どこか「他人から褒められるような育児をしなければ」という気持ちもありました。なぜだか「母親」って、評価の対象になりやすいですよね。父親、祖母、祖父、子ども…の中でも、「母親」という役割は一番評価対象になりやすいのです。

生き物にとって、子孫繁栄は自然は欲求の一つ。それゆえ、他人から評価されることも多いのかもしれません。とはいえ、当の母親にとっては辛いところ。育児について知識も経験もない状態で「皆から認められる完璧な母親にならなければ」と励み、少しでもミスをすれば責められることもあるのですから。

だからこそ、わが子に対しても「身内」というより、「お客さん」に接している気分でした。お客さんがわが家に来て、気を遣ってアレコレ考えては尽くすものの、「本当に満足してもらえているかな?」と不安に思うあの気持ち…あれにそっくりなのです。

そういった意味では、あの頃の自分は、周囲には褒められても子どもにとって心地よい母親ではなかったと思います。

お客さんから、わが子へ

3児の母となった今は、1人目のときほど褒められるような育児をしていません。それでも子どもたちは「お客さん」でなく、「わが子」になりました。前よりダラけている私ですが、子どもたちとの距離が近くなりました。自分とは違う「1人の人間」という意味での距離感は変わりませんが、「家の人」になったのです。

1日の中でも上の2人が帰宅してからが本番なので、昼間、未就園児である末っ子と一緒にいるときはゆったりモード。仕事をしたり、おやつを食べたり、コーヒーを飲んだり、料理中に好きな音楽を聴いたりと、1日の中に何度も自分の時間を取り入れ、疲れたら無理をせず休みます。

家族であれば、素も見せます。私が大笑いすれば、子どもも嬉しそうに笑います。くつろいでいるときには、子どももゆったりのびのびとしています。私が疲れて怒ってしまったときは、「疲れてるんでしょ」と的確な意見を言う子もいます。

子どもたちがわが子になったのと同時に、自分も自分らしくなり、やっと家族になったような感じがしています。

宮野 茉莉子