6月に税金や年金などの各種通知が届き、家計の現実を突きつけられた方もいるでしょう。そこへ7月を迎え、冷房などの光熱費に加え、2500品目超(※)に及ぶ飲食料品の値上げが家計を直撃しています。

「果たして将来は年金だけで暮らしていけるのか」と不安を抱くのも無理はありません。

筆者自身、フリーランスが長かった20歳・30歳代の頃は目の前の仕事で精一杯で、老後の年金を増やす工夫など考えもしませんでした。

しかし、資産形成において「時間」は最大の武器。あとから取り戻せないからこそ、若いうちに現実を知ることが重要です。

この記事では、意外とシビアな公的年金の実態や、男女の受給額格差を解説します。

「月15万円」の厚生年金を受け取る女性の割合は? そして、今議論が白熱している「第3号被保険者制度(専業主婦の年金)」の行方は……? 当事者のリアルな声とともに迫ります。

※株式会社帝国データバンク 「食品主要195社」価格改定動向調査 ― 2026年7月(2026年6月30日公表)

1. この記事のポイントを整理

  • 女性の厚生年金平均受給額は月11万1413円で、全体平均を下回っている
  • 厚生年金を月15万円以上受給している女性は12.3%にとどまる
  • 将来に備えるためには、年金見込額の確認と早めの資産形成が重要

2. 公的年金制度の基本を確認しよう

日本の公的年金は2階建て構造1/5

日本の公的年金は2階建ての構造

出所:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」などをもとにLIMO編集部作成

まずは、日本の公的年金制度の仕組みを整理しておきましょう。

日本の年金制度は、「国民年金」と「厚生年金」で構成される2階建ての仕組みとなっています。

2.1 国民年金(1階部分)の概要をおさらい

  • 加入対象:原則、日本に住む20歳から60歳未満の方
  • 保険料:1万7920円(※1):全員一律、年度ごとに見直しあり
  • 年金額:7万608円(※2)✕調整率:未納期間がある場合は減額調整

※1:2026年度(令和8年度)の月額 ※2:2026年度(令和8年度)の月額。40年間年金保険料を納付した場合に受け取れる「満額」(昭和31年4月2日以後生まれの方の場合)

2.2 厚生年金(2階部分)の概要をおさらい

  • 加入対象:主に会社員、公務員など ・保険料:報酬比例制(報酬により決定)
  • 年金額:加入期間や納付保険料により決定(国民年金に上乗せ支給)

将来受け取る年金額は、現役時代に国民年金のみへ加入していた期間が長いか、それとも厚生年金へ加入していた期間が長いかによって大きく変わります。

その理由の一つが、保険料や年金額の決まり方の違いです。

国民年金は保険料が一律で設定されていますが、厚生年金は給与や賞与などの報酬額に応じて保険料が算出されます。

そのため、厚生年金では加入期間だけでなく収入水準も将来の受給額に反映される仕組みとなっており、人によって受け取れる年金額に差が生じます。

3. 女性で厚生年金を月15万円以上受給している人の割合は?

厚生年金の受給額は、現役時代の収入や加入期間によって異なります。

では、実際に女性はどの程度の年金を受け取っているのでしょうか。

厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金の平均月額は全体で15万289円となっています。

なお、以下の金額には老齢基礎年金分も含まれています。

3.1 厚生年金の平均受給額

  • 全体:15万289円
  • 男性:16万9967円
  • 女性:11万1413円

男女別に見ると、女性の平均受給額は男性を大きく下回っています。

では、平均額の目安となる月15万円以上を受給している女性はどのくらいいるのでしょうか。

3.2 月15万円以上を受給している女性の割合

  • 女性の受給権者数:540万5752人
  • うち、月額15万円以上受け取っている女性:66万4486人
  • 割合:約12.3%(66万4486人 ÷ 540万5752人)

