7月に入り、本格的な夏の訪れを感じる季節となりました。
外出の機会も増える一方で、涼しいご自宅でじっくりと家計を見直す時間を持つ方もいらっしゃるかもしれません。
近年、食料品や光熱費などの価格上昇が続いており、特に年金で生活する高齢者世帯にとっては、家計管理の重要性が増しています。
筆者はかつて郵便局に勤務し、地域のお客様の資産運用や保険のご相談を数多く伺ってまいりましたが、その中で「公的年金だけで足りるのか」「もしもの時にどのような公的支援があるのか」といった老後の生活への切実な不安の声をよく耳にしました。
そうした万が一の暮らしを支える公的支援の一つに、生活保護制度があります。
本記事では、生活保護制度を利用している世帯の実態や、高齢単身世帯の家計状況をデータで確認し、制度の詳しい内容についてわかりやすく解説していきます。
1. 生活保護を受けている世帯の過半数が「高齢者世帯」という実情
厚生労働省が公表した「生活保護の被保護者調査(令和8年3月分概数)」によれば、2026年3月時点における生活保護の受給者数は約198万人(198万808人)です。
前年の同じ月と比較すると、保護を受けている人数や世帯数は減少傾向にあります。
しかし、申請件数や新たに保護が開始された世帯数は増加している点には注意が必要でしょう。
- 保護の申請件数:2万3636件 前年同月比1201件増加(5.4%増)
- 保護開始世帯数:2万711世帯 前年同月比371世帯増加(1.8%増)
世帯構成別の内訳は、以下のようになっています。
【世帯類型別世帯数および割合(保護停止中を含まない)】
- 高齢者世帯:55.3%
- 単身世帯:51.7%
- 二人以上世帯:3.6%
- 高齢者以外世帯(高齢者世帯を除く世帯):44.7%
- 母子世帯:3.4%
- 障害者・傷病者世帯:25.4%
- その他の世帯:15.8%
この中で特に注目されるのは、単身の高齢者世帯が全体の51.7%を占めていることです。
この結果は、生活保護制度が、年金収入だけでは生活を維持するのが難しい単身高齢者を支える重要な役割を担っていることを示唆しています。
また、障害を持つ方や傷病を抱える方の世帯も25.4%と大きな割合を占めており、前年の同月と比較して世帯数が3600世帯(0.9%)増加している状況です。
2. なぜ生活保護受給者に単身高齢者が多いのか?その背景を探る
生活保護を受けている世帯の中で、単身の高齢者世帯が大きな割合を占める理由には、高齢期の家計の構造が影響しています。
厚生労働省の「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」を参照すると、公的年金や恩給を受け取っている世帯の中で、その収入が総所得のすべてを占める世帯は43.4%にのぼります。
これは、半数以上の世帯が、就労による収入や財産からの所得など、年金以外の収入源を組み合わせて生活していることを意味します。
しかし、年齢を重ねると仕事を見つけて収入を得ることが難しくなる傾向があります。
配偶者との死別や未婚といった理由で、一人で暮らす高齢者も少なくありません。
単身世帯の場合、家賃や光熱費といった住居関連費を一人で全額負担しなければならず、複数人で暮らす世帯のように生活費を分担することはできません。
さらに、生活費を補うために貯蓄を切り崩したり、加齢に伴って医療費や介護サービスの自己負担が増えたりするケースも考えられます。
このように、高齢の単身世帯は収入を増やすのが難しい状況にある一方で、生活のための支出は継続的に発生しやすいという特徴を持っています。
こうした要因が、生活保護受給世帯に占める単身高齢者の割合を高くしている一因とみられます。
それでは、年金収入を主として生活する65歳以上の単身無職世帯の家計は、具体的にどのような状況なのでしょうか。
3. データで見る高齢単身無職世帯の家計「毎月約3万円の赤字」という現実
総務省が発表した「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」から、65歳以上の単身無職世帯における家計の状況を見てみましょう。

出所:総務省「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」
【65歳以上 単身無職世帯】
- 実収入:13万1456円
- 可処分所得(手取り収入):11万8465円
- 消費支出:14万8445円
- 毎月の不足額:2万9980円
このデータから、平均的な高齢単身世帯では、毎月約3万円が不足している計算になります。
多くの高齢者が年金収入を頼りに生活しているものの、それだけでは日々の支出をすべて賄うのが難しい場合が少なくないことがわかります。
さらに、この家計収支には、病気やけがによる医療費、介護サービスの費用、あるいは葬儀費用といった、予測しにくい突発的な出費は含まれていません。
これらの事情を考慮すると、生活保護を受けている世帯の半数以上が単身の高齢者であるという状況も、より深く理解できるのではないでしょうか。
4. 生活保護制度の中心「生活扶助」の支給額はいくら?
生活保護は、一律の金額が支給されるわけではなく、各世帯の収入や個別の事情に応じて必要な金額が計算される仕組みです。
この制度は、以下の8種類の扶助から成り立っています。
- 生活扶助:食費や衣類、光熱水費など、日常生活を送る上で必要な費用
- 住宅扶助:アパートなどの家賃。定められた上限額の範囲内で実費を支給
- 教育扶助:義務教育を受けるために必要な学用品代などの費用
- 医療扶助:医療サービスにかかる費用。医療機関に直接支払われるため、本人の窓口負担はなし
- 介護扶助:介護サービスにかかる費用。介護事業者に直接支払われるため、本人の自己負担はなし
- 出産扶助:出産にかかる費用。定められた範囲内で実費を支給
- 生業扶助:仕事に就くために必要な技能を習得するための費用など。定められた範囲内で実費などを支給
- 葬祭扶助:葬儀を行うための費用。定められた範囲内で実費を支給
これらの扶助の中でも、日々の暮らしの基盤となるのが「生活扶助」です。
生活扶助の金額は、住んでいる地域の物価水準や世帯の人数、年齢などによって変動します。
世帯構成:東京都区部等/地方郡部等
- 3人世帯(33歳、29歳、4歳): 16万4860円/14万5870円
- 高齢者単身世帯(68歳):7万7980円/6万6450円
- 高齢者夫婦世帯(68歳、65歳):12万2460円/10万8720円
- 母子世帯(30歳、4歳、2歳): 19万6220円/17万4800円
これらの生活扶助に加えて、家賃を補助する住宅扶助など、世帯の状況に応じて必要な扶助が加算されます。
以上のことから、生活保護の支給額は、住んでいる場所や世帯の状況によって異なり、それぞれの実情に合わせた最低生活費が保障されていることがわかります。
5. まとめ:高齢者の暮らしと生活保護制度の関わりを理解する
この記事では、生活保護を受けている世帯の構成、特に高齢単身世帯の家計の実態、そして生活保護制度の具体的な支給内容について解説しました。
生活保護を受けている世帯の内訳を確認すると、高齢者世帯が55.3%を占めており、その中でも単身の高齢者世帯が51.7%に達していることがわかります。
この背景には、高齢の単身世帯の家計が毎月約3万円の赤字に陥っている現状や、多くの世帯が公的年金を主な収入源として生活している実情があります。
生活保護は、このような厳しい状況にある人々の最低限の生活を保障するために設けられた制度です。
生活扶助を基本とし、住宅扶助や医療扶助など、複数の支援を組み合わせることで成り立っています。
この制度の実態を把握することは、自身の高齢期の生活設計や将来への備えを考える上で、一つの重要なきっかけとなるかもしれません。
※当記事は再編集記事です。


