会社が儲かった時に配当を増やしても、株主は個人消費を増やすのではなく、別の株を買うために資金を投じるでしょうが、従業員の給料が増えれば、彼らは個人消費を増やすでしょうから、その方が景気に良いことは明らかでしょう。

経営者が必死に従業員の雇用を守るという制度も、景気にとってプラスです。そうでないと、不況期に失業が増えて、失業者が物を買わなくなり、個人消費が落ち込んで不況が深刻化してしまうからです。

メインバンク制度によって、不況期に銀行が借り手を見守るということは、倒産が減るということですから、これも景気には大いにプラスですね。不況期に倒産が増えると失業が増えて個人消費が減って、不況が一層深刻化しかねませんから。

従業員としては、終身雇用が保証されていれば、しかも勤務先が倒産する可能性がメインバンク制度によって低下していれば、安心して住宅ローンを借りて家を建てることができますから、住宅投資が活発化し、日本人の住宅事情も改善して行くでしょう。

米国人ならば、終身雇用でなくとも「何とかなるさ」と考えて住宅ローンを借りて家を建てるかもしれませんが、日本人だと心理的な抵抗が大きそうですから。

下請け制度も、継続的な受注が見込まれることによって下請け企業の設備投資を促進する効果がありますから、短期的な景気にも中長期的な経済成長にもプラスでしょう。

部品メーカーとしては、「今回は運良く受注できたが、次回もできるとは限らない」ということだと安心して設備機械を導入することができず、手作業で部品を作らざるを得ないわけで、それは発注する大企業にとっても嬉しいことではありませんね。

本稿は以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。

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塚崎 公義