2026年8月5日、政府は「給付付き税額控除」の制度導入の基本方針を閣議決定しました。令和9年4月から2年間、軽減税率の対象となる飲食料品に係る消費税率を1%に引き下げるとともに、所得情報を活用した給付を組み合わせることで、飲食料品の消費税を実質的にゼロ化する方針です。
こうした新たな給付の枠組みが検討される一方、すでに存在する公的な給付制度についても、あらためて知っておきたいという方は多いのではないでしょうか。特にシニア世帯や高齢期を迎えた方にとっては、生活を支える給付にどのようなものがあるのか気になるところです。
本記事では、シニア世帯や働く高齢者が対象となる代表的な公的給付制度を整理し、制度のポイントをわかりやすく紹介します。該当する可能性がある制度を確認していきましょう。
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なお、加給年金や年金生活者支援給付金、雇用保険の給付制度に関する詳しい解説は下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
1. この記事を読むとわかる3つのポイント
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年金に上乗せされる「加給年金」「老齢年金生活者支援給付金」は申請しないと受け取れない -
働くシニア向けには「再就職手当」「高年齢雇用継続給付」「高年齢求職者給付金」の3制度がある -
加給年金は、条件を満たす期間の総額でみるとまとまった金額になる
2. 申請しなければ受け取れないシニア向けの公的給付とは
老齢年金や障害年金、遺族年金といった公的年金は、生活を支える重要な制度です。
ただし、受給資格を満たしただけでは支給されず、年金を受け取るためには「年金請求書」を提出し、所定の手続きを行う必要があります。
また、国や自治体が実施する給付金や手当、補助金の多くも、申請をしなければ受け取ることはできません。
期限までに手続きを行わなかったり、必要書類に不備があったりすると、本来受け取れる給付金が支給されない場合もあります。
利用できる制度を確実に活用するためには、自分が対象となる制度を把握し、忘れずに申請することが大切です。
3. 老齢年金に上乗せされる可能性がある2つの給付制度とは
一定の条件を満たす老齢年金受給者は、老齢年金に加えて受け取れる制度があります。
ここでは代表的な2つの制度を紹介します。
3.1 加給年金
加給年金は、老齢厚生年金を受給している人に支給される「年金の家族手当」とも呼ばれる制度です。
一定の条件を満たし、年下の配偶者や子どもを扶養している場合に、老齢厚生年金へ加算されます。
加給年金《支給要件》
- 厚生年金加入期間が20年(※)以上ある人:65歳到達時点(または定額部分支給開始年齢に到達した時点)
- 65歳到達後(もしくは定額部分支給開始年齢に到達した後)に被保険者期間が20年(※)以上となった人:在職定時改定時、退職改定時(または70歳到達時)
(※)または、共済組合等の加入期間を除いた厚生年金の被保険者期間が40歳(女性と坑内員・船員は35歳)以降15年から19年
上記の時点で、65歳未満の配偶者、または18歳到達年度末までの子(もしくは1級・2級の障害がある20歳未満の子)がいる場合に支給されます。
なお、配偶者が一定の老齢厚生年金や退職共済年金を受給できる場合、または障害年金を受給している場合は、配偶者加給年金額は支給停止となります。
加給年金《2026年度の年金額》
「加給年金」の年金額(2026年度の年額)は以下のとおりです。
- 配偶者:24万3800円
- 1人目・2人目の子:各24万3800円
- 3人目以降の子:各8万1300円
なお、老齢厚生年金を受給中の人の生年月日により、配偶者の加給年金額に特別加算額が支払われます。
また、加給年金は対象となる配偶者が65歳になると支給は終わりますが、その配偶者が老齢基礎年金を受け取る場合、一定の要件を満たせば振替加算が支給されます。
3.2 老齢年金生活者支援給付金
年金生活者支援給付金は、基礎年金を受給している人のうち、一定の所得要件を満たす人に支給される制度です。
年金生活者支援給付金には老齢・障害・遺族の3種類がありますが、ここでは老齢年金生活者支援給付金を紹介します。
老齢年金生活者支援給付金の支給要件
- 65歳以上の老齢基礎年金の受給者
- 同一世帯の全員が市町村民税非課税
- 前年の公的年金等の収入金額(※1)とその他の所得との合計額が昭和31年4月2日以後生まれの方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前生まれの方は80万6700円以下(※2)である
※1 障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれない
※2 昭和31年4月2日以後に生まれた方で80万9000円を超え90万9000円以下である方、昭和31年4月1日以前に生まれた方で80万6700円を超え90万6700円以下である方には、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給される
住民税非課税世帯に該当する場合に受けられるその他の優遇措置についてはこちらの記事でくわしく解説しています。あわせてご参考ください。
「住民税非課税世帯」を対象とした「優遇措置」8選 《年金・給与》年収いくらで該当するのか境界線も見ておこう 年金155万・給与110万が分かれ目?
