夏のボーナス支給を機に、「これからの家計管理」や「将来の資産形成」について見直しを始める方が増えています。
なかには、毎月コツコツと銀行預金に励んでいる方もいるかと思いますが、インフレ(物価上昇)が続く昨今、「今の貯蓄ペースのままで、本当に将来は安心なのだろうか」と不安を抱くのは自然なことです。
私はかつて証券会社に勤務し、ファイナンシャルアドバイザー(FA)として多くのお客様のライフプランに寄り添った資産運用をご提案してきました。
そのなかで、特に「お金の運用先をどこにするか」というお悩みは、非常に多くの方から伺ってきたテーマです。
たとえば、毎月の積立額がまったく同じであっても、「銀行預金」として眠らせるか、「新NISA」を活用して運用に回すかで、将来手元に残る金額には「数百万円単位」あるいはそれ以上の大きな格差が生まれる可能性があります。
そこで本記事では、元証券アドバイザーの視点から「銀行預金」と「新NISAでの積立投資」の25年後の資産推移をシミュレーションし、具体的な数字をもとに、インフレ時代を生き抜くための最適な資産形成のヒントを分かりやすく解説します。
1. 「月3万円」を25年続けた場合の貯金額はいくら?
結論から申し上げますと、毎月3万円を銀行預金として25年間積み立てた場合、元本は合計で「900万円」となります。
金利環境の変化は見られますが、依然として預金だけで資産を大きく増やすには厳しい状況です。
仮に預金金利が年0.3%(複利)であったとしても、25年間で得られる利息は税引前で約34万円程度にとどまり、最終的な資産額は約934万円という結果になります。
ただし、実際の受け取り額からは約20%の税金が差し引かれるため、手元に残る利益はさらに少なくなります。
加えて考慮すべきなのが「インフレ」です。物価が上昇し続ければ、将来、今と同じ商品を買うためにより多くのお金が必要になります。
預金残高は増えていても、実質的な購買力が低下するリスクは無視できません。
預金は元本が守られるという強みがありますが、インフレや利回りの低さを考えると、資産を増やす手段としてはやや力不足と言えるでしょう。
では、効率的な資産形成のために何ができるのでしょうか。
そこで注目されているのが、税制優遇を受けながら投資ができる「新NISA」という制度です。
2. 新たな積立投資の選択肢「新NISA」とは?
「新NISA」とは、投資の利益が非課税になることで、資産形成をより効率的に後押しする制度です。
通常、投資で得た利益には約20%の税金がかかりますが、この制度を活用すれば、運用益をそのまま再投資や資産として確保できます。
例えば、先ほどの月3万円・25年間の積立で比較してみましょう。
銀行預金の場合、最終資産は約934万円ですが、利益分には税金がかかります。
一方、同じ利益が出たとしても、新NISAなら税金がゼロです。
この税制優遇の差は、積立期間が長くなるほど大きなメリットとして実感できるようになります。
2024年に拡充されたこの制度は、多くの資産形成層から注目を集めています。
2.1 「新NISA」の仕組みと特徴
新NISAは、これまでの制度よりも大幅に使い勝手が向上しました。
大きな変更点は、非課税枠の拡大と非課税期間の無期限化です。
年間投資上限額が増えたことで、より多くの資金を効率的に運用できるようになったほか、期間が無期限になったことで、ライフプランに合わせた長期運用が可能となりました。
では、この新NISAを活用して毎月3万円を積み立てた場合、25年後の資産にはどの程度の差が生まれるのでしょうか。
3. 【利回り別】新NISAで積立投資した場合、25年後の資産額はいくらになる?
