退職後の暮らしを想像する際、「自分の年金は結局いくらもらえるのか?」「今の備えで本当に足りるのだろうか?」と、ふと不安になることはありませんか?

筆者自身、金融メディアの編集者として日々さまざまな一次データと向き合い、また家族の介護に携わるなかで、こうした「お金とくらし」に対する切実な声に数多く触れてきました。

今年の年金額については、2026年1月23日に厚生労働省より「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」が公表され、国民年金(基礎年金)が前年度比1.9%、厚生年金(報酬比例部分)が同2.0%引き上げられることが決まりました。

年金が増額されるのは嬉しいニュースですが、私たちの生活を振り返ると物価の上昇も続いており、「本当に年金だけで暮らしていけるのかな」と心配になる方もいらっしゃると思います。

実際、2026年2月総務省から公表された「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」を見ても、シニア世帯の多くが毎月の家計に赤字を抱え、貯蓄を取り崩しながら生活しているリアルな実態が浮かび上がってきます。

そこで本記事では、「平均年収600万円」で「40年間」会社員として勤務した場合をモデルに、将来受け取れる厚生年金の目安を具体的に計算していきます。あわせて、最新の家計調査データをもとにリタイア後のリアルな生活収支についても優しく紐解いていきます。

ご自身の状況と照らし合わせながら、無理のない「早めの備え」に向けた第一歩として、ぜひ一緒に確認していきましょう。

1. 日本の給与所得者の平均年収はどのくらい?

国税庁の「令和6年分 民間給与実態統計調査」によると、1年間を通じて勤務した給与所得者の平均給与は478万円でした。

全体平均は400万円台後半となっていますが、この数字だけでは見えてこない「年代や男女による収入の大きな違い」があります。

1.1 年齢別・男女別に見る「平均年収の推移」とシビアな現実

国税庁の同調査から、年代ごとの平均年収の推移を具体的に見ていきましょう。

全体で見ると、20歳代前半(20〜24歳)の平均年収は約277万円からスタートし、年齢とともに順調に伸びていきます。

そして、55〜59歳でピークの約571万円に達します。その後は徐々に低下し、60〜64歳では約473万円と、リタイアを視野に入れる時期から収入が大きく下がる傾向にあります。

ここで見過ごせないのが「男女別の大きな差」です。 全体の平均給与478万円の内訳を見ると、男性の平均は「587万円」であるのに対し、女性の平均は「333万円」にとどまります。

とくに40歳代から50歳代の働き盛り世代では、その差がさらに顕著になります。

たとえば、40歳代前半(40〜44歳)では、男性の平均が約629万円であるのに対し、女性は約359万円と、すでに約270万円もの差が開いています。

さらにピークとなる55〜59歳では、男性が約734万円に達する一方で、女性は約356万円にとどまり、その差はじつに370万円以上にも及びます。

女性の場合、結婚や出産、育児、介護などによる働き方の変化(非正規雇用への転換など)が、この年代の大きな収入差に影響していると考えられます。

私たちがよく耳にする「平均年収478万円」という数字は、こうした年代別・男女別の違いをすべて含めた全体の平均値なのです。

1.2 働き盛り世代のリアル「平均年収600万円」で年金はいくら?

将来受け取る年金額は、現役時代の年収や加入期間によって大きく変わります。

先ほどのデータからもわかるように、「年収600万円」という水準は、男性の40歳代から50歳代にかけての代表的な給与額(約629万円〜約708万円)に近く、多くの方にとってリアルに想像しやすい数字ではないでしょうか。

「自分がこのまま働き続けたら、将来もらえる年金はどれくらいになるのだろう?」と気になる方も多いはずです。

そこで次章以降では、「平均年収600万円」で「40年間」会社員として働いた場合をモデルに、老後に受け取れる年金額の目安を具体的に試算していきます。

2. 厚生年金と国民年金を受け取れるのはどんな人?

「平均年収600万円」で40年間働いた場合の厚生年金額を試算する前に、公的年金制度の仕組みを確認しておきましょう。

日本の公的年金は、国民年金と厚生年金からなる2階建ての制度です。

1階部分が国民年金(基礎年金)、2階部分が厚生年金となっています。

国民年金には、日本国内に住む20歳以上60歳未満の人が加入し、加入者は次の3種類に区分されます。

国民年金と厚生年金の2階建て構造2/5

国民年金と厚生年金の2階建て構造

出所:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」

  • 第1号被保険者:自営業、学生、無職など
  • 第2号被保険者:会社員、公務員
  • 第3号被保険者:第2号被保険者に扶養されている配偶者

厚生年金を受け取れるのは、第2号被保険者として勤務していた会社員や公務員です。

ここからは、平均年収600万円で40年間働いた場合の年金額を具体的に見ていきます。

3. 働き盛り世代のリアル「平均年収600万円」で年金はいくら?

