おひとりさまの場合、老後の生活費や予期せぬ支出に備えるための資金を、自ら準備していく必要があります。そのため、将来を見据えた資産形成は重要なテーマの一つといえるでしょう。

筆者自身、これまで1000人以上のお客さまの資産運用相談を担当してきたなかで、単身世帯の方から「将来のお金が不安」というご相談を数多くいただいてきました。とくに独身時代が長い方ほど、家族と資金計画を共有する機会が少ないため、老後資金の見通しが立てづらいという声を耳にすることが多くあります。

単身世帯の資産状況には大きな開きがあり、金融資産を持たない人がいる一方で、数千万円規模の資産を保有している人も見られます。

そこで本記事では、単身世帯の金融資産保有額を年代別に確認しながら、その違いが生じる背景について見ていきます。

1. 記事の3つのポイント

  •  年代が上がるほど単身世帯の金融資産(平均・中央値)は増加するが、格差も大きい
  •  単身世帯では約3割が「金融資産ゼロ」
  •  資産形成には「現状把握」「先取り貯蓄の仕組み化」「お金の情報収集」の3つが重要

 

2. 【年代別に確認】おひとりさま世帯の金融資産額は平均・中央値でどのくらい?

まずは、金融経済教育推進機構(J-FLEC)の「2025年家計の金融行動に関する世論調査」をもとに、単身世帯の金融資産保有状況を見ていきましょう。

※金融資産には預貯金、株式、投資信託、生命保険などが含まれます。なお、日常的な入出金や引き落としに利用する普通預金残高は対象外です。

平均貯蓄額

平均貯蓄額

出所:金融経済教育推進機構「2025年家計の金融行動に関する世論調査」をもとにLIMO編集部作成

2.1 30歳代・単身世帯の金融資産額(平均・中央値)

  • 金融資産非保有:32.3%
  • 100万円未満:14.2%
  • 100~200万円未満:14.2%
  • 200~300万円未満:4.9%
  • 300~400万円未満:4.3%
  • 400~500万円未満:2.8%
  • 500~700万円未満:5.5%
  • 700~1000万円未満:3.1%
  • 1000~1500万円未満:5.5%
  • 1500~2000万円未満:4.3%
  • 2000~3000万円未満:2.5%
  • 3000万円以上:3.4%
  • 無回答:3.1%
  • 平均:501万円
  • 中央値:100万円

30歳代では、平均額は500万円を超えていますが、中央値は100万円にとどまっています。

資産分布を見ると、100万円未満の層が14.2%いる一方で、3000万円以上を保有する人も3.4%存在しています。

2.2 40歳代・単身世帯の金融資産額(平均・中央値)

  • 金融資産非保有:32.1%
  • 100万円未満:15.1%
  • 100~200万円未満:7.1%
  • 200~300万円未満:5.9%
  • 300~400万円未満:4.3%
  • 400~500万円未満:2.2%
  • 500~700万円未満:6.2%
  • 700~1000万円未満:4.6%
  • 1000~1500万円未満:6.2%
  • 1500~2000万円未満:1.2%
  • 2000~3000万円未満:2.8%
  • 3000万円以上:9.9%
  • 無回答:2.5%
  • 平均:859万円
  • 中央値:100万円

40歳代も中央値は100万円で変わりません。

一方、平均額は30歳代より大きく増加しており、3000万円以上の金融資産を持つ人は9.9%となっています。

2.3 50歳代・単身世帯の金融資産額(平均・中央値)

  • 金融資産非保有:35.2%
  • 100万円未満:10.1%
  • 100~200万円未満:7.4%
  • 200~300万円未満:4.6%
  • 300~400万円未満:2.7%
  • 400~500万円未満:3.3%
  • 500~700万円未満:4.9%
  • 700~1000万円未満:4.6%
  • 1000~1500万円未満:6.0%
  • 1500~2000万円未満:3.3%
  • 2000~3000万円未満:5.5%
  • 3000万円以上:10.4%
  • 無回答:1.9%
  • 平均:999万円
  • 中央値:120万円

50歳代では中央値が120万円まで上昇し、平均額も1000万円に近い水準となっています。

その一方で、100万円未満の世帯が10.1%を占めるなど、資産状況には幅があります。

2.4 60歳代・単身世帯の金融資産額(平均・中央値)

  • 金融資産非保有:30.4%
  • 100万円未満:9.1%
  • 100~200万円未満:4.3%
  • 200~300万円未満:2.4%
  • 300~400万円未満:4.5%
  • 400~500万円未満:3.1%
  • 500~700万円未満:6.0%
  • 700~1000万円未満:4.8%
  • 1000~1500万円未満:8.1%
  • 1500~2000万円未満:4.1%
  • 2000~3000万円未満:5.5%
  • 3000万円以上:15.6%
  • 無回答:2.2%
  • 平均:1364万円
  • 中央値:300万円

60歳代になると中央値は300万円まで上昇します。

平均額は1364万円となっていますが、金融資産を保有していない世帯や100万円未満の世帯を合わせると約4割に達しています。

3. 単身世帯で「貯蓄ゼロ」の人はどのくらいいる?

