日々の買い物で物価高を痛感する場面が、より一層増えてきました。
先日も、スーパーでいつものように家族の食材をカゴへ入れていると、レジでの合計金額が以前より明らかに高くなっていて、思わず「えっ」と財布の中身を確認してしまったほどです。
筆者の肌感覚だけでなくデータにも表れています。
6月30日に帝国データバンクが公表した『「食品主要195社」価格改定動向調査 ― 2026年7月』によれば、今年の飲食料品の値上げはすでに累計1万品目を突破して5年連続の記録に。
さらに、7月単月だけでも2566品目が値上げされるなど、年間2万品目に達するハイペースで値上げラッシュが続いているのが実情です。
去る6月15日は、偶数月に一度の「年金支給日」でした。
スーパーに並ぶありふれた食料品や日用品の絶え間ない値上がりを前に、「もしこのまま物価高が続いたら、自分のリタイア後の生活は一体どうなってしまうのだろう……」と、ふと将来への不安が頭をよぎったのは、きっと筆者だけではないでしょう。
実質賃金が伸び悩む現役世代にとって、インフレ下で目減りしていくお金の価値は切実な問題です。老後の安心ラインとして「年金だけで月20万円」という言葉をよく耳にしますが、果たして今の日本でそれだけの年金を受け取れる人はどれくらいいるのでしょうか。
本記事では、厚生労働省の最新データをもとに現在の年金受給額の実態に目を向け、シニア世帯のリアルな家計収支、そして全世代に広がる「お金への不安」の正体を紐解いていきます。
1. 厚生年金+基礎年金「月額20万円超の階層」は何パーセント?
まずは、現在のシニア世代がどの程度の年金を受け取っているのかを見ていきましょう。
厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに、公的年金の平均受給額を確認します。
1.1 【国民年金】平均受給額は月5万9310円
- 男女全体:5万9310円
- 男性:6万1595円
- 女性:5万7582円
2026年度の国民年金満額は月額7万608円ですが、平均受給額はこれを下回っています。
そのため、国民年金のみで月20万円、年額240万円の収入を確保することはできません。
1.2 【厚生年金】平均受給額は月15万289円
- 男女全体:15万289円
- 男性:16万9967円
- 女性:11万1413円
※国民年金の月額部分を含む。会社員など第1号厚生年金被保険者のデータ
- ~1万円:4万3399人
- 1万円以上~2万円未満:1万4137人
- 2万円以上~3万円未満:3万5397人
- 3万円以上~4万円未満:6万8210人
- 4万円以上~5万円未満:7万6692人
- 5万円以上~6万円未満:10万8447人
- 6万円以上~7万円未満:31万5106人
- 7万円以上~8万円未満:57万8950人
- 8万円以上~9万円未満:80万2179人
- 9万円以上~10万円未満:101万1457人
- 10万円以上~11万円未満:111万2828人
- 11万円以上~12万円未満:107万1485人
- 12万円以上~13万円未満:97万9155人
- 13万円以上~14万円未満:92万3506人
- 14万円以上~15万円未満:92万9264人
- 15万円以上~16万円未満:96万5035人
- 16万円以上~17万円未満:100万1322人
- 17万円以上~18万円未満:103万1951人
- 18万円以上~19万円未満:102万6888人
- 19万円以上~20万円未満:96万2615人
- 20万円以上~21万円未満:85万3591人
- 21万円以上~22万円未満:70万4633人
- 22万円以上~23万円未満:52万3958人
- 23万円以上~24万円未満:35万4人
- 24万円以上~25万円未満:23万211人
- 25万円以上~26万円未満:15万796人
- 26万円以上~27万円未満:9万4667人
- 27万円以上~28万円未満:5万5083人
- 28万円以上~29万円未満:3万289人
- 29万円以上~30万円未満:1万5158人
- 30万円以上~:1万9283人
