6. 実際の受給者はどれくらい?今のシニア世代の年金月額

前章のシミュレーションでは、平均年収300万円・勤続39年という条件における年金合計額が約12.2万円になるという目安を示しました。

では、すでに現役を退いて年金生活を送っている今の先輩シニアたちは、実際にどれくらいの金額を受け取っているのでしょうか。

厚生労働省年金局が公表している統計資料「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」の中では、国民年金(基礎年金)を含む厚生年金受給者のボリュームゾーンや全体像が報告されています。

国民年金を含む厚生年金の受給者数5/5

国民年金を含む厚生年金の受給者数

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

  • 月額12万円未満の受給者の割合:全体の約32.6%

実際の給付状況のデータによると、国民年金と厚生年金の両方をもらっている人のうち、今回の試算結果(約12.2万円)に近い水準ともいえる、月額12万円未満の受給者が全体の約32.6%を占めていることが分かります。

全体の3割以上を占めるこの割合を見ると、現役時代の収入や勤続年数によって受給額には少なからずばらつきがあることが読み取れます。

ただし、先述の通りここで示されているデータや試算結果はすべて「額面」の金額であり、実際の生活設計を考える上では、ここから税金や社会保険料が引き去られる「手取り額」を想定しておく必要があります。

中本 智恵
3割以上の方が月12万円未満という結果は、決して少数派の話ではないと思います。ご自身の見込額がどのあたりに位置するか、「ねんきん定期便」で早めに確認しておくと安心です。

7. 【シミュレーション】75歳まで繰下げ受給したら、月12.2万円はいくらになる?

年金の受給開始を66歳から75歳までの間で遅らせる「繰下げ受給」を利用すると、1カ月遅らせるごとに受給額が0.7%増額されます。

今回試算した月額12.2万円(額面)をベースに、繰下げ受給を利用した場合の増額後の金額を試算してみましょう。

  • 70歳まで繰下げ(5年間=60カ月):増額率42%→月額約17万3000円
  • 75歀まで繰下げ(10年間=120カ月):増額率84%→月額約22万5000円

額面だけを見ると、75歳まで待てば月額が約10万円以上増える計算になり、大きな効果があるように感じられます。

ただし、注意したいのは、繰下げによって額面が増えるほど、天引きされる税金や社会保険料の負担も増える点です。額面の増加分がそのまま手取りの増加分になるわけではなく、一般的には額面増加分の6〜7割程度が実質的な手取りの増分にとどまるとされています。また、繰下げ待機中は配偶者がいる場合の加給年金を受け取れなくなる点にも注意が必要です。

繰下げ受給は「長生きするほど有利」な制度ですが、何歳まで待機できるかは、その間の生活費をどう賄うかという資金計画とセットで検討する必要があります。

中本 智恵
繰下げ受給は「額面の増額率」だけで判断すると、実際の手取り増分を見誤りやすい制度です。繰下げ待機中の生活費をどう確保するかとセットで検討するのがおすすめです。

8. 監修者コメント:「額面」ではなく「手取り」と「複数の備え」で考える

中本 智恵

今回のシミュレーションでは、平均年収300万円・勤続39年というケースで、公的年金の合計月額(額面)が約12.2万円になるという結果になりました。ここにiDeCoによる上乗せや繰下げ受給を組み合わせれば、額面ベースでは月々の受取額を底上げできる可能性があります。

ただし、どの選択肢にも共通しているのは、「額面の数字がそのまま手取りになるわけではない」という点です。年金は天引き後の手取りで約1〜1.5割目減りしますし、繰下げ受給による増額分も、税金や社会保険料の負担増によって実質的な手取り増分は6〜7割程度にとどまります。iDeCoも運用成果次第で変動する点は変わりません。

大切なのは、公的年金・iDeCoやNISAといった自助努力・繰下げ受給といった複数の選択肢を、どれか一つに絞るのではなく組み合わせて考えることです。ご自身の働き方や資金計画に合わせて、無理のない範囲でできることから一つずつ検討してみてください。

9. まとめ:老後の生活を見据えた計画的な資産形成を

本記事では、日本の公的年金制度の仕組みを踏まえ、「平均年収300万円・勤続39年」の会社員が将来もらえる年金額の目安を算出しました。

試算では合計月額(額面)が約12.2万円という結果になりましたが、実際の受給者データを見ると月額12万円未満の人が約3割を占めており、キャリアによる格差が浮き彫りになっています。さらに、ここから税金や社会保険料が天引きされ、手取り額は10%〜15%ほど少なくなってしまう現実を想定しておく必要があります。

満足のいく老後生活を送るためには、額面の数字だけで安心せず、実際の手取り水準まで正しく把握することが不可欠です。

この夏、まとまった時間を取れるタイミングなどを利用して、ご自身の「ねんきん定期便」を確認するなど、将来に向けた計画的な資産形成への一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

参考資料

中本 智恵