2026年8月3日、iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会)は「iDeCo加入者数等について(令和8年6月)」を公表しました。現存加入者数は約400.9万人となり、当月も新たに約4.0万人が加入するなど、老後に向けて自助努力で資産形成に取り組む人が増え続けています。

こうした動きの背景には、老後の生活を支える柱となる公的年金だけでは不安だ、という声の広がりもあるのかもしれません。「将来的に自分はいくらもらえるのか」「それだけで生活が成り立つのか」と疑問や不安を抱く声は少なくありません。

中本 智恵
「平均年収」や「平均受給額」だけを見ても、自分自身の年金額はイメージしにくいものです。今回は具体的な年収・勤続年数のモデルケースで試算するとともに、iDeCoの活用効果や繰下げ受給の具体的な増額イメージまで踏み込んで確認していきましょう。

将来支給される年金の金額は一律ではなく、加入する年金制度やこれまでの働き方、現役時代の収入によって個別に計算されます。

そこで今回は、日本の公的年金制度の基本的な仕組みをおさらいしながら、「平均年収300万円・勤続39年」という具体的なモデルケースを想定し、将来受け取れる年金額の目安をシミュレーションします。さらに、現役受給者の分布状況や手取り額に影響を与える税金・社会保険料のリアルな水準についても解説します。

なお、公的年金の2階建て構造や天引きの仕組みに関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。

【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説 【元厚労省担当記者監修】年収200万~700万円の年金額は?「ねんきん定期便」の額面と実際の手取りの違い、男女別の平均受給額
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1. この記事の3つのポイント

  •  公的年金は国民年金と厚生年金の2階建て構造
  •  年金は税金などが天引きされ手取りは額面の1割から1.5割減
  •  平均年収300万円で39年働く場合の年金は月約12.2万円

2. 日本の公的年金制度をおさらい!「国民年金」と「厚生年金」の仕組み

生涯の平均年収が300万円という条件であっても、39年という長い現役生活の中で厚生年金の加入期間がどのくらいあるかによって、老後に支給される年金月額は大きく左右されます。

具体的な試算に入る前に、まずは日本の公的年金がどのような構造になっているのかを確認しておきましょう。

我が国の公的年金制度は、一般的に「2階建て」の構造で組み立てられているのが特徴です。

すべての土台となる1階部分に「国民年金(基礎年金)」があり、会社員などの要件を満たした人にその上の2階部分として「厚生年金」が上乗せされる仕組みになっています。

  • 第1号被保険者:フリーランスや自営業者、学生、未就業の方など
  • 第2号被保険者:民間企業の会社員や公務員
  • 第3号被保険者:第2号被保険者に扶養されている専業主婦(主夫)など

1階部分の国民年金は、日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人に加入義務がある制度です。

納める保険料の額は一律で定められているため、将来的に受け取れる基礎年金の額も、納付月数が同じであれば大きな個人差は生じません。

一方、2階部分の厚生年金は、国民年金にプラスして支給されるもので、主に企業に雇用されている会社員や公務員が加入します。

こちらの保険料は現役時代の毎月の給与や賞与の額に応じて変動するため、将来の受給額にも一人ひとり大きな開きが出やすいという特性があります。

さらに、年金支給額が丸ごとそのまま手元に残るわけではないことにも注意が必要です。

中本 智恵
「第3号被保険者」という言葉に馴染みがない方も多いのですが、扶養されている配偶者自身が保険料を納めなくても老齢基礎年金を受け取れる仕組みです。働き方を見直す際は、この区分がどう変わるかもあわせて確認しておくとよいでしょう。

3. 額面通りにはもらえない?年金から天引きされるお金の真実

年金という仕組みも、現役時代に会社からもらっていた給料と同じように各種の控除対象となっており、税金や保険料が天引きされた残りが実際の手取り収入となります。

毎月の年金支給額から天引きされる主な項目には、以下のようなものが挙げられます。

  • 所得税の源泉徴収
  • 個人住民税の引き去り
  • 公的健康保険料(国民健康保険料、または後期高齢者医療保険料)
  • 介護保険料

老後のリアルな生活家計の参考として、総務省の「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」にまとめられている、65歳以上の単身無職世帯における平均的な収支状況を確認してみましょう。

65歳以上の単身無職世帯における収支状況2/5

65歳以上の単身無職世帯における収支状況

出所:総務省「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」

  • 実収入(額面での総収入):13万1456円
  • 可処分所得(実際に使える手取り収入):11万8465円
  • 消費支出(食費や光熱費などの生活費):14万8445円
  • 非消費支出(天引きされる税金・社会保険料):1万2990円

この調査結果によると、年金などの額面収入が13万1456円あるのに対し、税金や社会保険料として1万2990円が差し引かれており、最終的に手元に残る可処分所得は11万8465円となっています。

天引きされる具体的な金額は、お住まいの地域や世帯構成、個人の収入状況によって変わりますが、一般的には、額面の10%〜15%程度が手取り収入から目減りすると想定しておくのが現実的です。

次の章からは、これら両方の年金を受け取ることができる「第2号被保険者」を前提とし、「平均年収300万円」「勤続39年(468ヶ月)」という条件で、老後の年金月額がいくらになるのかを具体的に算出していきます。

