7月28日に厚生労働省が公表した「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について」によると、今年度の改定目安の引上げ額は、Aランクで54円、Bランクで56円、Cランクで56円と示されました。

働く世代の最低賃金水準の引き上げが議論される中、将来の年金受給額の算出基盤となる現役時代の働き方や収入、そしてそれらが老後の年金生活にどのように反映されるのかという実態に関心が集まっています。

老後の生活を考えている方の中には、「年金はいくらもらえるのか」と気になる方もいるでしょう。現役時代に会社員や公務員だった方は厚生年金保険に加入し、老後は厚生年金を受給します。

木内 菜穂子
老後の年金額について「平均はいくらか」だけでなく「自分の場合はどうなるか」を知りたいというお悩みは非常に多いテーマです。年金アドバイザーの資格を持つ立場からも、まずは年代別の実態を正しく押さえておくことをおすすめします。

しかし、受給額は現役時代の年収や厚生年金保険への加入期間などにより、人によって大きく異なります。

この記事では、現在のシニア世代の平均年金月額や厚生年金の受給額ごとの分布をもとに、老後資金を考える際のポイントを解説します。

1. この記事の3つのポイント

  •  厚生年金の平均受給額は月15万289円、国民年金は月5万9310円
  •  厚生年金受給者のうち、月10万円未満の人は約2割(約5人に1人)を占める
  •  平均受給額だけで老後資金の十分・不十分を判断するのは難しく、世帯人数や貯蓄状況なども踏まえた確認が必要

2. 厚生年金・国民年金の平均受給額はいくら?

厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金の平均受給額は15万289円(国民年金を含む)、国民年金は5万9310円です。

厚生年金・国民年金の平均受給額1/2

厚生年金・国民年金の平均受給額

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに筆者作成

【厚生年金】

  • 全体:15万289円
  • 男性:16万9967円
  • 女性:11万1413円

【国民年金】

  • 全体:5万9310円
  • 男性:6万1595円
  • 女性:5万7582円

国民年金は厚生年金よりも9万円ほど少額となっています。老後に受給するのが国民年金のみの場合、生活費を年金だけで賄うのは難しいでしょう。年金以外の方法で老後の生活費を確保しておく必要があります。

また、厚生年金の平均受給額を男女別に見ると、女性は男性より約5万8000円も少額になっています。これは、厚生年金保険への加入期間や現役時代の収入が関係しています。

厚生年金は、加入期間が長いほど、また、年収が高いほど受け取れる年金額が高額になるのが一般的です。現在年金を受給している世代の女性は、結婚後は家庭に入ることが多く、専業主婦や、働いていても扶養の範囲内に収めている方が多い傾向にあります。

そのため、厚生年金への加入期間が短くなり、収入も男性より少ないことから、厚生年金受給額も少額になると考えられます。

一方、国民年金受給額は保険料の納付月数によって決まり、現役時代の年収に大きな影響は受けません。そのため、男女間の差も少ないと考えられるでしょう。

3. 厚生年金受給額|月10万円未満は約2割を占める

前章より、厚生年金の平均受給額は約15万円ということがわかりました。しかし、実際の受給額を分布で見ると「1万円未満」から「30万円以上」まで大きな幅が見られます。

受給金額ごとの受給者数は以下の通りです。

  • 1万円未満:4万3399人
  • 1万円以上~2万円未満:1万4137人
  • 2万円以上~3万円未満:3万5397人
  • 3万円以上~4万円未満:6万8210人
  • 4万円以上~5万円未満:7万6692人
  • 5万円以上~6万円未満:10万8447人
  • 6万円以上~7万円未満:31万5106人
  • 7万円以上~8万円未満:57万8950人
  • 8万円以上~9万円未満:80万2179人
  • 9万円以上~10万円未満:101万1457人
  • 10万円以上~11万円未満:111万2828人
  • 11万円以上~12万円未満:107万1485人
  • 12万円以上~13万円未満:97万9155人
  • 13万円以上~14万円未満:92万3506人
  • 14万円以上~15万円未満:92万9264人
  • 15万円以上~16万円未満:96万5035人
  • 16万円以上~17万円未満:100万1322人
  • 17万円以上~18万円未満:103万1951人
  • 18万円以上~19万円未満:102万6888人
  • 19万円以上~20万円未満:96万2615人
  • 20万円以上~21万円未満:85万3591人
  • 21万円以上~22万円未満:70万4633人
  • 22万円以上~23万円未満:52万3958人
  • 23万円以上~24万円未満:35万4人
  • 24万円以上~25万円未満:23万211人
  • 25万円以上~26万円未満:15万796人
  • 26万円以上~27万円未満:9万4667人
  • 27万円以上~28万円未満:5万5083人
  • 28万円以上~29万円未満:3万289人
  • 29万円以上~30万円未満:1万5158人
  • 30万円以上:1万9283人

「10万円以上〜11万円未満」の人数が最も多く、111万2828人となっています。一方で、10万円未満の人数は合計305万3974人で、厚生年金受給賢者数の約19% を占めています。約5人に1人は10万円以下ということになります。

4. 平均受給額だけで老後資金が十分かを判断するのは難しい

年金受給額だけで老後の生活水準を判断することは難しいです。実際には、以下のような要素も生活費に大きな影響を与えるためです。

  • 世帯人数
  • 持ち家か賃貸か
  • 医療費や介護費
  • 貯蓄や退職金の有無
  • 働き続ける予定があるか

例えば同じ受給額でも、世帯人数が多い方が生活費が多くかかり、生活水準は低くなるでしょう。また、持ち家か賃貸住みかによっても毎月の生活費が大きく異なります。

ほかにも、年金受給額が少なくても十分な貯蓄があったり、高額な退職金を受け取ったりした世帯では、老後資金が年金だけで不足するとは限りません。

つまり、「平均受給額はいくらか」よりも、自分の家計に照らして十分かどうかを確認することが重要です。

なお、将来受け取れる年金額の目安は「ねんきんネット」や、毎年誕生月に送付される「ねんきん定期便」で確認可能です。

年金加入記録や将来の年金見込額、保険料納付状況などが確認できるため、老後の準備を始める前に確認しましょう。

木内 菜穂子
同じ年金月額でも、医療費や介護費の負担状況によって家計の余裕度は大きく変わると感じます。平均額だけで一喜一憂せず、ご自身の支出構造も踏まえて資金計画を立てることをおすすめします。