梅雨明けを待つ空に、本格的な夏の熱気がじわりと混ざり合う季節となりました。
シニア世代の皆様におかれましては、先日の「6月15日の年金支給日」、記帳された通帳の数字をじっくりと確かめられた方が多いのではないでしょうか。というのも、この6月支給分(4・5月分)から、いよいよ2026年度(令和8年度)の「引き上げられた新しい年金額」が実際に口座へ反映され始めたからです。
今期の改定率は国民年金がプラス1.9%、厚生年金がプラス2.0%。昨今の止まらない物価高に対するせめてもの防波堤として、少しでも数字が増えたことに安堵の息を漏らした方もいらっしゃるでしょう。
しかし一方で、「ニュースで言っていたほど増えていない気がする」「引かれる保険料も上がって、手取りはほとんど変わらない」という戸惑いの声もあるでしょう。
公的年金は「現役時代の働き方(加入期間)」と「受け取り始める年代」によって、もらえる額が変わります。
本記事では、厚生労働省の最新統計をもとに、今の60代・70代・80代が実際に受け取っている平均月額を一覧表で一挙に公開。
さらに、ライフコース別に5つのモデルケースを用意し、受給額をリアルにシミュレーションします。ご自身の現在地と未来の目安を正しくつかみ、これからの生活設計にぜひお役立てください。
1. 2026年度の年金額改定。国民年金は1.9%、厚生年金は2.0%の増額
公的年金の支給額は、物価や賃金の変動を反映して毎年改定されます。この改定により、2026年度は国民年金が前年度比で1.9%、厚生年金は2.0%の増額となります。
- 国民年金(老齢基礎年金)の月額(満額・1人分):7万608円(前年度比+1300円)
- 厚生年金の月額(標準的な夫婦世帯):23万7279円(前年度比+4495円)
上記のモデルケースでは、夫婦世帯で月額4495円の増額となります。ただし、この「標準的な夫婦世帯」は、以下の条件を前提とした試算です。
- 夫が平均的な収入(賞与を含む平均標準報酬額45万5000円)で40年間厚生年金に加入した会社員
- その期間、妻は専業主婦として国民年金第3号被保険者であった場合
このモデルケースは特定の条件下での試算であり、すべての世帯に当てはまるわけではない点に注意が必要です。
改定後の年金額が適用されるのは2026年4月分からです。年金は後払いのため、4月・5月分が支給される6月15日から、実際の受給額に反映されます。
2. 働き方で変わる受給額。ライフコース別のモデル年金額を解説
年金の受給額は個人の加入履歴によって大きく異なります。正確な金額は「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確認することが重要ですが、厚生労働省が公表している「多様なライフコースに応じた年金額(概算)」も参考になります。
ここでは、厚生労働省『令和8年度の年金額改定についてお知らせします』を基に、2026年度の年金額をケース別に見ていきましょう。
※2024年度に65歳を迎えた人を想定した概算です。
2.1 ケース1:厚生年金への加入期間が中心の男性
〈年金月額(概算)〉17万6793円
- 平均厚生年金期間:39.8年
- 平均収入(賞与含む月額換算):50万9000円
- 年金月額内訳:国民年金6万9951円、厚生年金10万6842円
2.2 ケース2:国民年金(第1号被保険者)への加入期間が中心の男性
〈年金月額(概算)〉6万3513円
- 平均厚生年金期間:7.6年
- 平均収入(賞与含む月額換算):36万4000円
- 年金月額内訳:国民年金4万8896円、厚生年金1万4617円
2.3 ケース3:厚生年金への加入期間が中心の女性
〈年金月額(概算)〉13万4640円
- 平均厚生年金期間:33.4年
- 平均収入(賞与含む月額換算):35万6000円
- 年金月額内訳:国民年金7万1881円、厚生年金6万2759円
2.4 ケース4:国民年金(第1号被保険者)への加入期間が中心の女性
〈年金月額(概算)〉6万1771円
- 平均厚生年金期間:6.5年
- 平均収入(賞与含む月額換算):25万1000円
- 年金月額内訳:国民年金5万3119円、厚生年金8652円
2.5 ケース5:国民年金(第3号被保険者)の期間が中心の女性
〈年金月額(概算)〉7万8249円
- 平均厚生年金期間:6.7年
- 平均収入(賞与含む月額換算):26万3000円
- 年金月額内訳:国民年金6万9016円、厚生年金9234円
これらのケースから、現役時代の働き方、特に厚生年金への加入期間が将来の年金額を大きく左右することが明確にわかります。
国民年金への加入が中心だった場合、月額は約6万円から8万円程度が目安となります。
実際に受け取る年金額は個人によって異なるため、ご自身の見込額を調べてみることが重要です。
3. 【年代別データ】60歳代のリアルな年金受給額を一覧で見る
ここからは、厚生労働省年金局が公表した『令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』を基に、60歳代のシニアが実際に受給している平均年金月額を紹介します。
3.1 【60〜69歳】厚生年金の平均受給月額
- 60歳:9万9664円
- 61歳:10万4455円
- 62歳:10万9323円