老齢年金生活者支援給付金の給付基準額
2026年度の給付基準額は月額5620円で、前年度から3.2%引き上げられました。
実際の支給額は、この基準額をもとに保険料の納付済期間や免除期間などを反映して計算されます。
計算式は次のとおりです。
老齢年金生活者支援給付金の給付額の計算式
- ①保険料納付済期間に基づく額(月額) = 5620円 × 保険料納付済期間 / 被保険者月数480月
- ②保険料免除期間に基づく額(月額) = 1万1551円× 保険料免除期間 / 被保険者月数480月
たとえば、国民年金保険料を40年間すべて納付した場合、2026年度は月額5620円、年額6万7440円が支給されます(昭和16年4月1日以前生まれの方は計算方法が異なります)。
なお、保険料免除期間に用いる金額は、老齢基礎年金額の改定にあわせて毎年度見直されます。
4. 働くシニアが利用できる3つの雇用保険の給付制度とは
シニア世代が働き続ける際や再就職する際には、雇用保険による給付制度を利用できる場合があります。
一般的に60歳以降は収入が下がる傾向(※)があり、再就職や就労継続が思うように進まないケースも少なくありません。
ここでは、シニアが知っておきたい雇用保険の給付制度を3つ紹介します。
※国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」による年齢階層別の平均給与:50歳代後半男性735万円、女性356万円、60歳代前半男性604万円・女性294万円、60歳代後半男性472万円・女性240万円
4.1 65歳未満がもらえる「再就職手当」
再就職手当は、失業後に早く再就職したり事業を始めたりした人を支援するための制度です。
再就職までの期間が短く、基本手当の支給日数を多く残した状態で再就職した場合ほど、受け取れる金額が大きくなります。
再就職手当【支給要件】
- 対象者:雇用保険受給資格者で基本手当の受給資格がある人
- 支給要件:対象者が雇用保険の被保険者となる、または事業主となって雇用保険の被保険者を雇用する場合で、基本手当の支給残日数(就職日の前日までの失業の認定を受けた後の残りの日数)が所定給付日数の3分の1以上あり、一定の要件に該当する場合に支給
再就職手当【給付率】
- 手当の額:就職等をする前日までの失業認定を受けた後の基本手当の支給残日数により下記のとおり給付率が異なります。(1円未満の端数は切り捨て)
- 所定給付日数の3分の1以上の支給日数を残して就職した場合は「支給残日数の60%」
- 所定給付日数の3分の2以上の支給日数を残して就職した場合は「支給残日数の70%」
なお、再就職手当を受給した後、再就職先で6カ月以上勤務し、その6カ月間の賃金が離職前より少ない場合は、「就業促進定着手当」の対象となる場合があります。
4.2 60歳以上65歳未満が対象「高年齢雇用継続給付」
高年齢雇用継続給付は、60歳以降も働き続ける人のうち、60歳時点と比べて賃金が減少した場合に支給される制度です。
高年齢雇用継続給付【支給要件】
- 対象者:雇用保険の被保険者期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の雇用保険の被保険者
- 支給条件:賃金が60歳時到達時の75%未満となった状態で働き続ける場合
高年齢雇用継続給付【支給率】
- 支給額:最高で賃金額の10%(※)相当額
※2025年3月31日以前に高年齢雇用継続給付の支給要件を満たす人は15%
なお、老齢年金を受給しながら厚生年金に加入し、高年齢雇用継続給付を受給する場合は、在職による年金支給停止に加え、最大で標準報酬月額の4%(※)相当額が支給停止となります。
※2025年3月31日以前に高年齢雇用継続給付の支給要件を満たす人は6%
4.3 65歳以上が対象「高年齢求職者給付金」
高年齢求職者給付金は、65歳以上で離職した人を対象とした給付金です。
高年齢求職者給付金【支給要件】
- 対象者:高年齢被保険者(65歳以上の雇用保険加入者)で失業した人
- 支給要件:下記の全ての要件を満たした人
- 離職の日以前1年間に被保険者期間が通算して6カ月以上ある
- 失業の状態にある:離職し「就職したいという積極的な意思といつでも就職できる能力(健康状態・家庭環境など)があり積極的に求職活動を行っているにもかかわらず就職できない状態」を指す
高年齢求職者給付金【いくらもらえる?】給付金額
- 支給額
- 被保険者であった期間が1年未満:30日分の基本手当相当額
- 被保険者であった期間が1年以上:50日分の基本手当相当額
65歳未満の失業手当が4週間ごとの失業認定を経て支給されるのに対し、高年齢求職者給付金は一時金としてまとめて支給されます。
5. 【シミュレーション】加給年金は総額いくら受け取れる?
加給年金は「配偶者が65歳になるまで」という期間限定の制度です。ここでは、65歳の夫に3歳年下(62歳)の妻がいるケースを例に、加給年金の総額を試算してみます。
このケースでは、夫が65歳から老齢厚生年金を受け取り始めると同時に加給年金の対象となり、妻が65歳になるまでの3年間、加給年金が支給されます(特別加算額は考慮せず、基本額のみで試算)。
- 加給年金額(年額):24万3800円
- 支給期間:3年間(妻が62歳から65歳になるまで)
- 受け取れる総額:24万3800円×3年=約73万1400円
年下の配偶者がいる年数が長いほど、この総額は大きくなります。たとえば妻が5歳年下であれば支給期間は5年間となり、総額は約121万9000円まで増える計算です。
ただし、加給年金は配偶者自身が老齢厚生年金(厚生年金の加入期間が20年以上など一定の要件を満たす場合)を受け取れるようになると、その時点で支給停止となります。配偶者が会社員・公務員として長く働いてきた場合は、加給年金の対象にならない、または想定より早く支給が終わるケースもあるため、事前に配偶者自身の年金加入状況もあわせて確認しておくことをおすすめします。







