「鳥貴族が来期から出店再開」と一部で報じられています。足元の全店売上高が対前年同月比でマイナス成長となる中、確かに出店の再開は成長に向け必要でしょう。ただし、2019年7月期のQ3(累計)は対前年同期比で販管費が大幅に増加(約+20億円)しており、利益回復には高いハードルが存在するという状況です。

鳥貴族は出店再開で巻き返しを図ることはできるのでしょうか。

今期は新規出店を凍結して既存店の底上げに注力

もともとは大阪の郊外中心に展開する焼き鳥チェーン店であった鳥貴族(3193)は、2014年7月にジャスダックに新規上場※。全品280円均一(2017年10月より298円均一、税別)の価格設定も話題となり一大ブームを巻き起こしました。

※2015年7月に東証2部に市場変更、2016年4月に東証1部に指定替え

しかしブームはいずれ去ります。鳥貴族もその例に漏れず、ブームの一巡に加えて2017年10月の値上げを契機に客離れによる不振に陥り、今期(2019年7月期)は新規出店を凍結し既存店の底上げに注力することに。

その結果、期初に対前年同月比で90%台前半だった客数は、5月以降100%に近い水準にまで回復。既存店の立て直しは一定の成果を得た状態となりました。

再成長には新規出店が必要不可欠

冒頭に記したように、一部報道で鳥貴族は来期(2020年7月期)から新規出店を再開すると伝えられています。出店再開は既存店の底上げに一定の成果が出たためと捉えることもできますが、別の見方をすることもできます。

月次で開示されている全店売上高(新規店+既存店)を見ると、2019年6月及び7月は対前年同月比で99.7%、97.7%とマイナス成長になりました。

新規出店を凍結していたとはいえ、それまでに出店した店舗の増収効果で今期も全店売上高の月次数字は常にプラス成長を維持していました。しかし6月・7月はマイナス成長に転じており、過去の新規出店による増収効果は剥落しています。

また、既存店の客数に改善傾向が見られるとはいえ、既存店売上高がプラス成長に転じるほどの回復ではありません。よって、出店を凍結したままではジリ貧となる可能性が高いでしょう。

参考:『鳥貴族の既存店売上高、今期は全ての月でマイナス成長に(2019年7月)

販管費の増加で利益回復へのハードルは高い