女性のうち、月15万円以上の厚生年金を受け取っている人は約12.3%となっており、およそ8人に1人の割合です。

一方で、男性の割合は約68.8%となっており、受給額には大きな男女差が見られます。

3.3 女性の厚生年金受給額分布

  • ~1万円未満:1万2953人
  • 1万円以上~2万円未満:3880人
  • 2万円以上~3万円未満:2万9993人
  • 3万円以上~4万円未満:6万3025人
  • 4万円以上~5万円未満:6万1945人
  • 5万円以上~6万円未満:6万9313人
  • 6万円以上~7万円未満:18万892人
  • 7万円以上~8万円未満:34万8764人
  • 8万円以上~9万円未満:54万1901人
  • 9万円以上~10万円未満:75万1358人
  • 10万円以上~11万円未満:81万3990人
  • 11万円以上~12万円未満:69万5128人
  • 12万円以上~13万円未満:52万2466人
  • 13万円以上~14万円未満:37万4169人
  • 14万円以上~15万円未満:27万1489人
  • 15万円以上~16万円未満:20万322人
  • 16万円以上~17万円未満:14万7604人
  • 17万円以上~18万円未満:10万5489人
  • 18万円以上~19万円未満:7万1561人
  • 19万円以上~20万円未満:4万8617人
  • 20万円以上~21万円未満:3万3387人
  • 21万円以上~22万円未満:2万1931人
  • 22万円以上~23万円未満:1万4116人
  • 23万円以上~24万円未満:8813人
  • 24万円以上~25万円未満:5491人
  • 25万円以上~26万円未満:3233人
  • 26万円以上~27万円未満:1811人
  • 27万円以上~28万円未満:927人
  • 28万円以上~29万円未満:479人
  • 29万円以上~30万円未満:223人
  • 30万円以上~:482人

受給者数が最も多いのは「10万円以上~11万円未満」の層です。

分布全体を見ると、月15万円以上の厚生年金を受け取っている女性は少数であることがわかります。

女性は結婚や出産、育児などをきっかけに働き方が変化するケースも多く、こうした要因が受給額の差につながっていると考えられます。

また、公的年金のみで十分な生活水準を維持するのは容易ではありません。

将来の生活設計を考えるためにも、「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」を活用し、自身の年金見込額を確認しておくことが大切です。

4. 将来の年金額はどう確認する?「ねんきん定期便」の記載内容は50歳を境に変わる!

実際に受給が始まった後の年金額は、「年金振込通知書」で確認できます。

一方、現役世代のうちから将来の受給見込額を把握したい場合は、「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」を利用することができます。

4.1 方法①「ねんきんネット」を利用する

日本年金機構が提供する「ねんきんネット」では、自身の年金記録をインターネット上で確認できます。

また、将来受け取る老齢年金の見込額を試算することも可能です。

利用方法は次の2通りです。

  • 基礎年金番号とメールアドレスを使う方法
  • マイナンバーカードを利用する方法

4.2 方法②「ねんきん定期便」を確認する

ねんきん定期便は毎年誕生月に送付されます。

35歳・45歳・59歳には封書、それ以外の年齢にはハガキ形式で届きます。

なお、50歳未満と50歳以上では記載されている内容が異なります。

【50歳未満の場合】

50歳未満の人に送られるねんきん定期便には、これまでの加入実績をもとに計算した年金額が記載されています。

将来納付する保険料は反映されていないため、表示されている金額は現時点で受給した場合の目安です。

そのため、想像より少なく感じることがあっても、今後の加入状況に応じて受給額は変わっていきます。

【50歳未満の人に送られる「ねんきん定期便」】3/5

【50歳未満の人に送られる「ねんきん定期便」】

出所:日本年金機構「「ねんきん定期便」の様式(サンプル)と見方ガイド」

【50歳以上の場合】

50歳以上の人のねんきん定期便には、現在の加入状況が60歳まで続いたと仮定した場合の年金見込額が掲載されています。

65歳から受け取る予定額の目安が示されるため、実際の受給額に近い数字を確認できます。

【50歳以上の人に送られる「ねんきん定期便」】4/5

【50歳以上の人に送られる「ねんきん定期便」】

出所:日本年金機構「「ねんきん定期便」の様式(サンプル)と見方ガイド」

現在の高齢者の受給額や自分自身の見込額を確認して、想定より少ないと感じる人もいるかもしれません。

しかし、現役世代のうちに状況を把握できれば、老後に向けた準備を進めることができます。

将来の生活設計を考えるうえでも、まずは「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」を活用し、受給見込額を確認しておくことが大切です。