受給額の分布を見ると、厚生年金の平均は約15万円である一方、受給者は9万円以上13万円未満の範囲に多く集まっています。
また、月額20万円以上の厚生年金を受給している人は全体の18.8%にとどまっています。
つまり、厚生年金受給者の8割以上は月20万円未満であり、国民年金のみの受給者を含めると、その割合はさらに高くなります。
2. なぜ年金額に差が生まれるのか?制度の仕組みを確認
年金額に個人差が生じる背景には、公的年金制度の構造があります。
日本の年金制度は、基礎部分となる国民年金と、その上に上乗せされる厚生年金からなる2階建ての仕組みです。
- 1階部分「国民年金(基礎年金)」: 原則として国内在住の20歳以上から60歳未満の全員が加入。保険料は全員一律(2026年度月額 1万7920円)で、受給額に大きな差は出にくい構造です。
- 2階部分「厚生年金」: 会社員や公務員などが加入。収入に応じて保険料が給与天引きされ、加入期間や納付額により受給額に大きな個人差が生じます。
3. 年金収入だけでは足りない?シニア世帯の家計事情
月20万円以上の年金を受け取る人が少ない一方で、実際の生活費はどの程度かかるのでしょうか。
総務省「家計調査報告(家計収支編)-2025年(令和7年)平均結果-」によると、65歳以上の二人以上無職世帯では以下のような収支となっています。
- 毎月の実収入: 25万4395円(うち年金などの社会保障給付が大部分)
- 毎月の実支出: 29万6829円(消費支出+税金等の非消費支出)
支出が収入を上回っており、平均すると毎月4万2434円の赤字となっています。
年間では約50万円の不足となり、その分は貯蓄を取り崩して補う必要があります。
仮にこの状況が30年間続くとすると、取り崩し額は1500万円を超える計算になります。
4. 老後資金への不安は全世代共通
こうした状況を受け、家計に対する不安感も強まっています。
三井住友トラスト・資産のミライ研究所が2026年に実施した調査では、今後1〜2年の家計見通しを示す「ミライ研 家計期待指数」はマイナス14.3ポイントでした。
今後1~2年先の家計の見通し(ミライ研 家計期待指数)5/6
出所:三井住友信託銀行株式会社 資産のミライ研究所が生活者の暮らし向きについて分析~ 景気は前向きだが、暮らし向きは「なんとなく不安」~(2026年)
家計が悪化すると考える理由としては、次の項目が上位となっています。
今後1~2年の家計が今より悪くなると思う理由(複数回答可)

出所:三井住友信託銀行株式会社 資産のミライ研究所が生活者の暮らし向きについて分析~ 景気は前向きだが、暮らし向きは「なんとなく不安」~(2026年)
- 1位: 収入増の見込みがない・収入減への不安(65.7%)
- 2位: 物価上昇(63.5%)
- 3位: 社会保険料・税金の負担増(33.6%)
4.1 お金の不安で最も多いのは「老後資金」
同調査では、「お金に関して最も不安に感じていること・悩んでいること」についても調査が行われています。
その結果、すべての年代で「老後資金」が最多となりました。
年代別の割合は以下のとおりです。
- 18〜29歳:42.8%
- 30〜39歳:60.0%
- 40〜49歳:63.4%
- 50〜59歳:63.7%
- 60〜69歳:55.4%
この結果からは、すでに年金生活を送っている人だけでなく、若年層や現役世代においても、将来の年金や老後の生活資金に対する不安が広く共有されていることがうかがえます。
5. まとめにかえて
スーパーのレジで物価高を痛感し、「自分の老後は大丈夫か」と不安になるのは皆同じです。
最新データでも、厚生年金で「月20万円以上」を受け取れる人は2割に満たず、平均的なシニア世帯は毎月約4万2千円の赤字となっています。長引くインフレ下において、公的年金だけでゆとりある生活を送るのは厳しいのが現実です。
しかし、見えない他人の家計やニュースの「平均額」と比べて焦ったり、漠然とした不安を放置したりするのは禁物です。
まずは「ねんきん定期便」などで将来の受給見込額を確認し、ご自身の「現在地」を把握しましょう。人と比べず、無理のない資産形成を淡々と続けることが、将来の安心を手にする確実な一歩となります。




