2. 業績は絶好調。総額5,000億円の巨額設備投資を発表
イビデンが発表した直近の通期決算(2026年3月期)を見ると、業績自体はまさに「イケイケ」の状態です。
売上高は4,162億円(前期比+12.7%)、本業の儲けを示す営業利益は620億円(同+30.3%)、そして純利益は637億円(同+89.0%)と、大幅な増収増益を達成しています。
さらに来期(2027年3月期)の予想でも、売上高5,000億円(+20.1%)、営業利益900億円(+45.1%)と強気の見通しを立てています。ただし、来期の純利益については580億円(-9.0%)と減益予想となっている点には注意が必要です。
こうした好調な業績を背景に、イビデンはさらなる成長に向けてアクセルを踏み込みました。それが、総額5,000億円に上る巨額の設備投資計画です。
岐阜県の河間事業場に2,200億円、大野事業場に2,800億円を投じ、AI向けの高性能ICパッケージ基板の工場を建設し、2027年度から順次稼働させるという内容です。
ここで一つの疑問が浮かびます。年間売上高が約4,162億円の会社が、売上高を上回る5,000億円もの設備投資を一体どうやって賄うのでしょうか。
泉田氏がバランスシート(貸借対照表)を確認したところ、手元の現金及び預金は約2,956億円。これらは通常運転資金として必要なものであり、すべてを設備投資に回せるわけではありません。
借入金などを足し合わせても、5,000億円には到底届かない計算になります。
ここで泉田氏は、会社が公表している「前受金(まえうけきん)」という仕組みに注目しました。
イビデンの主要顧客は、有価証券報告書を見ると明らかです。Intel(インテル)に対する売上が767億円、NVIDIA(エヌビディア)が751億円、AMD(アドバンスト・マイクロ・デバイセズ)が407億円と、世界のAIチップ市場を牽引する巨大企業が名を連ねています。
イビデンは、こうした巨大顧客から製品を納める前に「前受金」として資金を受け取り、それを元手に工場を建設するという手法をとっているのです。泉田氏は、顧客側の思惑を次のように分析します。
「お客さんが工場を抑えに来たみたいな感じだよね。逆の見方をすると、AMDとかインテル、NVIDIAは、もうこのイビデンの工場を欲しているということ。バリューチェーンという考え方があって、原材料から最終製品まであるときに、このICパッケージのところがボトルネックになると思ったんだろうね。であれば、お金を一部前出しすることによって、うまく作ってくださいよ、という取り組みなんだと思う」
つまり、顧客側にとってもイビデンの技術と生産能力は喉から手が出るほど欲しいものであり、資金を前借りさせてでも自社専用のラインを確保したいという強い需要があることがわかります。
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日