明後日、6月15日は偶数月に一度の「年金支給日」です。受給されているシニア世代にとっては待ちに待った日ですが、長引く円安や原材料費の高騰による物価上昇を前に、「振り込まれた年金があっという間に消えていく……」とため息をつく方も多いのではないでしょうか。
実質賃金が伸び悩む現役世代にとっても、インフレ下での老後資金への不安は尽きません。
老後の安心ラインとして「年金だけで月20万円」という言葉をよく耳にしますが、果たして今の日本でそれだけの年金を受け取れる人はどれくらいいるのでしょうか。
本記事では、6月15日の年金支給日を前に、厚生労働省の最新データをもとに現在の年金受給額の実態から目を向け、シニア世帯のリアルな家計収支、そして全世代に広がる「お金への不安」の正体を紐解いていきます。
1. 厚生年金「月20万円超クラス」はわずか18.8%
まずは、実際の年金受給額はどうなっているのか、厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から公的年金(厚生年金・国民年金)の平均月額を見ていきます。
1.1 【国民年金】平均は「月5万9310円」満額には届かず
- 男女全体:5万9310円
- 男性:6万1595円
- 女性:5万7582円
2026年度の国民年金の満額(1人分)は月額7万608円ですが、平均受給額はそれに届いていません。
国民年金のみで月20万円(年間240万円)の収入を確保するのは不可能です。
1.2 【厚生年金】平均は「月15万289円」
- 男女全体:15万289円
- 男性:16万9967円
- 女性:11万1413円
※国民年金の月額部分を含む。会社員など第1号厚生年金被保険者のデータ
- ~1万円:4万3399人
- 1万円以上~2万円未満:1万4137人
- 2万円以上~3万円未満:3万5397人
- 3万円以上~4万円未満:6万8210人
- 4万円以上~5万円未満:7万6692人
- 5万円以上~6万円未満:10万8447人
- 6万円以上~7万円未満:31万5106人
- 7万円以上~8万円未満:57万8950人
- 8万円以上~9万円未満:80万2179人
- 9万円以上~10万円未満:101万1457人
- 10万円以上~11万円未満:111万2828人
- 11万円以上~12万円未満:107万1485人
- 12万円以上~13万円未満:97万9155人
- 13万円以上~14万円未満:92万3506人
- 14万円以上~15万円未満:92万9264人
- 15万円以上~16万円未満:96万5035人
- 16万円以上~17万円未満:100万1322人
- 17万円以上~18万円未満:103万1951人
- 18万円以上~19万円未満:102万6888人
- 19万円以上~20万円未満:96万2615人
- 20万円以上~21万円未満:85万3591人
- 21万円以上~22万円未満:70万4633人
- 22万円以上~23万円未満:52万3958人
- 23万円以上~24万円未満:35万4人
- 24万円以上~25万円未満:23万211人
- 25万円以上~26万円未満:15万796人
- 26万円以上~27万円未満:9万4667人
- 27万円以上~28万円未満:5万5083人
- 28万円以上~29万円未満:3万289人
- 29万円以上~30万円未満:1万5158人
- 30万円以上~:1万9283人
現役時代の収入や加入期間で差が出る厚生年金ですが、平均月額は約15万円です。受給額のボリュームゾーンは「9万円以上~13万円未満」あたりに集中しています。
厚生年金受給権者のうち、年金収入が「月額20万円以上」に達している人はわずか18.8%にとどまります。
8割以上の人がひと月20万円未満であり、国民年金のみの受給者も含めれば、その割合はさらに低くなります。
2. なぜ受給額に差がつく?公的年金の「2階建て構造」をおさらい
ここで、受給額に差が出る理由として、日本の年金制度の仕組みを確認しておきましょう。
公的年金制度は、「国民年金」を土台とし、会社員や公務員が「厚生年金」に上乗せ加入する二階建て構造です。