続いて、金融資産を保有していない人の割合を確認してみましょう。

  • 30歳代:32.3%
  • 40歳代:32.1%
  • 50歳代:35.2%
  • 60歳代:30.4%

どの年代でも3割前後となっており、単身世帯ではおよそ3人に1人が金融資産を保有していない状況です。

一人暮らしの場合は、現在の生活費だけでなく老後資金についても自分自身で準備する必要があります。

老後はまだ先のことと思いがちですが、長い時間があるからこそ計画的に備えていくことが重要です。

では、金融資産を持つ人と持たない人では、どのような違いがあるのでしょうか。

次に、その特徴について見ていきましょう。

4. 「貯蓄がある人」と「貯蓄が少ない人」の違いとは

ここまで見てきたように、金融資産の保有状況には大きな差があります。

その違いが現れやすいポイントを見ていきましょう。

4.1 家計や資産状況を具体的に把握しているか

金融資産の差が生まれる要因の一つとして、お金の状況をどれだけ具体的に把握しているかが挙げられます。

収入と支出を見える化することで、貯蓄が進まない理由を確認しやすくなります。

資産についても同様で、現在の残高や毎月の積立額、将来の見込み額などを数字で確認することが大切です。

さらに、老後にどの程度の年金を受け取れるのかを把握しておくことは、資金計画を考えるうえで欠かせません。

公的年金のみで生活することが難しいケースもあるため、まずは見込み額を確認することが重要です。

4.2 先取りで積み立てる仕組みを活用しているか

忙しい日々のなかで継続的に貯蓄を行うためには、自動的に積み立てる仕組みを活用する方法があります。

金融機関によっては、給与日にあらかじめ決めた金額を積み立てるサービスを提供しています。

こうした仕組みを利用することで、無理なく継続的に貯蓄しやすくなるでしょう。

4.3 お金に関する情報に触れているか

お金に関する知識の有無によって、選択できる行動の幅は変わります。

まずは情報を集め、その内容を理解することが大切です。

そのうえで、リスクを正しく把握し、自分の許容範囲のなかで判断していくことが求められます。

お金に関する情報を避けるのではなく、積極的に取り入れていくことが大切です。

4.4 《監修》元銀行員からのコメント:「平均」と「中央値」の差にこそ、おひとりさまの現実がある

中本 智恵
銀行でリテール営業をしていた頃、単身のお客様から資産運用のご相談を受ける中で強く感じたのは、記事にもある「平均額」と「中央値」の大きなギャップこそが、おひとりさま世帯のリアルな実情を表しているという点です。一部の資産を大きく積み上げた方が平均を押し上げる一方で、実際に多くの方の資産は中央値に近い水準にとどまっています。窓口でも「周りと比べて自分は少ないのでは」と不安を口にされる方が多くいましたが、実際には多数派に近い水準であることも少なくありませんでした。

とくに独身の方は、結婚や子育てといった家族単位でのライフイベントに合わせた資金計画を立てる機会が少ないため、「いつまでに、いくら必要か」という目標が漠然としがちです。私が相談を受けてきた中でも、資産形成が進んでいる方に共通していたのは、家計を具体的に数字で把握し、給与日に自動で積み立てる仕組みを利用していた点でした。反対に、貯蓄が思うように進まない方の多くは、まず現状把握そのものを避けてしまっている傾向がありました。

老後資金は年金だけで完結しないケースも多いため、まずはご自身の年金見込額を確認し、そのうえで無理のない金額から先取り貯蓄や積立投資を始めてみることをおすすめします。60歳代でも約3割が金融資産非保有という現実は、決して他人事ではありません。今からの一歩が将来の安心につながります。

5. 資産形成は現状把握と継続的な取り組みが重要

本記事では、単身世帯の金融資産保有額を年代別に紹介しました。

資産形成は短期間で結果が出るものではありませんが、現状を確認し、無理のない範囲で継続することが大切です。

まずは家計の見える化や将来の年金見込額の確認など、できることから始めてみるとよいでしょう。

参考資料

筒井 亮鳳