キャリアアップを目指して資格取得に励んだり、より良い待遇を求めて転職を考えたりと、目標年収に向かって努力することは、働くモチベーションを維持する上でとても大切なことです。
実際、50代を迎えて「これまでの頑張りが実を結び、目標としていた年収700万円にいよいよ到達しそうだ」というビジネスパーソンも少なくありません。ただ、額面の数字が上がる嬉しさを感じる一方で、気になるのが税金や社会保険料による「天引き」の存在です。
しかし現実には、額面の収入がアップしても、それに伴って税金や社会保険料の負担も重くなるため、実際に使える手取り額は思ったほど増えないというケースも多々あります。
本記事では、国税庁が発表した「令和6年分 民間給与実態統計調査」のデータから現代日本の給与傾向を紐解き、年収700万円の場合における手取り額の実態を、独身世帯と扶養家族のいる世帯の2パターンで詳しくシミュレーションしていきます。
1. わが国の平均給与は477万5000円に!近年の推移でも際立つ伸び幅
国税庁が公表した「令和6年分 民間給与実態統計調査」のデータによると、2024年(令和6年)における日本の給与所得者の平均年収は477万5000円という結果でした。前年の459万5000円と比較すると3.9%増加しており、ここ数年の推移のなかでも際立って高い上昇を記録しています。
過去6年間における平均給与の推移は以下の通りです。
- 令和元年:438万4000円(前年比 ▲0.2%)
- 令和2年:435万1000円(前年比 ▲0.8%)
- 令和3年:445万7000円(前年比 +2.4%)
- 令和4年:457万6000円(前年比 +2.7%)
- 令和5年:459万5000円(前年比 +0.4%)
- 令和6年:477万5000円(前年比 +3.9%)
社会的に大きな影響のあった令和2年(2020年)には一時的な減少が見られたものの、翌年以降は順調な回復傾向を維持しています。
特に令和6年に見られた3.9%という高い伸び率は、各企業における賃金引き上げの動きが日本全体に浸透してきた表れであると考えられます。
2. 平均値は478万円だが…ボリュームゾーンは年収300万〜400万円台。給与階級別の分布
「平均が478万円」という数字を目にすると、自身の給与と比較して「自分はそこまで届いていない」と違和感を覚える方も少なくないはずです。実際のところ、全体の分布を確認すると、平均値よりも低い層に多くの人が集まっていることが分かります。
1年を通して働いた給与所得者5137万人の中で、最も高い割合を占めているのは年収300万円超400万円以下の層で826万人(16.1%)にのぼります。それに次ぐのが、年収400万円超500万円以下の787万人(15.3%)です。
年収700万円超の人は全体の17.3%です。
男女別で見ると、男性が25.9%と女性(5.3%)の5倍となっています。
3. 50歳、目標の「年収700万円」に手が届きそう!「手取り額」はどれくらいになりそうか?
「年収700万円になったら手取りはいくら増えるの?」と気になっている方のために、標準的な条件でシミュレーションしてみました。
3.1 シミュレーションの前提条件
- 給与収入のみ(副業・不動産収入等なし)
- 社会保険:協会けんぽ加入(40歳以上65歳未満)
- 控除:給与所得控除・基礎控除・社会保険料控除のみ適用(医療費控除・生命保険料控除等は含まず)
- 住民税は当年収入をもとに計算(実際は翌年6月から徴収)
- ケース①:独身・単身世帯
- ケース②:配偶者あり・子ども2人
3.2 シミュレーション結果
3.3 ケース①:独身・単身世帯の場合
- 年収(額面):700万円 → 手取り:522万4995円(月額換算:43万5416円)
- 健康保険料:34万9300円
- 介護保険料:5万6000円
- 厚生年金保険料:64万500円
- 雇用保険料:42000円
- 子ども子育て支援金:12600円
- 社会保険料合計:110万400円
- 所得税(復興特別所得税込):30万2645円
- 住民税:37万1960円
3.4 ケース②:配偶者あり・扶養1人の場合
- 年収(額面):700万円 → 手取り:547万3020円(月額換算:45万6085円)
- 健康保険料:34万9300円
- 介護保険料:5万6000円
- 厚生年金保険料:64万500円
- 雇用保険料:42000円
- 子ども子育て支援金:12600円
- 社会保険料合計:110万400円
- 所得税(復興特別所得税込):15万3620円
- 住民税:27万2960円
※社会保険料は全国健康保険協会(協会けんぽ)東京支部 令和8年度保険料額表をもとに計算しています。子ども子育て支援金は令和8年4月から徴収が開始された新たな負担項目です。加入する健康保険組合や都道府県によって保険料率が異なるため、実際の金額とは差が生じる場合があります。
※住民税は、実際には前年の収入をもとに計算され、翌年6月から1年かけて天引きされます。転職や退職の際には注意が必要です。
※シミュレーションはあくまで目安です。実際の手取り額は、各種控除の適用状況や加入する健康保険組合によって異なります。
扶養控除の適用により、単身世帯と比べて年間24万8025円手取りが多くなっています。ただし、配偶者の収入状況によって適用される控除額は変わります。
4. まとめ
年収700万円を達成したとしても、住民税や所得税、社会保険料の合計で約177万円もの金額が差し引かれることになります。
結果として、実際に手元に残る金額は額面の75%程度にとどまるのが厳しい現実です。
「苦労して給与を上げても、引かれるお金が多くて実感が湧かない」という方は、国が用意している税制上の優遇措置を上手にとり入れ、手取り額を底上げするアプローチを検討してみましょう。
- iDeCo(個人型確定拠出年金):拠出する掛け金の全額が所得控除の対象となり、所得税や住民税の負担を軽減できます。ただし、原則として60歳に達するまで資金を引き出すことができない長期的な運用となるため、事前に制度の仕組みを十分に理解しておくことが大切です。
- ふるさと納税:自治体への寄附額のうち、2000円を超える部分が所得税や住民税から差し引かれます。さらに、地域の特産品などの返礼品を受け取ることができる点も魅力的なメリットです。
- NISA:投資によって得られた分配金や売却益が非課税になる利点があります。つみたて投資枠などを利用した長期・分散投資は、効率的な資産形成の手法として、収入アップを補完する役割が期待されています。
額面を増やす努力に加え、賢い節税や資産運用を並行して行うことが、実質的な手取りを増やすための効果的な方法です。ご自身のライフプランに合わせた最適な手段を見つけてみてください。