- 1階部分「国民年金(基礎年金)」: 原則として国内在住の20歳以上から60歳未満の全員が加入。保険料は全員一律(2026年度月額 1万7920円)で、受給額に大きな差は出にくい構造です。
- 2階部分「厚生年金」: 会社員や公務員などが加入。収入に応じて保険料が給与天引きされ、加入期間や納付額により受給額に大きな個人差が生じます。
3. 年金だけでは赤字に…データが語るシニア世帯の「リアルな生活費」
「月20万円以上」もらえる人が少ない現実に対し、実際の老後生活にはいくらかかるのでしょうか。総務省の「家計調査報告(家計収支編)-2025年(令和7年)平均結果-」による、65歳以上の無職世帯(二人以上の世帯)の家計収支を見てみましょう。
- 毎月の実収入: 25万4395円(うち年金などの社会保障給付が大部分)
- 毎月の実支出: 29万6829円(消費支出+税金等の非消費支出)
平均的なシニア夫婦の実支出は約30万円に迫り、収入から差し引くと毎月「約4.2万円の赤字」が発生しています。
標準的な生活を送るだけでも、年間にして約50万円の「貯蓄の取り崩し」が必要なのが実態です。老後が30年続けば、単純計算で1500万円以上の貯蓄が目減りします。
4. 全世代でトップの悩みは「老後資金」冷え込む家計の実感
こうした過酷な現実を前に、生活者は今、どのように家計の未来を捉えているのでしょうか。
三井住友トラスト・資産のミライ研究所が2026年1月に実施した全国1万人調査によると、今後1~2年の家計の変化に対する見通しを示す「ミライ研 家計期待指数」は全体でマイナス14.3ポイントとなりました。
今後1~2年先の家計の見通し(ミライ研 家計期待指数)5/6
出所:三井住友信託銀行株式会社 資産のミライ研究所が生活者の暮らし向きについて分析~ 景気は前向きだが、暮らし向きは「なんとなく不安」~(2026年)
景気は前向きと報じられる一方で、「良くなる」と見る人より、「悪くなりそう」と感じる人が明確に多い水準です。
家計が悪くなりそうと答えた人の理由の上位は以下の通りです。
今後1~2年の家計が今より悪くなると思う理由(複数回答可)

出所:三井住友信託銀行株式会社 資産のミライ研究所が生活者の暮らし向きについて分析~ 景気は前向きだが、暮らし向きは「なんとなく不安」~(2026年)
- 1位: 収入増の見込みがない・収入減への不安(65.7%)
- 2位: 物価上昇(63.5%)
- 3位: 社会保険料・税金の負担増(33.6%)
4.1 お金に関する悩み・不安のトップは「収入増の見込みがない・収入減への不安」
さらに注目すべきは、同調査の「お金に関して一番不安なこと・悩んでいること」という質問に対し、すべての年代で「老後資金」への不安が第1位となっていることです。
年代別の割合は以下の通りです。
- 18〜29歳:42.8%
- 30〜39歳:60.0%
- 40〜49歳:63.4%
- 50〜59歳:63.7%
- 60〜69歳:55.4%
すでに年金を受給しているシニア世代だけでなく、若い世代までが「将来の自分たちの年金・老後」に強い不安を抱いていることが浮き彫りになっています。
5. まとめ:年金支給日を機に「なんとなく不安」を可視化しよう
6月15日の年金支給日は、シニア世代にとっては現在の生活費を見直すタイミングであると同時に、現役世代にとっては「自分の未来の家計」に向き合う良い機会です。
データが示す通り、公的年金だけでゆとりある生活を送るのは難しく、全世代が「老後資金」に不安を抱えています。
しかし、大切なのは「なんとなく不安」な状態をそのまま放置しないことです。
まずは、日本年金機構の「ねんきんネット」や、毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」を活用して、ご自身が将来受け取れる年金の見込み額を確認してみることから始めてみませんか。
自分の現状と未来の目安を知ることが、漠然とした不安を和らげ、無理のない範囲で資産形成などの備えを進めていくための大切な第一歩となるかもしれません。




