5. 現役IFAが答える「貯蓄1000万円以上でもこのままで足りる?」―資産形成に迷うという悩みへの解決策

年収だけでなく、どのように貯めるかも重要ですが、筆者はIFAとして日ごろ相談を受けているなかでは、現役世代の方で「貯蓄があっても今後の資産形成が不安」というご相談をうけることがあります。

5.1 40歳代おひとりさまでよくご相談される「貯蓄1000万円あるが、本当はもっと効率的に運用できるのでは?」という悩み

40歳代のおひとりさまの中には、貯蓄が1000万円台に達しても、将来の資産形成に漠然とした不安を抱えるという方も多いです。実際に、次のような声を耳にします。

おひとりさま(ご相談者)
預貯金は1000万円台に届きましたが、給与の大きなアップは期待しづらく、今のままで老後資金が足りるのか不安です。いくつか資産形成に取り組んできたものの、それぞれの内容や全体像を正確に把握しきれていません。まとまった資金を、もっと効率的に運用できないかと考えています。

ある程度の資産があるからこそ、それをどう守り、どう活かすべきか迷う。ファイナンシャルアドバイザーの立場からみると、この不安は「資産が足りないこと」そのものよりも、「全体像をつかめていないこと」から大きくなりがちです。裏を返せば、いま加入している金融商品を整理するだけでも、次の一歩は見えやすくなります。

5.2 貯蓄1000万円を「守り、育てる」ための3つの解決策を現役IFAがアドバイス

新しい投資を急ぐ前に、まずは足元を整えることが、遠回りのようで近道になります。押さえておきたい整理の順番を、3つにまとめます。

一つ目は、「すでに加入している金融商品の現状把握」です。たとえば長く続けている保険の中には、いまのライフスタイルに合っていなかったり、元本割れのリスクを抱えていたりするものもあります。払い込みが終わってそのままになっている資金が見つかることも少なくありません。まずは契約内容を正しく把握し、目的に合わない保険料を抑えることが、新たな運用に回す資金を生み出す第一歩になります。

二つ目は、「手元のまとまった資金の置き場所を分ける」ことです。当面使う予定のない数百万円規模の預貯金を、ただ眠らせておくのはもったいないもの。万一に備える生活防衛資金と、将来に向けて運用に回す資金をきちんと分け、目的や許容できるリスクに応じて置き場所を考えていきます。

三つ目は、「複数の制度や手法を組み合わせる」ことです。非課税制度や目的に応じた金融商品には、それぞれ異なるメリットがあります。一つの手法に資金を集中させるのではなく、ご自身の状況に合わせて無理なく分散させることが、長期の資産形成では大切です。

ただし、こうした制度で運用する資金は、元本割れの可能性があることと、当面の生活資金とは分けて考えることを忘れないようにしたいところです。漠然とした不安を感じたときこそ、保険の確認・資金の仕分け・手法の組み合わせを、一つずつ整理してみてはいかがでしょうか。

6. まとめにかえて

宮野 茉莉子(監修)
証券会社で個人のお客さまの資産運用のお手伝いをしてきて感じるのは、ある程度の資産を築いた方ほど、「増やす前に、整える」ことが大切だということです。貯蓄が1000万円を超えると、安心と同時に「このままでいいのか」という迷いも生まれます。「まとまったお金があるのに、どう動かせばいいかわからない」——そんな声を、私も何度も耳にしてきました。裏を返せば、それは選べる手立てが増えた証でもあります。監修者としてお伝えしたいのは、新しい投資に飛びつく前に、いま加入している商品の中身を一度棚卸しすることです。目的に合わない保障や、眠ったままのお金が見つかることは少なくありません。そのうえで、当面の生活を守るお金と、将来のために育てるお金を分け、非課税制度なども無理のない範囲で組み合わせていく。派手さはなくても、この地道な整理が、資産を長く守り育てる土台になります。年収や貯蓄額の数字だけにとらわれず、ご自身の目的に立ち返って、一つずつ整えていっていただけたらと思います。

参考資料

奥田 朝