5.4 【要注意】繰上げ受給にも知っておくべきリスクが
一方で、早く受け取れる「繰上げ受給」にもいくつか注意点があります。最大の注意点は、一度繰上げをすると減額された年金額が一生涯続き、あとから変更や取り消しができない点です。
さらに、以下のような制約が生じることも知っておく必要があります。
原則セットで繰上げが必要
繰下げ受給は基礎年金と厚生年金を別々に選択できますが、繰上げ受給は原則として両方を同時に行わなければなりません。
障害基礎年金や寡婦年金が受け取れなくなる
繰上げ受給後に重い病気やケガをしても、原則として障害基礎年金を請求できなくなります。また、寡婦年金も受給できなくなります。
国民年金の任意加入や追納が不可に
60歳以降も保険料を納めて将来の年金額を増やす「任意加入」や、過去の未納分を納める「追納」ができなくなります。
繰上げ・繰下げのどちらを選ぶにしても、制度のメリット・デメリットを現役世代のうちから理解し、ご自身のライフプランに合った選択を事前にシミュレーションしておくことが、老後の安心につながります。
6. 年金はシニア世代だけのものではありません。現役世代から関心を持つことが大切です
「年金=老後のための資金」というイメージが強いかもしれませんが、それは年金制度の一側面にすぎません。
公的年金には、現役世代である私たちが病気やケガで重い障害を負ってしまったときに生活を支える「障害年金」や、一家の働き手が亡くなってしまったときに残された家族の暮らしを守る「遺族年金」という、現役世代の「万が一」をカバーする重要な保険機能も備わっています。
また、老後の備えを考える上で忘れてはならないのが、「提示される年金額はあくまで『額面』であり、実際にはそこから介護保険料や税金などが引かれ、手取り額は額面の85〜90%程度になる」という現実です。
将来の受給額への不安から年金制度を敬遠するのではなく、ご自身や家族の現在の生活、そして未来を守るための「おおきな保障」として関心を持つことが大切です。
ねんきん定期便などを活用してご自身の状況(額面ではなく手取りの目安)を把握し、健康なうちは長く働くことや、NISAを活用した資産形成など、今日からできる「生活防衛」を始めてみてはいかがでしょうか。
参考資料
著者
二種外務員資格(証券外務員二種)記者/編集者/校閲者/
ニ種外務員資格(証券外務員二種)・相続診断士・認知症介助士・終活ガイド資格1級保有。早稲田大学第一文学部史学科卒。学参系編集プロダクションなどで校閲・編集・執筆を経験。人文・社会系一般書籍、中学・高校社会科教材、就職試験問題の制作関連業務で15年以上の経験を持つ。
現在は株式会社モニクルリサーチが運営する『くらしとお金の経済メディア~LIMO(リーモ)~』において、金融系メディアの編集者兼執筆者として、コンテンツ制作や編集を担当。
総務省「家計調査」・厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況」・J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査」などの一次資料に基づくデータ記事の執筆に強み。紙媒体での経験に加え、家族の介護を通じて得た知見を生かしながら、「お金とくらし」にまつわる情報を丁寧に発信している。(2026年2月12日更新)
監修者
LIMO編集部年金解説班は株式会社モニクルリサーチが運営する『くらしとお金の経済メディア ~LIMO(リーモ)~』において、地方自治体の公務員や生命保険会社等の金融機関にて勤務経験が豊富な編集者が中心となり、厚生労働省や官公庁の公開情報等をもとに公的年金(厚生年金保険と国民年金)、年金制度の仕組み、社会保障制度などをテーマに、丁寧で読者にとってわかりやすい記事の情報発信を行っています。
LIMO編集部年金解説班に所属する編集者は日本生命保険相互会社出身の村岸理美、地方自治体職員出身の太田彩子、株式会社三菱UFJ銀行と三井住友信託銀行株式会社出身の和田直子、株式会社三菱UFJ銀行出身の中本智恵、野村證券株式会社出身の宮野茉莉子、SMBC日興証券株式会社出身の安達さやか等のファイナンシャルアドバイザー経験者等で構成されており、表彰歴多数の編集者も複数在籍しており、豊富な金融知識をもとにした記事に定評があります。
CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級)、一種外務員資格(証券外務員一種)などの資格保有者も多数在籍。生保関連業務経験者は過去に保険募集人資格を保有。(最新更新日:2026年6月17日)