本章では、毎月3万円を25年間積み立てた場合について、利回りごとのシミュレーションをもとに資産の変化を確認していきます。
3.1 利回り3%で運用した場合の資産額
毎月3万円を積み立て、期間を25年間、想定利回りを年3%とした場合の将来の資産額は、以下のとおりです。
- 投資元本:900万円
- 運用収益:430万円
- 資産合計(元本+収益):1330万円
3.2 利回り5%で運用した場合の資産額
毎月3万円を積み立て、期間を25年間、想定利回りを年5%とした場合の将来の資産額は、以下のとおりです。
- 投資元本:900万円
- 運用収益:857万円
- 資産合計(元本+収益):1757万円
3.3 利回り10%で運用した場合の資産額
毎月3万円を積み立て、期間を25年間、想定利回りを年10%とした場合の将来の資産額は、以下のとおりです。
- 投資元本:900万円
- 運用収益:2800万円
- 資産合計(元本+収益):3700万円
年利3%を想定したシミュレーションでは、25年間の積立による運用益はおよそ430万円となり、預金のみの場合と比べると、資産を増やす効果が期待できるといえるでしょう。
さらに、年利5〜10%で運用できた場合には、約857万円〜2800万円の運用益が見込まれ、最終的な資産額は大きく飛躍します。
4. 資産差はいくら?「貯金 vs 投資」の決定的な違い
ここまで見てきたとおり、毎月3万円を25年間積み立てた場合、銀行預金では最終的な資産額は約934万円にとどまります。
一方で、新NISAを活用した積立投資では、利回りによって大きな差が生まれます。
たとえば、年利3%で運用した場合は約1330万円となり、預金と比べて約396万円の差が生じます。
さらに、年利5%では約1757万円、年利10%では約3700万円となり、預金との差はそれぞれ約823万円、約2766万円以上に広がります。
この差を生み出している要因が「複利」です。
複利とは、運用によって得た利益が元本に組み込まれ、その利益にもさらに利益がついていく仕組みを指します。
積立投資の初期段階では、貯金との違いはそれほど大きくありません。
しかし、運用期間が長くなるにつれて利益が積み重なり、後半になるほど資産の増え方が加速していきます。
今回のシミュレーションの通り、資産形成においては「期間の長さ」が結果に大きな影響を与える要素となります。
しかし、将来の運用成果を正確に予測することは誰にもできません。
長期的なデータに基づけば、年3%を超えるようなリターンが期待できる可能性はありますが、これはあくまで過去の傾向に基づく試算であり、確約されたものではない点に留意が必要です。
私は証券会社のファイナンシャルアドバイザーとして現場で多くのお客様と接してきましたが、「資産運用をすべきか、預金のままでいるべきか」という問題に、万人に共通する唯一の正解はありません。
預貯金には、元本が保証されているという安心感や、必要な時にすぐ引き出せる流動性があります。
一方で、インフレ環境下では実質的な購買力が目減りするリスクを抱えています。
対して新NISAなどの積立投資は、インフレ対策としての効果や複利の恩恵が期待できる反面、元本割れのリスクや、価格変動による精神的な負担を伴います。
現場で見てきた経験から申し上げると、最も避けるべきなのは、どちらか一方に極端に資産を傾けてしまうことです。
まずはご自身のライフプランや、どれくらいのリスクなら許容できるかという「リスク許容度」を客観的に見つめ直し、銀行預金と資産運用の適切なバランスを見極めることが、長期的な家計の安定につながるでしょう。
【免責事項】
- 本記事は、公開されている公的資料および一般的な情報に基づき作成されたものであり、特定の制度・金融商品・投資行動を推奨するものではありません。
- 掲載している数値・制度内容・シミュレーション結果は、一定の前提条件のもとでの試算または一般的な事例であり、実際の金額・支給要件・税制・運用成果等を保証するものではありません。制度内容は法改正・自治体運用・経済状況等により変更される可能性があります。
- 投資に関する記述は、将来の運用成果を示唆または保証するものではなく、元本割れを含むリスクが存在します。本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。最終的な投資判断は、ご自身の責任において行ってください。
参考資料
安達 さやか