ると家計への影響は大きくなります。通知書や自治体の案内を確認し、年金収入から差し引かれる金額を把握しておきましょう。

7. まとめ

後期高齢者医療制度は、原則75歳以上の人が加入する医療保険制度です。医療機関を受診した際の自己負担割合は、所得に応じて1割・2割・3割に分かれます。

2026・2027年度の後期高齢者医療制度における医療分の平均保険料額は、全国平均で月額7989円です。ただし、実際の保険料は住んでいる都道府県や本人の所得によって異なります。

また、2026年度からは、医療分の保険料に加えて「子ども・子育て支援金分」も上乗せされます。後期高齢者医療制度の加入者も対象となるため、今後は医療分と支援金分をあわせて負担額を確認することが大切です。

高齢期の家計を考える際は、医療機関で支払う自己負担だけでなく、年金から差し引かれる保険料や税金も含めて確認しておきましょう。

8. 段階的な負担増を客観的に捉え、通知書から正確な手取り年金と固定費の調整を行いましょう

齊藤 慧
後期高齢者医療保険料の都道府県ごとの改定や、2026年度から始まる子ども・子育て支援金の導入など、シニア世帯を取り巻く公的負担は段階的な変化を迎えています。

私が厚生労働省や関連行政機関の取材現場で痛感してきたのは、こうした社会保険制度の改正情報を客観的に受け止め、手元の数字で冷静にシミュレーションを行うことの大切さです。

年金支給額という額面を頼りに家計を計画していても、実際には保険料や税金、精度に伴う新たな支援金が差し引かれるため、口座へ振り込まれる実質的な手取り年金額は着実に変動します。

だからこそ、毎年自宅に届く『住民税の決定通知書』や『保険料決定通知書』を開封し、世帯の正確な可処分所得を算定することが防衛の第一歩になります。不確かな情報に惑わされず、手元の書類から現実的な収支を把握し、それに基づいた固定費の調整など具体的な実務ステップを今日から着実に進めていきましょう。

参考資料