2. 【シミュレーション】平均年収300万円・勤続38年で将来もらえる年金額
ここでは、働く期間全体の平均年収を300万円と想定し、会社員として38年(456ヶ月)にわたり勤務したケースについて、以下の試算条件を設定して将来の受給額を計算してみます。
- 2003年4月以降の期間において、厚生年金に38年(456ヶ月)加入している
- 国民年金は20歳から60歳までの40年間のうち、学生納付特例(追納なし)などにより実質納付期間が38年と仮定する
- 配偶者や扶養義務のある親族はいないものとする
2.1 いくら上乗せされる?厚生年金の試算結果
厚生年金として受給できる金額は、法律で定められた計算式に則って割り出されます。
年金額=報酬比例部分+経過的加算+加給年金額
このうち「経過的加算」とは、定額部分の算出額が老齢基礎年金の額を上回る際にその差額を調整して補填する仕組みです。また、「加給年金」は厚生年金の家族手当のようなもので、所定の要件を満たす配偶者や子どもがいる場合に加算されます。
今回のシミュレーションでは、受給額の大部分を構成する「報酬比例部分」の計算に絞って算出を行うため、経過的加算および加給年金額は考慮に入れていません。
その報酬比例部分は、加入時期に応じて以下の計算式を用いて算出されます。
報酬比例部分=A+B
- A(2003年3月以前の加入期間):平均標準報酬月額×7.125/1000×2003年3月までの加入月数
- B(2003年4月以降の加入期間):平均標準報酬額×5.481/1000×2003年4月以降の加入月数
「平均標準報酬月額」は、平成15年3月より前の加入期間が対象となり、ボーナスを含まない各月の標準報酬月額の平均値となります。
一方の「平均標準報酬額」は、平成15年4月以降の加入期間が対象で、毎月の給与(標準報酬月額)に賞与(標準賞与額)を合算した総収入をベースに、その期間の加入月数で割って計算されます。
例えば、2003年4月以降に38年にわたって厚生年金に加入し、生涯の平均年収が300万円だったケースを考えます。ボーナスを含んだ総年収を基準にすると、その12分の1に当たる約25万円が平均標準報酬額の目安となります。
この前提条件に沿って簡易的に計算を行うと、厚生年金の受給額は月額で約52,000円という結果になります。
2.2 土台となる国民年金(基礎年金)の受給額
会社員などの「第2号被保険者」として勤務していた方は、将来的に1階部分の国民年金と2階部分の厚生年金をセットで受給できる権利を持ちます。
続いて、生活のベースとなる国民年金の受給額がどのくらいになるかを確認しましょう。
国民年金(老齢基礎年金)の支給額は、以下の計算式をもとに割り出されます。
基準となる84万7300円(※昭和31年4月2日以降に生まれた方が対象)に、「保険料の実際の納付月数 ÷ 加入可能な最大月数(40年間=480ヶ月)」の比率を掛けて算出します。
今回のモデルのように、20歳から60歳までの期間のうち保険料を納付した期間が38年(456ヶ月)となる場合、国民年金としての受給額は月額で約67,000円となります。
これら2つの試算結果を合算すると、平均年収300万円・勤続38年の会社員が将来受け取れる公的年金の合計月額(額面)は、約119,000円(約11.9万円)となります。
著者
株式会社モニクルリサーチ メディア編集本部 公開室
元・厚生労働省担当記者(社会保障専門紙)
中央大学法学部を卒業後、東証プライム上場IT企業での法人営業を経て、厚生労働省記者クラブに所属する行政・自治体向けの社会保障専門紙記者として活動。
現在は「公的社会保障制度(年金・医療・介護)」の仕組みと、「私的資産形成(NISA・iDeCo)」の税制優遇制度を横断的に分析し、生活者のための家計防衛術を提供する編集者として活動している。
各省庁が公表する難解な一次情報(e-Gov法令検索の条文データや、総務省統計局の家計調査など)を読み解き、現役世代からシニア層までを対象に、事実に基づいた実用的な解説記事を継続的に執筆している。
このほか、専門家と実務家が発信する金融経済ニュースサイト『LIMO&ファイナンス』でも情報を発信している。
【経歴・専門性】
前職の専門紙記者時代には、厚生労働省本省および各地方自治体(保険者)を直接取材対象とし、現場の最前線で以下の重要政策の決定プロセスと一次情報に触れてきた。
これらの政策取材を通じ、「制度の複雑化が引き起こす、生活者のサイレントな不利益(申請漏れや制度の不知による経済的損失)」の構造を実務レベルで把握。役所の論理で構築された難解な制度設計を、IT企業時代に培ったデータ分析手法と掛け合わせることで、客観的指標(平均値ではなく中央値を用いた実態把握など)に基づく解説記事を執筆している。
【具体的な実績・保有資格・メディア掲載歴】
公的機関の一次データに依拠した客観的な記事執筆により、Yahoo!ニュース「経済ランキング」において多数の1位を獲得。具体的な執筆・担当領域における実績は以下の通りである。
- 公的年金・給付金領域:日本年金機構の公表資料に基づく「在職老齢年金による支給停止基準」や「年金生活者支援給付金の受給要件」の解説。また、国税庁のガイドラインに沿った定額減税や各種給付金の対象者判定フローの実務的整理。
- 医療・介護保険領域:高額療養費制度などの自己負担限度額の算出方法や、公的保障のセーフティネット範囲の図解解説。
- 資産運用領域:金融庁のNISA特設サイトや、iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会)のデータに基づく税制優遇メリットの数値化。特定の金融商品の購入推奨は行わず、公的年金の不足分を補うための長期積立投資の制度整理に特化。
- 貯蓄・家計管理領域:家計調査などの官公庁統計データに基づいた、年代別・世帯年収別の貯蓄実態の論理的解説、およびインフレ時代におけるリスク管理手法の情報提供。
- 保有資格・実務知見:東京商工会議所 ビジネスマネジャー検定試験®合格。上場企業での実務経験と当資格で培った「組織マネジメント」や「コンプライアンス・リスク管理」の視点を個人の家計防衛に転用し、ビジネスパーソンが納得できる論理的な解説の裏付けとしている。
【読者へ提供する価値と発信理念】
「役所の論理ではなく、生活者の視点で制度を翻訳する」ことを発信の基本理念としている。
複雑怪奇な社会保障制度においては、制度を知らないこと自体が直接的な経済的損失に直結する。この情報非対称性を是正し、「知っていれば救われたはずの人が損をする現状をゼロにする」ことが現在の活動における最大のミッションである。
そのため、記事執筆にあたっては個人の主観や推測、投資推奨は避ける。
そのうえで、読者の生活や資産に影響を与える領域であることを自覚し、読者が「国に頼りすぎず、国を賢く利用する」ための正確で安全な判断材料を提供し、生活者とその家族を守るための実用的な知見を届け続けている。
(2026年6月16日更新)