老後の家計を考えるとき、まず気になるのは「同じ年代の人がどれくらい貯蓄を持っているか」という点です。

総務省統計局は2026年5月19日に家計調査(貯蓄・負債編)2025年平均結果を公表しました。世帯主が65歳以上の二人以上世帯では、貯蓄4000万円以上の割合が21.1%あります。一方で300万円未満の世帯も14.9%あり、二極化しているのが実態です。

そこで本記事では、最新のデータをもとに65歳以上世帯の貯蓄分布と、高齢夫婦無職世帯・高齢単身無職世帯の実際の毎月の収支を確認します。

1. 3つのポイントの見出し

  •  65歳以上世帯の貯蓄は4000万円以上が21.1%、300万円未満が14.9%と二極化
  •  高齢夫婦無職世帯は毎月4万2434円、単身無職世帯は毎月2万9980円の赤字
  •  赤字は貯蓄取り崩しで補われており、10年間では夫婦世帯で約500万円、単身世帯で約360万円の取り崩しになる試算

2. 65歳以上世帯の貯蓄4000万円以上は21.1%

2.1 世帯主が65歳以上の貯蓄分布

総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)2025年平均結果の概要」によると、世帯主が65歳以上の二人以上世帯における貯蓄現在高の平均は2564万円です。貯蓄保有世帯の中央値は1777万円でした。

平均は分布の上位層に引き上げられやすいため、中央値のほうが実感に近い水準です。

世帯主が65歳以上の世帯の貯蓄現在高階級別世帯分布 (二人以上の世帯)1/3

世帯主が65歳以上の世帯の貯蓄現在高階級別世帯分布 (二人以上の世帯)

出所:総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)2025年平均結果の概要」p.22 図Ⅲ-5-1

2.2 4000万円以上と300万円未満の二極化

貯蓄現在高階級別世帯分布では、4000万円以上を保有する65歳以上世帯は21.1%を占めました。一方、300万円未満の世帯は14.9%、2500万円以上の世帯は36.3%です。

また参考として、二人以上世帯全体(全年齢)の平均貯蓄現在高は2059万円、中央値は1264万円でした。65歳以上のほうが平均・中央値ともに高く、資産形成の終盤に到達している世代です。

3. 高齢夫婦無職世帯の毎月は4万2434円の赤字

3.1 実収入と消費支出の内訳

総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2025年平均結果の概要」によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の1か月平均は次のとおりです。

65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の家計収支2/3

65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の家計収支

出所:総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2025年平均結果の概要」

  • 実収入25万4395円
  • 可処分所得22万1544円
  • 消費支出26万3979円

可処分所得から消費支出を差し引くと4万2434円の赤字です。

実収入のうち社会保障給付は22万8614円で、実収入全体の89.9%を占めています。

3.2 平均消費性向は119.2%

可処分所得に対する消費支出の割合を示す平均消費性向は119.2%です。可処分所得を約2割上回る支出があり、その差を貯蓄の取り崩しなどで補っている計算になります。

消費支出の内訳をみると、食料が7万8964円で全体の29.9%を占めます。次いで交通・通信が3万1325円で11.9%、その他の消費支出(交際費など)が5万1341円で19.4%です。

生活の基盤となる食費と、人付き合いの支出が大きな比重となっています。

4. 高齢単身無職世帯の毎月は2万9980円の赤字

4.1 単身世帯の収支と内訳

65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)の1か月平均は次のとおりです。

65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)の家計収支3/3

65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)の家計収支

出所:総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2025年平均結果の概要」

  • 実収入13万1456円
  • 可処分所得11万8465円
  • 消費支出14万8445円

差し引き2万9980円の赤字です。

社会保障給付は12万0212円で、実収入の91.4%を占めます。夫婦世帯より社会保障への依存度が高い構造となっています。

4.2 平均消費性向は125.3%

平均消費性向は125.3%で、夫婦世帯より高い水準です。単身世帯は固定的な支出を1人で負担するため、収支のバランスが崩れやすい面があります。

消費支出の内訳では、食料が4万2545円で28.7%、光熱・水道が1万5565円で10.5%です。その他の消費支出(交際費など)は3万1681円で21.3%となっています。

総額は夫婦世帯の約6割ですが、住居や光熱費など1人でも一定額かかる項目の比重が高めです。

5. 《お金の専門家が解説》老後の家計は3つの視点で点検してみる

老後の家計は次の3つの観点で確認してみましょう。

5.1 自分の家計と平均値を並べる

まずは直近3か月ほどの家計簿を集計し、可処分所得と消費支出を平均値と比べる方法があります。夫婦世帯なら26万3979円、単身世帯なら14万8445円が消費支出の目安です。差の大きい費目から見直すと効率的です。

5.2 取り崩しペースを試算する

毎月4万2434円の不足が続くと、年間で約50万円、10年で約500万円が貯蓄から差し引かれます。単身世帯の毎月2万9980円の不足なら、10年で約360万円の取り崩しです。老後に必要な貯蓄額の目安として使ってみてください。

5.3 収入源を1つ増やす

公的年金に加え、就労収入や運用収入で家計の下支えを検討する方法もあります。

少額投資非課税制度(NISA)の2025年12月末の口座数は約2830万で、前年比10.4%の増加となりました。制度を確認したうえで、目的に合う資産形成を始めてみてください。

6. 監修者からのコメント:「平均消費性向120%」という数字の裏にある現実的な選択

中本 智恵

私は元銀行員なのですが、65歳以上のお客様の家計をご一緒に確認する中で、記事にある平均消費性向119.2%(夫婦世帯)や125.3%(単身世帯)という数字は、まさに窓口で目にしてきた実感と重なります。可処分所得の2割前後を上回る支出が続くというのは、決して特別な家庭ではなく、多くのご家庭にとって「ごく普通の老後の姿」だという点は、まずお伝えしておきたいと思います。

一方で印象的だったのは、貯蓄4000万円以上が21.1%いる一方で、300万円未満の世帯も14.9%存在するという二極化です。この差を生んでいるのは、退職金の有無だけでなく、現役時代からどれだけ計画的に「取り崩しのペース」を意識してきたかという点にあると感じています。実際、貯蓄に余裕のあるお客様ほど、「毎月いくら取り崩せば何年もつか」という具体的な試算を早い段階から行っていました。

記事にあるとおり、毎月4万円台の赤字が続けば10年で約500万円の取り崩しになる計算です。この数字を見て不安になるのではなく、むしろご自身の貯蓄額と照らし合わせて「あと何年分の余裕があるか」を具体的に把握するための材料として活用していただきたいと思います。そのうえで、就労継続やNISAを活用した運用収入など、年金以外の収入源を1つでも増やしておくことが、赤字を貯蓄の取り崩しだけに頼らない、より安心できる老後設計につながるでしょう。

参考資料

苛原 寛