今回は、生涯の平均年収を600万円、民間企業で40年間勤務したケースを想定します。

第2号被保険者として働いていた場合、老後には国民年金と厚生年金の両方を受給できます。

そのため、次の2つをそれぞれ計算します。

  1. 国民年金として受け取れる額
  2. 厚生年金として受け取れる額

まずは国民年金から見ていきましょう。

3.1 ステップ1:国民年金の受給額

国民年金は、次の計算式で算出されます。

84万7296円 ×(保険料納付済み月数 ÷ 加入可能年数(12か月換算))

※2026年度(令和8年度)の金額。昭和31年4月2日以後生まれの方が対象

40年間すべて保険料を納付した場合は480カ月となるため、国民年金は満額の年額84万7296円となります。

続いて、厚生年金を計算します。

3.2 ステップ2:厚生年金の受給額

厚生年金は、次の計算式で求められます。

  • 年金額=報酬比例部分(※)+経過的加算+加給年金額
    ※報酬比例部分の内訳

「厚生年金の受給額」を試算4/5

「厚生年金の受給額」を試算

出所:日本年金機構「は行 報酬比例部分」

報酬比例部分は、以下の2つで構成されています。

報酬比例部分=A+B

  • A(2003年3月までの加入期間):平均標準報酬月額×7.125/1000×同期間の加入月数
  • B(2003年4月以降の加入期間):平均標準報酬額×5.481/1000×同期間の加入月数

今回の試算では、厚生年金額の中心となる報酬比例部分のみを対象とし、経過的加算と加給年金額は含めていません。

経過的加算は制度改正による差を調整するための仕組みで、加給年金額は一定の条件を満たす配偶者や子どもがいる場合に支給されるものです。

今回は2003年4月以降に40年間加入したケースを想定しているため、報酬比例部分のうちBの計算式を用います。

平均年収600万円であれば、平均標準報酬額は月額50万円となります。

この条件で「50万円×5.481/1000×480カ月」を計算すると、厚生年金の報酬比例部分は年額131万5440円です。

さらに、ステップ1で算出した国民年金の年額84万7296円を加えると、受給額は合計216万2736円となります。

これを12カ月で割ると月額は18万228円となるため、このケースでは会社員1人が受け取る年金額は、およそ月18万円となります。

4. 【注意】年金からも「税金・社会保険料」が天引きされている

前章で老後の年金額(平均年収600万円のモデルケース)を計算しましたが、実はその金額が全額振り込まれるわけではありません。

現役時代の給与と同じように、年金からも「税金」や「社会保険料」が天引きされるため、実際の手取り額は額面よりも少なくなります。

具体的なイメージをつかむため、総務省の最新データから「65歳以上・単身無職世帯」の平均的な家計収支を見てみましょう。

65歳以上の単身無職世帯における家計収支5/5

65歳以上の単身無職世帯における家計収支

出所:総務省「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」

65歳以上 単身無職世帯の家計収支(2025年)

  • 実収入(主に社会保障給付など): 13万1456円
  • 非消費支出(税金・社会保険料など): 1万2990円
  • 可処分所得(手取り収入): 11万8465円
  • 消費支出(生活費): 14万8445円
  • 毎月の赤字額(差額分): 2万9980円

このように、約13.1万円の収入から税金等で約1.3万円が引かれ、手取りは約11.8万円に目減りします。

さらに、毎月の生活費に約14.8万円がかかるため、月に約3万円の赤字が発生しているのが平均的な実態です。

前章で試算した「月額約18万円」のケースでも、仮に10〜15%が引かれると想定すると、実際の手取りは「15万〜16万円前後」に落ち着く可能性が高い点には注意が必要です。

5. まとめにかえて

夏のボーナスが支給されたり、1年の折り返し地点を過ぎたりした今の時期は、ご自身の長期的なマネープランを見直すのに最適なタイミングです。

今回は「平均年収600万円で40年勤務」というモデルで試算しましたが、実際の年金受給額は一人ひとりの働き方や収入によって大きく異なります。また、家計調査のデータが示す通り、多くの場合、年金の手取り額だけでは生活費を賄えず、貯蓄を取り崩すことになるのが現実です。

まずは、「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」を活用して、ご自身のリアルな年金見込額をいち早く確認しましょう。

その上で、不足分をどうカバーしていくか(長く働き続ける、NISAやiDeCoで計画的に資産形成をするなど)、今のうちから戦略を練っておくことが大切です。

参考資料