この記事の読みどころ

貴金属投資の主役は金とプラチナです。宝飾品として人気が高いプラチナは、希少性価値が高く、幅広い産業向け用途を持つことが特徴です。

プラチナ価格はリーマンショック前に史上最高値を記録しましたが、その後は低迷が続いています。昨今は金価格よりも安いという“逆転現象”が定着しつつあります。

プラチナ相場は市場規模が小さいため、ボラティリティが高くなっています。投資するならば、宝飾品程度にするのが無難でしょう。

貴金属投資の主役は金とプラチナ

バブル経済が崩壊した前後から、証券市場では様々な金融商品が一気に増え、証券投資の選択肢が大幅に増えました。しかし、高いリターンを得るチャンスが増加した一方で、リスクも大幅に増えたのです。そして、増大したリスクを、証券投資以外でヘッジしようとする動きが盛んになり(オルタナティブ投資)、2000年代前半から徐々に主流となってきたのが貴金属投資です。

貴金属投資は、リーマンショック前に人気がピークに達しました。リーマンショック発生後に一度崩壊しましたが、その後も一定のプレゼンスを保っています。その貴金属投資の主役は、金(ゴールド)とプラチナです。今回は、プラチナについて説明します。

プラチナは希少性価値の高い貴金属

プラチナの正式な学術名称は「白金」ですが、現在はプラチナで統一されているようです。プラチナという貴金属の特徴は、1)宝飾品として人気が高い、2)希少性価値が高い、3)産業向け用途が幅広い、などです。

プラチナは、今も昔も人気が高い貴金属の1つですが、希少価値が非常に高いことが理由に挙げられましょう。簡単に言うと、世界であまり採掘されない貴金属であり、その採掘規模(市場規模)は金の約30分の1程度しかありません。金も希少価値が高い貴金属ですが、それをはるかに上回る希少性があるのです。

ちなみに、人気が高くて入手困難なチケットを「プラチナチケット」と呼びますが、それはプラチナという貴金属の希少性に由来しています。先日、3月26日に開業する北海道新幹線の一番列車の指定席券がわずか25秒で売り切れましたが、正しく“プラチナチケット”と言えます。

産業向け用途では排ガス浄化用の触媒として需要が急増

2000年代に入ると、産業向け用途として一気に注目度が高まりました。その中でも、触媒としての利用価値に注目が集まり、特に、自動車の排気ガス浄化用としての需要が急増しました。

従前より、クルマから排出される様々な物質への対応は大きな課題となっていましたが、欧州を中心に地球環境問題への議論が高まる中、プラチナの触媒としての高い活性度は、現在でも必要不可欠になっています。

現在のプラチナ価格はピークから6割以上も下落

さて、プラチナ価格の推移を見てみましょう。1981年~2002年までの20年間以上にわたり、プラチナは概ね350~550ドル(1トロイオンス当たり、以下同)で推移していました。それが2003年から急騰し始め、2008年3月には2,273ドルの最高値を記録したのです。

リーマンショック後は暴落したものの、その後2011年8月には1,900ドルに迫る水準まで回復しています。しかしながら、最近は価格低迷が著しく、2016年1月は800ドル強まで下落しました。これは、リーマンショック直後の暴落時をわずかに上回る程度の水準であり、プラチナ相場の不振を物語っていると言えましょう。

出所:ドル建て価格はLBMA(The London Bullion Market Association)のPM終値の月中平均値。

円建て価格は三菱マテリアルが公表する小売価格(月中平均)から、筆者が消費税抜きベースに再計算。

プラチナと金の価格対比で起き始めた“逆転現象”

プラチナ価格を見る上で重要なことの1つに、金との価格対比があります。両者の価格は拮抗した時期もありましたが、長年にわたってプラチナ価格の方が高い状況にありました。特に、2000年代に入って以降は大きな差がついたことがわかります。

しかし、2011年後半頃から、金がプラチナを上回るという“逆転現象”が出始めました。特に最近は、この“逆転現象”が顕著であり、現在は金の方が約300ドルも高い水準にあります。おそらく、歴史上初と言っていいのではないでしょうか。

出所:金、プラチナともLBMA(The London Bullion Market Association)のPM終値の月中平均値。

この価格乖離はなぜ生じたのでしょうか? 金価格が高過ぎるのでしょうか、それとも、プラチナ価格が安過ぎるのでしょうか。

プラチナには「通貨」としての役割がない

実は、同じ貴金属である金とプラチナには決定的な違いがあります。それは、プラチナには「通貨」としての役割が全くないことです。

今でも実質的な「通貨」の位置付けを持つ金とは異なり、プラチナは純粋な投資資産でしかありません。現在の金価格には、米ドル安が大きく影響していると考えられますから、金とプラチナを単純比較するのはナンセンスとも言えましょう。

ボラティリティの高いプラチナ投資は“宝飾品”程度が無難

それを踏まえてプラチナ相場を見ると、現在の価格が安過ぎるというよりも、それまでが高過ぎたと言えるかもしれません。結果論になりますが、今振り返って見ると、急ピッチな価格上昇だった印象は残ります。

そうは言っても、プラチナが魅力的な貴金属であることに変わりはなく、現在の下落局面で投資を考えている人がいても不思議ではありません。ただ、希少性が高いために市場規模が小さく、価格変動が激しいことが特徴です。

安易な気持ちで投資すると、大火傷する可能性がありますからご注意を。どうしても投資するならば、ネックレスやイアリングなどの“宝飾品”に止めた方が無難でしょう。

【2016年3月2日 投信1編集部】

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LIMO編集部