- 63歳:6万8758円
- 64歳:8万3901円
- 65歳:14万9862円
- 66歳:15万2378円
- 67歳:15万2356円
- 68歳:15万2709円
- 69歳:15万1284円
※65歳未満の受給者には、特別支給の老齢厚生年金のうち、報酬比例部分のみを受給している人が含まれます。
3.2 【60〜69歳】国民年金の平均受給月額
- 60歳:4万5186円
- 61歳:4万6371円
- 62歳:4万7784円
- 63歳:4万7258円
- 64歳:4万7896円
- 65歳:6万1240円
- 66歳:6万1369円
- 67歳:6万1345円
- 68歳:6万1293円
- 69歳:6万978円
※65歳未満の受給者は、繰上げ受給を選択した人です。
本来の受給開始年齢である65歳以降に注目すると、厚生年金の平均月額は約15万円、国民年金は約6万円がひとつの目安となります。
4. 【年代別データ】70歳代の平均年金受給額一覧
続いて、70歳代の平均年金月額を見ていきましょう。データは同様に、厚生労働省年金局の『令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』に基づきます。
4.1 【70〜79歳】厚生年金の平均受給月額
- 70歳:15万455円
- 71歳:14万8371円
- 72歳:14万6858円
- 73歳:14万5583円
- 74歳:14万7774円
- 75歳:15万1410円
- 76歳:15万1241円
- 77歳:15万962円
- 78歳:15万862円
- 79歳:15万3115円
4.2 【70〜79歳】国民年金の平均受給月額
- 70歳:6万1011円
- 71歳:6万770円
- 72歳:6万234円
- 73歳:6万32円
- 74歳:5万9813円
- 75歳:5万9659円
- 76歳:5万9555円
- 77歳:5万9349円
- 78歳:5万9124円
- 79歳:5万8676円
5. 【年代別データ】80歳代の平均年金受給額一覧
最後に、80歳代の平均年金月額を確認します。出所は、厚生労働省年金局の『令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』です。
5.1 【80〜89歳】厚生年金の平均受給月額
- 80歳:15万3729円
- 81歳:15万5460円
- 82歳:15万7744円
- 83歳:15万9994円
- 84歳:16万2555円
- 85歳:16万3947円
- 86歳:16万5577円
- 87歳:16万5557円
- 88歳:16万6200円
- 89歳:16万6767円
5.2 【80〜89歳】国民年金の平均受給月額
- 80歳:5万8623円
- 81歳:5万8269円
- 82歳:5万8003円
- 83歳:5万7857円
- 84歳:5万9675円
- 85歳:5万9425円
- 86歳:5万9228円
- 87歳:5万9204円
- 88歳:5万8756円
- 89歳:5万8572円
70歳代・80歳代の平均月額は、厚生年金で月額14万円から16万円台、国民年金では5万円から6万円台で推移していることがわかります。
6. まとめ:自身の年金額を把握し、将来設計に活かす
同じシニアであっても過去の働き方ひとつで受給額に何倍もの差がつくシビアな現実が、今回の年代別データや5つのシミュレーションから浮き彫りになりました。
公的年金は老後の「絶対的な土台」ですが、それだけで理想の暮らしをすべてカバーできるわけではありません。
一年の折り返し地点であるこの時期に、増えた年金にただ安堵するのではなく、将来に向けた地固めとして以下の3つのアクションを実行してみましょう。
- お手元の通帳を開き、今年「4月15日支給分」と「6月15日支給分」の差額を計算し、実際に手元で増えた『リアルな月額』を把握する(額面の引き上げ率だけでなく、天引きされる介護保険料などの影響を差し引いた「真の購買力」を知るため)
- ねんきん定期便(または「ねんきんネット」)を開き、自身のこれまでの加入履歴が『本記事の5つのモデルケースのどれに一番近いか』を当てはめてみる(漠然とした平均値ではなく、自分専用の将来予測を立てるため)
- 「新しく増えた年金の手取り額」をベースに、7月以降の『1ヶ月分の食費・光熱費の予算』を組み直す(物価上昇のスピードに負けないよう、入ってくるお金のサイズに生活をフィットさせる習慣をつくるため)
国の制度変更やマクロ経済の波を個人でコントロールすることはできません。しかし、「自分がいま、いくら受け取れる権利を持っているのか」を正確に把握し、その枠組みの中で賢くやりくりする知恵は、誰にも奪われないあなただけの強固な老後資産の形成につながるでしょう。
7. 【監修者のコメント】この記事の総括とこれからの実務上の注意点
記事内の5つのモデルケースは、あくまで『40年きっちり全額納付した理想形』です。過去の転職時の空白期間や未納が数ヶ月あるだけで、実際の支給月額はモデル表の数字から確実に削り取られていきます。
標準額を鵜呑みにせず、ねんきん定期便の見込み額から社会保険料を引いた『真の手取り』で収支を組むこと。この引き算の習慣こそが、物価高に負けない強いシニア家計を作る実務上の鉄則です。