中本 智恵
額面と手取りの差は、年金生活を始めてから「思ったより少ない」と感じる大きな要因になりがちです。現役時代のうちに、ねんきん定期便の額面だけでなく、天引き後の手取りベースで生活費を試算しておくことをおすすめします。

4. 【試算】平均年収300万円・勤続39年の会社員が将来もらえる年金月額

ここでは、働く期間全体の平均年収を300万円と想定し、会社員として39年(468ヶ月)にわたり勤務したケースについて、以下の前提条件を設定して将来の受給額を計算してみます。

  • 2003年4月以降の期間において、厚生年金に39年(468ヶ月)加入している
  • 国民年金は20歳から60歳までの40年間のうち、学生納付特例(追納なし)などにより実質納付期間が39年と仮定する
  • 配偶者や扶養家族はいない単身者であると仮定する

4.1 いくら上乗せされる?厚生年金の試算結果

厚生年金として受給できる金額は、法律で定められた計算式に則って割り出されます。

年金額=報酬比例部分+経過的加算+加給年金額

このうち「経過的加算」とは、定額部分の算出額が老齢基礎年金の額を上回る際にその差額を調整して補填する仕組みです。また、「加給年金」は厚生年金の家族手当のようなもので、所定の要件を満たす配偶者や子どもがいる場合に加算されます。

今回のシミュレーションでは、受給額の大部分を構成する「報酬比例部分」の計算に絞って算出を行うため、経過的加算および加給年金額は考慮に入れていません。

報酬比例部分は、加入時期に応じて以下の計算式を用いて算出されます。

報酬比例部分の計算式3/5

報酬比例部分の計算式

出所:日本年金機構「は行 報酬比例部分」

報酬比例部分=A+B

  • A(2003年3月以前の加入期間):平均標準報酬月額×7.125/1000×2003年3月までの加入月数
  • B(2003年4月以降の加入期間):平均標準報酬額×5.481/1000×2003年4月以降の加入月数

「平均標準報酬月額」は、平成15年3月より前の加入期間が対象となり、ボーナスを含まない各月の標準報酬月額の平均値となります。

一方の「平均標準報酬額」は、平成15年4月以降の加入期間が対象で、毎月の給与(標準報酬月額)に賞与(標準賞与額)を合算した総収入をベースに、その期間の加入月数で割って計算されます。

例えば、2003年4月以降に39年にわたって厚生年金に加入し、生涯の平均年収が300万円だったケースを考えます。ボーナスを含んだ総年収を基準にすると、その12分の1に当たる約25万円が平均標準報酬額の目安となります。

この前提条件に沿って簡易的に計算を行うと、厚生年金の受給額は月額で約53,000円という結果になります。

4.2 土台となる国民年金(基礎年金)の受給額

会社員などの「第2号被保険者」として勤務していた方は、将来的に1階部分の国民年金と2階部分の厚生年金をセットで受給できる権利を持ちます。

続いて、生活のベースとなる国民年金の受給額がどのくらいになるかを確認しましょう。

国民年金(老齢基礎年金)の支給額は、以下の計算式をもとに割り出されます。

基準となる84万7300円(※昭和31年4月2日以降に生まれた方が対象)に、「保険料の実際の納付月数 ÷ 加入可能な最大月数(40年間=480ヶ月)」の比率を掛けて算出します。

今回のモデルのように、20歳から60歳までの期間のうち保険料を納付した期間が39年(468ヶ月)となる場合、国民年金としての受給額は月額で約69,000円となります。

これら2つの試算結果を合算すると、平均年収300万円・勤続39年の会社員が将来受け取れる公的年金の合計月額(額面)は、約122,000円(約12.2万円)となります。

中本 智恵
約12.2万円という結果は、平均的なキャリアを歩んだ場合の一つの目安に過ぎません。転職による加入期間の空白や、昇給・賞与の水準によって、実際の金額は上下に変動する点を踏まえておきましょう。

5. 【シミュレーション】iDeCoを併用すると、老後資金はどれだけ上乗せできる?

冒頭で触れたとおり、iDeCoの加入者数は約400.9万人まで増えています。ここでは、先ほど試算した公的年金(月約12.2万円)に、iDeCoによる自助努力をどれだけ上乗せできるのかを試算してみましょう。

仮に40歳から60歳までの20年間、毎月1万円をiDeCoで積み立て、年利3%で運用できたと想定します。

  • 積立元本:1万円×12ヶ月×20年=240万円
  • 運用収益:約87万円
  • 資産合計(元本+収益):約327万円

さらに、iDeCoの掛金は全額が所得控除の対象となるため、仮に所得税・住民税をあわせた税率を20%とすると、年間の掛金12万円に対して年間約2万4000円、20年間では合計約48万円の節税効果も見込めます。

この327万円を65歳から20年間(240ヶ月)かけて取り崩すと仮定すると、月あたり約1万4000円の上乗せに相当します。公的年金の月額12.2万円と合わせると、月々の受取額は約13万6000円まで引き上げられる計算です。

もちろん、運用成果は市場の状況によって変動するため、この金額を保証するものではありません。ただし、公的年金だけに頼らず、税制優遇を受けながら自助努力で上乗せを図る選択肢があることは、知っておいて損はないでしょう。

中本 智恵
iDeCoは原則60歳まで引き出せないという制約がある分、老後資金として着実に積み上がっていく仕組みでもあります。月1万円程度の少額からでも、早く始めるほど運用期間を長く確保できる点はメリットです。