5. 意外と知らない「年金から天引きされるお金」の正体

将来の年金見込額を確認する際に、もう一つ覚えておきたい注意点があります。それは「年金は額面通りにはもらえない」という現実です。

現役時代の給与と同じように、65歳以降に受け取る公的年金からも、さまざまなコストが差し引かれます。具体的には以下の4つです。

  • 介護保険料(65歳以上は原則として年金から直接徴収)
  • 国民健康保険料 または 後期高齢者医療保険料
  • 住民税
  • 所得税

収入や住む自治体によっても異なりますが、手取り額の目安は「額面の約85%〜90%」と言われています。

仮に厚生年金を「月15万円」受け取れる場合でも、実際に口座に振り込まれる手取り額は13万円前後に目減りしてしまうケースが少なくありません。

この「天引き」の存在も頭に入れてライフプランを立てることが大切です。

6. 第3号被保険者制度の見直し議論。当事者の切実な本音とは

女性の厚生年金受給額が男性より少なくなる要因の一つに、結婚や出産、育児を機に離職したり、配偶者の扶養内(第3号被保険者)でパートタイムとして働く期間が生じやすいことが挙げられます。

現在、この「第3号被保険者制度」については、共働き世帯の増加などを背景に縮小や廃止の議論が交わされています。

では、影響を直接受ける可能性のある主婦・主夫層はどのように受け止めているのでしょうか。

6.1 いわゆる「主婦年金」3号被保険者制度の縮小・廃止を巡る議論をどう思う?

第3号被保険者制度についてどう思う?5/5

第3号被保険者制度についてどう思う?

出所:ビースタイルグループ 第3号被保険者制度、当事者の7割が「縮小も廃止もしない」を支持

しゅふJOB総研(株式会社ビースタイル ホールディングス)が2026年6月に発表したアンケート調査によると、第3号被保険者制度について「縮小も廃止もしない方が良い」と答えた人は全体で52.8%に上りました。

さらに、第3号被保険者の「当事者」に限って見ると、約7割(69.3%)が現状維持を強く望んでいることが分かりました。

寄せられたフリーコメントを見ると、「子供が小さいうちは働けないケースもある」「介護や育児、体調などでまとまって働く時間を作り出すことができない人たちも多くいる」といった、働きたくても働けない事情を訴える切実な声が多く見られます。

一方で、「個人事業主等の1号被保険者は配偶者を扶養に入れられず、会社員だけの特権となっており、あまりにも不公平だ」「共働きが多い世の中になってきたので、縮小しても良いと思う」といった、制度の見直しに賛同する意見も寄せられており、賛否両論が存在していることが浮き彫りになりました。

家事や育児などのサポートが評価されるべきという声がある反面、時代やニーズの変化に伴い、制度のあり方が問われている、ということでしょう。

こうした社会保険の仕組みが将来的に変化していく可能性も視野に入れつつ、ご自身の年金見込額を早めに把握しておくことが、いっそう大切になってきますね。

7. まとめにかえて

今回は、老後の生活の基盤となる公的年金について、2カ月に一度の支給であることや額面から税金等が天引きされるといったシビアな現実を振り返るとともに、最新の統計データから女性の厚生年金受給額の実態を確認しました。

男女全体の平均受給額は約15万円ですが、この額を超える女性は全体の約12.3%にとどまり、男性の約68.7%と比べて大きな格差があることが浮き彫りになりました。

女性は結婚や出産、育児などのライフイベントによって働き方を変えざるを得ない期間が生じやすく、現役時代の働き方が将来の年金額に直結しています。

また、最後にご紹介した「第3号被保険者制度」の見直し議論では、当事者から切実な声や賛否両論が寄せられており、社会保険の仕組み自体が今後変化していく可能性も考えられます。

フリーランス時代、「年金のことなんて後回し」にしていた筆者ですが、今になって振り返ると、あの頃にもっと年金の仕組みを知り、少額からでも国民年金基金や投資を活用していれば…と悔やむ瞬間があります。

過ぎた時間は決して巻き戻せませんが、この事実に「今、気づけた」こと自体が、将来を変える大きな第一歩になります。

公的年金だけでゆとりある生活を送るのは難しい現実があるからこそ、現役世代のうちから「ねんきん定期便」などで将来の受給見込額を把握しておくことがたいせつです。

単身の方であればご自身の年金を軸に、ご夫婦であれば配偶者の年金と合わせた「世帯単位で把握しておく視点」も欠かせません。

ご自身のライフスタイルや今後の制度変化、また終わりの見えない物価高を見据えながら、新NISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)を活用した資産形成など、自分に合った老後への備えを今日から計画的に始めていきましょう。

参考資料